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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
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2.0-07 いじょうきしょう?7

白いご飯と漬物だけだけど、お腹が一杯になった後で、再び眠ってしまった雪女ちゃんをソファーに寝かせてから・・・。


「・・・ねぇ、アメちゃん。この子、本当に、アメちゃんが言ってた雪女なの?」


私は、雪女ちゃんがこの家に来てから、予々(かねがね)思っていたことを、アメちゃんに問いかけました。


すると、雪女ちゃんの頭の方にあったソファーの開いているスペースに腰掛けながら、彼女の顔を覗き込んでいたアメちゃんは、自身の顔を上げて、腕を組みつつ悩ましげに唸りながら言葉を返してきます。


「うーん・・・この気配は間違いなく雪女のものじゃが・・・・・・此奴の言動を見ておる限り、そうは思えなくなってきておる。まだ気を抜くのは勧められぬが、無下に危ないやつじゃ、と突っぱねるのは、良くないのかも知れぬのう・・・」


「そっかー。でも確かに、このタイミングでやってきたんだから、大雪を消し飛ばした私か、あるいはアメちゃんのどっちかに関係があるのは、間違いない無さそうだよね」


「うむ。じゃから、この家に此奴がいるうちは、しばらくの間、共に監視することにしようぞ?」


そんなアメちゃんの言葉に対して・・・


『・・・えっ?』


私とテレサちゃんは同時に耳を疑ってしまいました。

だって・・・


「もしかして・・・雪女ちゃんを、このままこの家に置いておくつもりなの?」


・・・ということになりますよね?

それって、少し困ると思います。


・・・どうしてかって?

だって、私たちは、旅行に行くつもりだったんですよ?

それが雪女ちゃんの面倒を見なきゃならない、なんてことになったら・・・必然的にご破算になってしまいますよね?

残念なことに、もう一人分の費用を払う余裕は・・・私たちには無いですからね。


私と・・・多分、テレサちゃんも同じようなことを考えていると・・・2人の考えていることがアメちゃんにも伝わったようで、彼女は先程と少し色の異なる困惑の表情を浮かべながら、再び口を開いて言いました。


「じゃがのう・・・このまま放置するわけにもゆかぬじゃろ?此奴がもしも、単なる雪女の(わらべ)じゃと言うのなら、なおさらじゃ。此奴の引き取り手がない以上、ワシらが暫くの間は面倒を見ねばなるまいて・・・」


そう言ってから、小さく溜息を吐くアメちゃん・・・。

多分、彼女も・・・いえ、彼女こそ、一番落胆しているのだと思います。

だって、今回の旅行を一番楽しみにしてたのは・・・誰よりもアメちゃん本人だったはずなんですから・・・。


・・・そんな時です。

ここまで黙っていたユリアお姉ちゃんが、ハッ、とした表情を見せると、ユキちゃんの耳に自身の口を近づけて、何かを伝えました。


そしてその直後・・・


「・・・なら、ボクたちが、面倒を見ます!」キラッ


・・・どういうわけか、眼をキラキラさせながら、声を上げるユキちゃん・・・。

どうやら彼女は、ユリアお姉ちゃんに何か良くないこと(?)を吹きこまれたみたいです。

ユリアお姉ちゃんのことを考えるなら、恐らく・・・昨日の食事に対するお返しか、あるいは予め恩を売っておこうと考えているのかもしれません。

これまでの貸し借りを考えると、売った恩を黒字まで持っていくのに、一体どれくらいの時間が掛かるのかなぁ・・・。

恩とか、あまり気にしなくてもいいと思うんだけど・・・。


「・・・なんか、ルシアちゃんの視線が怖いんですけど・・・」


「ううん。気にしないで?ユリアお姉ちゃん」


「気にしないで、って言われると・・・余計に気にしちゃいますよ・・・」


なら、最初から、思ったことを素直に口にすればいいのに・・・。


私とユリアお姉ちゃんがそんなやり取りしている間、アメちゃんとテレサちゃんと、そしてユキちゃん方は、ソファーで寝ている雪女ちゃんをどうするかについて、議論を進めていたようです。


「・・・まさかユキ殿。主は、この幼子を連れ帰って、自宅で良からぬ教育でも施すつもりでは無かろうな?」


「あの・・・テレサ様?どうしてそうなるのですか?」


「主らの家にはイブ嬢がおるじゃろう?あやつが、日々、メイドの姿で扱き使われておることを、妾は知っておるのじゃ?」


「えっ・・・いや、あの子、好きでお掃除してるだけなのですが・・・」


「えっ・・・す、好きで掃除・・・じゃと!?」


と言って、固まってしまうテレサちゃん・・・。

実はテレサちゃん、あまり掃除は得意ではないんですよ・・・。

一応、彼女の部屋の中は片付いているように見えますが、その実は、段ボール箱の中に、適当にモノを投げ込んでいるだけなので、その中から何かモノを探そうとする時は・・・毎回、箱の中身を、全部出さなきゃならないという大変な状況になってるんです。

・・・そんなテレサちゃんは、自分よりも遥かに年齢の低いイブちゃんが、自ら進んでお片付けできるという話を聞いて、ショックを受けているんでしょうね・・・きっと。


まぁ、そんな事はどうでもいいです。

問題は雪女ちゃんのことをどうするのか、ですから。


テレサちゃんが黙り込んでいる間も、しっかりと雪女ちゃんの事を考えていた様子のアメちゃんが、役に立たないテレサちゃんの代わりに口を開きます。


「主は、雪女というものがどういったものなのか、知っておるか?」


「え?ボクのことですか?そうですね・・・ヌル姉様のホムンクルスであるボクには、雪女の本能がどういったものなのか直接理解することは出来ませんが、生粋の雪女であるヌル姉様の話によると・・・手当たり次第に人や動物を凍らせて、年間殺害数を他の雪女たちと競い合い、一番多かったものが次の一年間、王の座に着くとか着かないとか・・・」


「・・・なにそれ、怖いのう・・・」


自分が考えていたよりも悲惨な言葉が出て来たためか、目を細めて嫌そうな表情を浮かべるアメちゃん。

でも彼女は、すぐに首を振って、一旦リセットすると、再びユキちゃんに対して言いました。


「・・・ワシが知っておる限りでは、雪女とは、人間を寒さで包み込み、極限の状態の下において、その際に身体から滲み出てくる生気を吸い取る生き物じゃと聞いておる。吸われた量が微々たるものなら大した問題にはならぬが、もしも吸われ過ぎたとすれば・・・その先には、死あるのみじゃ。此奴が、主らの家に行ったとき、例えば寝込みを襲われることはないのか・・・そして、それに対処する方法はあるのか・・・。ワシはそれが心配でならぬのじゃ」


「・・・心配してくれてありがとうございます、アメ様」


そう言って頭を下げるユキちゃん。

その後で・・・今度はユリアお姉ちゃんが口を開きました。


「なら、大丈夫ですね」


「・・・?一体、何が大丈夫だと言うのじゃ?ユリア殿」


「いや、あのー・・・アメさまが仰った雪女の特徴なんですけど、実は私たちサキュバスとほとんど同じだなー、と思いまして」


「・・・は?」


「えっと、相手を凍らせるようなことはないですけど、人間の生気を奪い取って魔力に変えるというのは、私たちも同じなんですよ。それで、何が大丈夫なのかといいますと・・・要するに、生気を吸われないような対策を施せば、特に問題ないってことですよね?なら、お守りみたいなものがあるので、全然大丈夫ですよ?」


と言いながら、手につけられた純オリハルコンバングルを軽く持ち上げて、アメちゃんに見せるユリアお姉ちゃん。


私たちの事情を詳しく知らないアメちゃんは、それを見て・・・


「・・・主ら、只者ではないのじゃな・・・」


今更、そんなことを口にしたんです。


まぁ・・・私たちがどんな経験をしてきたのか、彼女に対して詳しく話したことが無いので、分からなくても当然ですよね。

私たちはこの世界の人間じゃないし・・・そもそも、ワルツお姉ちゃんの仲間に、普通の人間がいた(ためし)は無いですからね・・・。

もしかすると・・・アメちゃんもそのうち、普通のアメちゃんじゃなくなるかもしれないです。


・・・この時、逆に、アメちゃんのことを何も分かっていないはずなのに、私はそんな失礼なことを考えていたんです・・・。

物語は段々と……そして着実に、スタート地点へと近づいていきます。

……そう。

まだ、物語は、スタート地点までたどり着いていないんですから……。


まぁ、そんな意味深な発言はさておいて……。

今日の文の補足をしようと思います。


なんかあったかなぁ……って、見なおしてみたんですけど、無いみたいです。

……いい加減、メンバー紹介くらいは無いと、読者の方が混乱してしまうかも知れない、というのは感じていますけど。

というわけでテレサちゃん、挿絵もついでに頑張ってね?


次回、『よっしゃぁ!ここでイブが、教育のなんたるかを教えて……さ、寒いかもだし?!』乞うご期待?です。

イブちゃんがこの物語に出てくることは……あるのかなぁ……。

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