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箱館・怪談散歩  作者: オブチアスマ


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第20歩 職場移動の理由

 私がコンビニで夜勤をしていると日配品のトラックが到着して荷物が運ばれてきた。


ドライバーさんは前述のTさんだった。


いつものように

「毎度ぉー」と入ってくるかと思ったが何か様子が違う

また

「いやあー今日えらい目に遭っちゃってさあ」と言う。


その日の夕方、配達中に事故を起こしかけたという。


 チェーン店の配送で空港方面にトラックを走らせていると


突然!トラックの前に女の人が飛び出してきた。

 

―ドバン!――勢いよく撥ね飛ばした。


『やっちまったぁー…』鼻から息が抜けて全身に力が入らない。


ふわふわと震える足で急ブレーキをかけてギヤをニュートラルに入れ

サイドブレーキを引きハザードを点け後方からの車が来ないか確認、急いで飛び降りた。


トラックの前方を確認したが女の人が居ない。


トラックの下かと思い覗いてみたが誰も居ない。

信じられない状況に頭の中は真っ白、緊張からか手がビリビリ痛くなってきた。


あらためて周辺を確認しトラックのフロント部を確かめたが何も衝突した形跡が無い。


「おかしいなあ・・・」

ふと歩道に目をやると小さな女の子が顔に両手をあてて

「えーん」

と泣いている。Tさんは女の子に駆け寄って

「どうしたの」と聞くと


「ママ、ここで死んだの」と言う。


Tさんはギョッとして色々聞いてみると


何日か前に女の子のお母さんが事故で亡くなったという内容の話をする。


『そういうことか・・・』


事態を察したTさんは配達そっちのけでトラックを施錠して

近所の女の子の家まで手をつなぎ歩いて送ったのだという。


できれば、お線香でも、あげたかったが女の子の家は留守で誰もいなかった。


 後日、心からやりきれない気持ちになったTさんは場合によってはドライバーを辞めるつもりで会社に申し出てコンビニ担当から外してもらった。


「もう今日で最後です、お世話になりました」

「あ、いや、こちらこそ御世話になりました」


それ以降、私はTさんに会うことは無くなってしまった。

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