第28歩 いるんです
私は極端に学校の成績が悪い生徒だった、というより馬鹿を絵に書いたような生徒だった。
馬鹿なので無知、無教養、いじめや差別も経験し毎日TVにかじりついてホームドラマを見て、よその家庭のことや世間の常識を学ぼうと必死だった。
しかし夢中のなったのは幻想と怪奇を扱うオカルト特番だった。
中学一年の時、国語の授業で自由課題作文を書く事になり、
その時、劣等生の私が書いた作文のテーマは『怖い話』だった。
それが担任の目に留まり文集に収録された。
そして先生自身の体験談を授業中に語ってくださった。
高校時代も担任の先生が授業そっちのけで先生自身の体験を語ってくださった。
どちらの先生も国語の先生で二人の先生が語って下さった話は今でも憶えている。
―私が中学一年の時、担任の先生は国語のN先生だった。
先生は若い時に大病され肺が片方無い先生だった。
しかし背が高く声の大きい元気な先生で勉強の出来ない私のことも差別せずに接してくださった人だった。
「勉強できなくてもいいけど成績が良いに越したことは、ないんだぞう」
先生が私の頭を撫でると教室に『ワッ』と笑いが起きた。
同じクラスに片思いの女子がいて思春期の私は、恥ずかしくて
死にたいと初めて思った。
そんな先生が若い時、病で入院していた事を語ったあと教室のみんなに質問した。
「みんなは幽霊がいると思いますか、実はね、いるんですよおー」
「えぇーーっ!?」
教室のみんなは感嘆のざわめきに包まれ
先生は御自身の体験を語りだした。
先生は若い頃、肺の病で入院していた。
そして同じ病室に入院していた人と仲良くなった。
先生は手術することになり無事完了して退院、自宅療養する事になった。
定期検診で病院に行くときはバナナを持って仲の良かった患者さんを見舞ったりしていた。
そんな、ある日。
先生が家で寝ていると夜中にパッと目が覚めた、妙に意識がハッキリしている。
頭の上の方に人の気配を感じて半身起き上り振り返ると
そこに浴衣姿の入院仲間が立っている。
「あっ」声を出した途端その姿は下から
―スーッ――と消えていった。
部屋には自分しかいない、だが夢じゃない。
「ひょっとして、あいつ・・・」
朝になって先生は病院に向かった。
「あのー・・・」
ナースさんに聞くと入院仲間は昨日、亡くなって今、霊安室に居るという。
先生は、ご遺体に言葉をかけて入院仲間に、お別れをしました。




