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「あぁ…、くそっ…。」


痛む頭を押さえながら体を起こす。

ベッドから降りて、顔を洗いに行く。途中、同居人である十夜がいないことに気づく。

あいつ、俺を起こさないで走りに行ったのか…。


いつもはこの後着替えて、十夜と走りに行くのだが、今日は遅くなったので、支給された服(ジャケットとズボンに部隊証が付いた感じのもの)に着替え、十夜が帰るのを、珈琲を飲みながら待つ。

少し経つと、


「よう、具合はどうだ?」


良い感じに汗をかいてきた十夜が部屋に帰ってきた。


「何で起こしてくれなかったんだよ」

「いや、すまんな。うなされていたからな」

「尚更起こしてくれよ」

「それで殴ってきたのは誰だよ…」


うっ、と眼をそらして言い訳を探す戦人。

そんな様子を見て、いつもこうなら友人も増えるだろうに…と、思った十夜だった。



十夜が流した汗をシャワーで流すのを待って、部屋を出る。十夜も戦人と同じようなズボンに、タンクトップという出で立ちだ。正直、筋肉の膨張率でちょっと、暑苦しい。


いつもならこのまま食堂に行き、朝食を取るのだが、今日は違った。


「おぉこれは我らが姫様、ご機嫌麗ぶらぁ!?」

「誰が姫様だ!」


食堂に向かう途中で同僚…、いや、天敵に出会ってしまう。


「痛いではないですか姫様!ですがこの痛みもまた…」

「当たり前だ、痛くしたんだから。」


出会い頭に戦人を姫様と呼んだ男は、一之瀬いちのせ 亮太りょうたと言い、歳は26、見た目はスラッとしていて長身。そしてイケメン。

見た目は非をつける所は無いのだが、内心が腐っている。

さらに言うと、この基地の人間は、見た目は良いのだが、心が腐っているという残念な人達が沢山いる。

挙げるとすれば、重度のアニオタ。M体質。ホモい人。筋肉大好き。

腐女子等々、細かい所まで挙げるとなると大変なので割愛。

因みに、この基地は転属されたくない基地No.1に堂々とランクインされており、転属されると何かしらに染まるという噂が流れている。


この亮太は、戦人親衛隊(非公認)の隊長と呼ばれ、日々気付かれないよう護衛ストーカーをしている。


「今日はどうしたのですか?調子が優れないようですが」

「うっせ、あんたには関係ない」


そんな感じで亮太が話しかけ、戦人はぞんざい相手をする、ある意味いつも通りの光景が完成する。

戦人は十夜とおまけと一緒に食堂に向かう。



「あ…、おは…よう…」

「あぁ、おはよう」


食堂に入り、朝食を取りに向かうと、見知った女の子から挨拶をされる。


彼女は佐伯さえき 未奈みな 戦人と同じ18歳。

印象としては小動物。髪を後ろでまとめ、前は眼にかかるぐらい長い。身長は戦人より少し小さい位だ。

彼女の所属はオペレーターとしてパイロットに情報を与えたりする事が主な仕事だ。

あまり喋るのが苦手だが、画面越しだと流暢に話す。

士官学校では内気な性格と、優秀な成績のせいでいじめられる事があったが、戦人が助けた事で事をなき得た。

恐らく流れで分かると思うが、彼女は戦人と同じ学校で、オペレーターコースを選択している。


「大…丈夫…?」

「何で皆勘が鋭いのかなぁ?」


そんな感じで話をしながら、三人はいつも使う窓側の席に向かい、食事を取る。(亮太さんはログアウトしました)



食事を終え、訓練と突発的な事態に備え、未奈は二人と別れる。


「気を…つけて…ね」

「未奈もな」

「転ぶなよ~」

通路の角で未奈と別れ、二人は目的地である武器庫に向かう。(別れた後、悲鳴のようなのが聞こえた気がする気のせいだろう)


今日午前中は、武器のメンテナンスに時間を費やす事になっている。と言っても、武器をバラしたり、射撃の訓練め兼ねているので、メンテナンスだけという事はない。


「あーら、今日の肌の調子悪そうね。何かあった?」

「…あー、おはよう、ございます。マム」

「ご機嫌麗しゅう、マム」


彼…いや、彼女の名前は 本田 ルナ(本当は本田 勝雄 (ほんだ かつお))歳は32。見た目は厳つい感じの人で、髪型は角刈りなのだが、染めていて赤っぽくなっている。彼女は今まで最前線に居たが、ここまで生き残った腕を買われ、新兵の援護役としてここにいる。普通ならこんな金を浪費するだけの基地ではなく、前線に近い所に行ける程の力があるが、性格があれなのでこの基地の担当になった。得意分野は狙撃だ。この基地の中では誰よりも命中率が高い。


「じゃ、今日の予定をやっていくわよ~」

「…うす」

「了解です」


各々が自分の装備を点検、試し撃ちをして狙いのズレを調節していく。

こういうのは整備係の人にやらせた方が良いのではと、最初は思ったが、

ルナ大尉の話だと、機体を棄て、逃げる際に、照準がずれている事を知らず、そのまま食われて死んだという話が山ほどあるとの事で、話を聞いてからは自分でメンテナンスするようになった。

階級に関しては、戦人が少尉、十夜は准尉。未奈は曹長で、亮太は中尉だ。これは自分の役割と戦場に出たかで差が出ている。





「相変わらず、ルナ大尉の狙撃はスゲーな」

「全くだ」


今日の予定を半分終えた二人は、食堂で昼食を黙々と食べる。

その間、様々な視線を感じるが、基本無視する。


午後からは訓練場で、体力作りや格闘技能の向上に時間を費やす。


体を暖める事も目的として走るので外に向かう。

と、ランニングコースの方から大きな声がしてくる。


「はっはぁ!走らんといざというときに殺されるぞ!なんなら俺が殺してやろうか!?」


なんてことでしょう。銃を持った男性が、前を走る男性達を追いかけながら、とても物騒なことを仰っています。


「おらぁ!どうしたてめぇらぁ!…ん?なんだ戦人か、どした?」

「いえ、少し慣らし運転しようかと思いまして。大丈夫ですか?」

「あぁ構わんぞ。おまえらぁ!少し道を開けろよ、姫さんのお通りだ!」

「(ビキッ)…あ、ありがとうございます」

とても良い笑顔で返す。


この男、四山しやま しょうは、ルナと同じく大尉で、いかにもかたぎの人間のような顔だ。頭はスキンヘッドで、なんと言うかゴリマッチョな人だ。彼もまた前線帰りの軍人で、基地内の格闘技と体力の向上に携わっている。


許可も出たので、一時間程かけて走り続ける。

その間、勝大尉や、他の軍人を何度か抜いていったが一切気にかけない。


走り終えたら今度は、屋内訓練場で十夜と共に、格闘技の訓練を行う。

他にも中で組み手をしている人が居たが、空きスペースがあったので、そこで組み手を開始する。

戦人と十夜の戦い方はある意味分かりやすく、戦人は柔、十夜は剛。

その踊りは多くの視線を引き寄せる。

時々休憩を挟みながら、お互いのつけ入る隙を指摘したりしながら組み手を続けていく。




二人は晩飯まで組み手を続け、食べて、食後の運動を兼ねて外に走りに行く。

外は生ぬるい風が体を撫で、虫の声が聞こえてくる。


「なぁ、俺は何時までここに居れば良いんだろうな」


ふと、そんなことを呟くように言った戦人。

いつもなら特に話す事もなく部屋に帰って、シャワー浴びて寝るだけだ。


「急にどうした?」

「俺は、今すぐにでも戦場に立ちたい。立って、フルムを潰したい」

息を切らさずに、並んで話す。


「俺は何時まで燻れば良い。もう三ヶ月もたった。謹慎だってもう十分なはずだ」

「そんな事、俺に言われてもな…」

頭をかきながら、

「多分だけど、今のお前だとずっとこのままかもな」

「なんだと?」

あ、今不快指数がぐんと上がったな。


「今の状態だと明らかに死にに行くようなものだからな。むざむざ機体や資源を捨てるようなものだから、まだ解きたくないのかも知れん」

「ならどうしろってんだ!?」

足を止め、戦人が怒鳴る。


「そうだな…。まず楽しみを見つけろ。そして大切な何かを見つけてみたらどうだ?」

「そんなもの…」

笑顔で言ってみたが俯かれてしまう。何か必死に探してるけど全くないって感じだな~。


「まぁ、ゆっくり探してみれば良いだろ。後は基地の人と少しは話してみたらどうだろう。変な人が多い…、しか居ないが良い人や、気の良い人もいる。案外、大切なものは近くに転がっているかも知れないぞ?」

「…俺は…」

「ゆっくり考えろ。焦んなくても大丈夫だ。あ、先戻ってるからな」


そして二人は別れる。

といっても、後で部屋で出会うのだが。


゛ここまでヒントを出したんだ。上手く行くと良いんだが…。今から少し仕込みでもしておくか…゛

いつも不安定な戦人を見ていて思ったことを吐き出せた十夜。

その足取りは外に出る前よりかるかった。


ちなみに戦人は十夜が寝ている間に帰ってきたようだった。








これが基本的な戦人の生活。

日常とは慣れてきた頃に呆気なく壊れ始める。

機体やフルムという言葉がちょくちょく出てきますが、直接関係が出るような場面になったら書こうと考えています。

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