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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
26/66

1-25 はなふぶき?1

……今年も、大好きな雪の季節が終わりましたね……。

……()()日差しが降り注ぐ夏はまだでしょうか?

早く焦がされたいものです……。


「はぁ……」


家の窓から見える、少し霞がかった空に、ボクは憂鬱な視線を向けました。


そんな溜息に反応したのか、椅子に座っていたボクの斜め後ろの方から、急に人の気配を生じたか思うと……


「……シリウス様、ご機嫌がすぐ…………は……は……ハクションッ!!」


……眼を充血させつつ、くしゃみをするサキュバスの女性、ユリアが現れます。


「大丈夫ですか?ユリア?」


「……も、もう駄目かもしれません。この世界の花粉は、私に対して随分と攻撃的……ふぁっ……ファクションッ!!」


「…………仕方ありませんね」


このまま窓を開けていると、ユリアの整った顔が、鼻水で凄いことになりそうなので、ボクは窓を閉めることにします。


バタッ……


「そ、そんな……。シリウス様のお手を煩わせるなど……ふぁ……ふぁっ…………あ、引っ込でしまいました……」


「…………ちゃんとカタリナ様から貰ったお薬は飲んでいるのですか?」


随分と花粉症の症状が酷いようなので、ボクはユリアに問いかけました。

確か1日3回朝昼晩と飲むお薬を処方していただいたはずなのですが……


「はい。もちろん、朝の分は飲みました。ですが、今の時間はもう間もなく昼。そろそろ薬の効果が……ふぁ……」


「……困りましたね……」


窓を閉めたとしても、すでにこの部屋の中に入り込んだ分までは排除することが出来なかったようで、残留した花粉が彼女の鼻や眼の粘膜を、常に刺激し続けているようです。

……これは、最手段に出るしかありませんね。


「……ユリア。これから出かけますよ?」


「ふぁっ……ファックションッ!!うぃー…………ズズズズズ……。では、少々お待ちいただけますか?」


「……いえ、そのままでいいです」


遠くに出かけるわけでも、礼儀が必要な方に会いに行くわけでもないので、わざわざ着替える必要はありません。

もちろん、パジャマ姿ならどうかと思いますが、幸い、今のボクたちの格好は、普段着の姿。

近くのお店に、ちょっとお買い物に出かけるくらいなら、特に問題はないくらいの格好と言えるでしょう。


「さぁ、行きますよ?」


そしてボクたちは…………家主さんといつも通り言い争い(?)をしているイブちゃんと、それを止めようとしているシルビアとリサに対して、出かける旨を簡単に告げてから、憂鬱な外へと繰り出したのです。




……ピンポーン!


そしてやってきたのは……


ガチャッ……


「ぬあ?……なーんじゃ、ユキ殿とユリアじゃったか……。変な宗教かセールスの勧誘かと思ったのじゃ。まぁ、よいのじゃ。さぁ、上がるが良い」


斜めお向かいの家、テレサ様方が住んでいるお宅です。

この家では、花粉症に悩まされているルシアちゃんが、オートスペルを駆使して、家の中から花粉を排除しています。

ですから、ユリアの花粉症も少しは改善するかと思って連れてきたのですが…………どうやら家の中に、見かけない方がいらっしゃるようです。

お客様でしょうか?


「…………」コクリ


『…………』コクリ


「?!」


小さく頭を下げてこられたので、こちらも頭を下げ返したのですが……その際、どういうわけか、彼女は急に驚かれたような表情を浮かべられました。

何か、粗相でもしてしまったでしょうか?


「あの……何か?」


玄関でやりをするというのも失礼かと思い、テレサ様方のお宅の中におじゃましてから、ボクは問いかけました。

すると……


「主らも……ワシの事が見えるのじゃな……?」


立派な1本の尻尾を持った狐の獣人の女性が、そんな言葉を返してきます。


「えっと……おっしゃっている意味がよく分からないのですが……」


「あの、失礼かもしれませんが、見えて当たり前ではないですか?狩人様では無いんですから……」


と、ボクの言葉の後で、続けて口を開いたユリア。

どうやら、ボクだけがそう思っていたわけではなかったようです。


「う、うむ……。その節では、度々狩人殿に迷惑を…………いや、気にせんで欲しい……」


『…………』


少々発言の内容が気になるところですが、彼女も狩人様のことを知っているとなると……『他人』というわけでは無さそうですね。

話した様子では、テレサ様に似ておられるようですが……見た目は、ルシアちゃんのご親族か……あるいは、お母様、といったところでしょうか。


ボクがそんなことを考えていると、お茶とお茶()けを持って、テレサ様が戻って来ました。

その際、ユリアが慌てた様子で、テレサ様のお手伝いを始めます。


……従うべき上司が2人(ワルツ様を含めれば3人?)いるというのは、きっと大変なことですよね。

確かに花粉症は収まったようですが、今度は逆に、精神的な負担が増えてしまったでしょうか……。


「(……テレサ様。例のモノお持ちいたしました)」

「(……うむ。こちらも準備は出来ておるのじゃ)」


『フッフッフッ……』


……何でしょうか……。

あまり心配しなくても良さそうです。


「ところで……お主たちはどういった者たちじゃ?随分とテレサとは仲が良さそうじゃが……」


「えっと、ボクが雪女で元魔王、彼女がボクとテレサ様の部下のサキュバスです。テレサ様との関係は……大切なお友達と言えばいいでしょうか」


「?!」


そんなボクの言葉を聞いて、女性が急に驚いた表情を見せました。


……そうですね、無理は無いかもしれません。

驚いてもおかしくない点が、簡単に5つほど浮かんできますからね……。

もしかすると、魔族側の国の出身者ではなくて、人間側の国の出身者かも知れませんしね。


「ゆ、雪女じゃと!?」


えっと……そこに驚くのですか?


「え?あ、はい。雪女のユークリッド=A=シリウスと申します。親しいものからはユキと呼ばれておりますので、どうかボクのことはユキとお呼びください」


「う、うむ。……ワシは、アメじゃ」


「……雨?」


「……何じゃ、お主。まさか、雪と呼ばれたかったのではあるまいな?」


雪と雨……。

……悪くは無いですね。


「……何となく、親近感が湧く名前ですね」


「……そうかもしれぬのう。まぁ、主に雨と呼ばれるのじゃったら、別に良いか。こちらも雪と呼べばいいだけじゃからのう」


「はい。そう呼んでいただいても構いませんよ?」


……どうしてでしょうか……。

この方からは、何となく、同じ匂いがするような気がします。

仲良くやっていけそう、という直感の他にも何かあるような……。

……あまりこういうことは言いたくないのですが、『歴史』を感じるというか……。


「……お主、今、何か失礼なことを考えはせんかったか?」


「いえ。ちょっと、250年前のことを思い返していただけです」


「……は?」


「何でもありません。戯れ言と捉えて、聞き流してください」


「う、うむ。……どうやらお互い、深い事情がありそうじゃな……」


「そうですね……」


ボクたちがそんなやり取りをしていると……


「あ、ユキちゃん!」


リビングの中央にあった階段の上から、ルシアちゃんが下りてきました。


「失礼しています。ルシアちゃん」


「ううん。全然失礼じゃないよ?今日はどうしたの?」


「えっと……ユリアが花粉症で大変そうだったから、家から避難してきたのですよ」


「あー、そっかー。ユリアお姉ちゃんも花粉症だったからね……。で、その当のユリアお姉ちゃんは?」


「え?さっきまでここに……」


……多分このことを『忽然(こつぜん)』と言うのでしょう。

怪しげな笑みを浮かべていたはずのユリアとテレサ様がその姿を消していたのです。


「……お風呂かな」

「……そうみたいですね」

「……不憫じゃの……」


2人に何が起ったのかを理解して、ボクたちはお互いに苦笑を浮かべました。

恐らく、2人は、オートスペルの浄化魔法と転移魔法のフラグを立てて、お風呂場に転移させられてしまったに違いありません。

身体に花粉が付着したユリアにとっては、ちょうどいい身体の洗浄の機会かもしれませんね。


「そっかー。じゃぁ、お昼ごはんはどうする?っていっても、作るの、テレサちゃんだけどね」


「なら……お言葉に甘えても?」


「うん。良いよ?この前、狩ってきた牡丹肉が残ってるはずだし」


「なんか、この世界に来てもワイルドですね……」


……こうしてボクたちは、テレサ様やユリアがお風呂から上がってくるのを待って、お昼ごはんを一緒にいただくことになったのでした。

皆様、お初にお目にかかります。

ボクはユキと申します。

……いつも、テレサ様に、一人称を間違えられて書かれることのある、あのユキです。


今日から数日間、ボクたちが担当して書くことになりました。

慣れてないので、辿々しい書き方になってしまうかもしれませんが、よろしくお願い致します。

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