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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
15/66

1-14 おんせん?6

ガラガラガラ……


「さ、さむっ?!」


「……お主、先程まで湿った服を着て、この施設までやってきておったじゃろ……。そっちの方が、どう考えても寒いと思うのじゃが……」


内湯から露天風呂へと繋がるすらいどどあを開いて、妾とアメは外へと出たのじゃ。


するとのう、


「おー、ずいぶん遅かったな!」


狩人殿と、その他、ルシア嬢と主殿が、広々とした露天風呂に浸かっておったのじゃ。

……実はもう上がっておったらどうしようと思ったのは……妾だけの内緒なのじゃ。


「うむ。では行くかのう」


ジャブジャブジャブ……


と、内湯とは違って、焦茶色をした風呂へと進んでいく妾。

妾にとっても、寒いことに変わりはなかったからのう。


するとじゃ。


「…………」


……また、アメのやつが、風呂に入ろうとしないのじゃ。

石造りの浴槽の端で立ち止まって……湯に向かって眉を顰めながら、しげしげと眺めておるのは……一体どうしてじゃろうかのう?


「どうしたのじゃ?別に熱くもぬるくもないぞ?そのままじゃと風邪を引いてしまうから、さっさと入るが良い」


「むぅ…………テレサよ?」


すると奴は、風呂の中から手招きをしておった妾に、変な質問を向けてきおったのじゃ。


「主らは、()に入る習慣があるのか?」


「……茶?」


「この湯じゃ。この色……どう見てもほうじ茶じゃろ?内湯の方は透明じゃったが、こちらは随分と異質な気がしてのう……」


「……あぁ。確かにそう言われれば、茶に見えるかもしれないのう。じゃが、これは茶ではないのじゃ。良いから、身体が冷えてしまう前に、さっさと入るのじゃ。ほれ」


……そして妾は、周りに人がおらぬことを確認してから、アメの手を取って、風呂の中へと招き入れたのじゃ。


「……ふわぁ〜」


で、やつは呆気無くまた溶けたのじゃ。

全く。

さっさと入ってくれば、寒い思いをせんでも済んだものを……。




「〜〜〜♪」


親しい者たちとおんせんに行くと、大体誰かが口ずさむ謎の歌。

今歌っておるのは……狩人殿なのじゃ。

まぁ、狩人殿と風呂に来ると、高確率で何かを歌っておるんじゃがの。


……じゃがのう。

妾は言いたい。

今狩人殿が歌っておる曲……どーして歌詞を変えて歌うのじゃ。

それじゃと、動物全てがニャーニャー鳴いておるようにしか聞こえぬではないか!


しかしのう……。

せっかく気持ちよく歌っておるものを途中で遮るというのも如何かと思うしのう。

まぁ、よいか。


……え?

何を歌ってるか?

それは……あれじゃ。

規則と法律で守られておるものを侵害するわけにはいかぬから伏せておくじゃ!


「しっかし、茶に入ることがこれほどまでに気持ちの良いものじゃったとは……知らなんだ」


と、手のひらに温泉の水を持ち上げて、興味深そうに覗き込みながらそんなことを口にするアメ。


「じゃから、それは茶ではなく、おんせんの湯なのじゃ」


「ふむ……テレサよ。ひとつよいじゃろうか?常識的なことを聞くようで申し訳ないのじゃが、温泉とは一体何なのじゃ?」


おんせんとは何か……おんせんとは何か……おんせんとは何か…………・。

そんな言葉が妾の頭の中で木霊しておったのじゃ。

まさに哲学なのじゃ。

恐らく、世界のオンセニストとオンセナー、それにオンセニズムを研究する者たちの間でも、おんせんが何たるかは、はっきり分かっておらぬのではなかろうか……。

人を惹きつけて()まない、地下から湧き出る魔法の水。

……おそらくは、魔法がどのようにできているかを科学的に分析することと同じくらいに、説明することが難しいことじゃろうのう……。


「……多分、結果として、フェルミオンとかボゾンなどの素粒子が関係してくるのではなかろうか……」


『……は?』


腕を組みながら考えこむ妾に、皆、何故か怪訝な視線を向けてきたのじゃ。

……何かおかしなことでも言ったかのう?


「えっと、ごめんねアメちゃん。テレサちゃん、たまに頭がおかしくなることがあるから気にしないで?」


「お、おぬっ……!わ、妾は真面目に温泉が何たるかを考えt」


「温泉っていうのは、簡単に言うと地面を掘って出てきた温かい水のことだ」


……狩人殿が、妾の言葉を遮って、おんせんの表面的な説明を始めたのじゃ。

そんなことでは、温泉の真価を説明することなど到底不可のうじゃとい(以下略)。


「法律上は色々細かな決まりが有るんだが……まぁ要するに、入ると薬を飲んだ時のようにして、様々な効能を得られる特別な地下水、ってことだな」


「ほお、なるほど。狩人殿の言葉は分かりやすいのう」


「テレサの説明を私が端折って説明してるだけだから、言ってることは同じなんだがな。詳しい事はテレサに聞くといいさ。それと、私のことは狩人殿なんて硬っ苦しい言い方じゃなくて、狩人と呼び捨てにしてくれ」


「うむ。では、次回からそうさせてもらおうかの」


……狩人殿と狩人……。

どう違うというのじゃろうか……。

この場合、リーゼとか、エリザベスという本名で呼ばせるじゃろ……普通。

というか、妾が殿付けで、アメは付けなくて良いとは……一体どうしてなのじゃ?

まぁ、長い付き合いじゃからよいがのう……。


「さてと……そろそろ私は上がろうと思います。あまり長く入ってると、のぼせちゃいますしね」


「おぉ、そうだな。私も上がるとするか……」


「…………」こくり


ザバッ……


そう言って妾たちよりも先に入っていた3人は、上がっていったのじゃ。


「皆がいなくなると少し寂しいのう」


と呟くアメ。

どうしてじゃろうのう……。

そんなアメが、世辞ではなく、本当に寂しそうに見えるのは……。


「ふむ。じゃが、少ない人数で入る温泉というのも、悪くは無いものじゃぞ?……例えばのう」


ザバザバザバザバ……


「……誰もいなければ泳げるのじゃ!もちろん、普段、誰かが居る時にやってはダメじゃぞ?」


「う、うむ……」


……あの眼は……絶対、子供っぽいと思っておる眼なのじゃ……。

全く……可愛げのないやつめ……。


それから妾はムスッとした表情でアメにジト目を向けておったのじゃが……アメにそれを意に介した様子なく、やつは空を見上げると、ゆっくりと後ろに倒れて、後ろにあった岩の段差の上に頭を載せたのじゃ。


「はぁ……。空に浮かぶ星が綺麗じゃのう。こうして空が眺められる風呂に入れるとは思わなんだ……」


「……そうか」


じゃから……妾も横に並んで、空を眺めたのじゃ。

せっかくの心地の良い空気は、そう無下に壊すものでもないからのう……。


それから少しだけ無言の時間が続いて……しばらく経ってからアメが口を開いたのじゃ。


「……テレサよ。お主に聞きたいことがある」


「なんじゃ?年齢と体重は良いが、3サイズは絶対に聞いてはならぬぞ?」


「……3サイズ?」


「……いや、なんでもないのじゃ」


「よくわからぬが……それでじゃ。……お主たち……本当に人間か?」


「……今更、何を言っておる?それを言うなら、お主だって普通の人間には見えぬぞ?」


「……そうじゃな。わざわざ質問するほどのことでもなかったか……」


そして再び何もなかったかのように、空の星に眼を向けるアメ。


……実はのう。

なんてことはない、といった様子で妾は答えたんじゃが……実は、内心でビクビクしておったのじゃ。

……主殿のことが、もしかしてバレたのかと思ってのう……。

じゃが、そう言う意味で質問されたわけではなかったようなので、妾は内心でホッとしておったのじゃ。

え?

主殿の何がバレたと思ったのか?

……しばらくは秘密なのじゃ!


……しかし。

なら、アメはどういった理由で、妾たちに人間かどうかを問うたのじゃろうのう……。

やはりあれかのう。

温泉に入りすぎてのぼせたのかのう……。

のぼせ……のぼ……あっ?!


「ちょっ?!」


妾は思わず飛び上がったのじゃ。

……なぜならのう……


ブクブク……


……アメがおーばーひーとしたのか、湯の中に沈んでいく姿が、妾の視線の片隅に映ったからなのじゃ。


「ちょっ、おぬっ!!」


……その後、妾は、必死になってアメを救助することになったのじゃ。

全く、温泉に入りに来たというのに、ダメージを負ってどうするのじゃ……。

やはり、温泉の最後の話を1話で終えることが出来なかったのじゃ。

まぁ、しかたないじゃろ。


補足は……無いのじゃ!

主殿が何者であるかを書けぬ以上、主殿に関する補足をすることは出来ぬのじゃ。

あと、半年くらい先の話になるかのう。

……恐らくその時は、別の話がメインストーリーになって、そこに主殿が出てくるはずじゃがのう。

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