046-事実上陥落
轟音と共に、中央広場が陥没。
開いた穴は俺の泊まっていたホテルなども巻き込み、暗い穴へと落としていく。
そして、地響きが高まると共に、円錐に近い形の茶色い何かが急速に地下から迫り上がってくる。
あれがハイブの形成する前線基地だ。
今地上に出したのは、外からも見えるようにだが。
周囲に都市がないため、今回の対象は外で戦っている守備隊の戦意を削ぐためのものだ。
『残リハ、殺セ』
俺は追加で指示を出す。
今、都市のほとんどの人口は既にハイブ化している。
もう十分だ、他は要らない。
「.........」
俺は、改めて都市を見下ろす。
この都市はもう俺のものだ。
都市長らしき人物も堕落させた。
表向きはそうでなくとも、命じれば全てが都合良く動く。
全て、俺の得た力が可能にした事だ。
「ソウカ...」
何となく、俺は自分が何に突き動かされているのか理解した気がした。
俺は...自分を証明したかったんだ。
何者かになりたいだとか、力を示したいとか、そんなんじゃない。
ただ...
俺はずっと、同調圧力や社会、組織といったものに口を塞がれてきた。
自分に言い聞かせてきた、いつでもやり返せる、と。
でも、やり返せる力なんて俺にはなかった。
自分で身につけようにも、遅すぎた。
好きになれる事なんて無かったから、夢中になって鍛えるとか、そういうのとは無縁だった。
強く逞しくなるために必要な鍛錬は、苦痛でしかなかった。
「ナンテ、ナ」
本音は簡単だ。
全てぶっ壊してしまおう。
でも、皆は言うだろうな、皮肉屋ぶって、自分たちを棚に上げて。
逆恨み?
弱者の戯言?
情けないやつ?
違うな。
自分だってそうな癖に、お前らの物差しでこの想いにケチをつけるな。
ようやく俺は、自分の人生に意味を見つけられた気がしていた。
「自分ヲ...自分ニ、見セ付ケテヤル」
誰よりも自分に見せつけなければ。
何よりも自分自身に分からせなくてはいけない。
俺は...俺は弱くなんかない、と。
いつでもやり返せた、と。
あの時口を噤んだのは、俺にやり返せる力がなかったからじゃないと。
過去を笑い飛ばしてやりたい。
今までもこれからも、野望や衝動、復讐なんて名前をこの行動につけるつもりはないけど、理由を聞かれたらそう答えよう。
「サテ」
おセンチな気分に浸ってる暇はない、この時のために準備してきたんだからな。
俺は城壁の内側へと降りる。
既に内側には、剣と弓で分かれて武装した人型ベースのハイブ兵が集結していた。
彼らは俺が着地すると同時に、剣を抜いたまま綺麗に整列する。
しかしまあ、ハイブ化すると元の職業が何であったかとかはあんまり関係ないんだな。
兵士は全員出払っているので、男女混合の民衆がベースのハイブ生物ばかりだ。
「開門」
俺は命じる。
城壁のハイブ兵が、重い門の扉を開く音が聞こえる。
木と鉄格子で出来た扉が開き、俺の背後に道を開く。
「始メルゾ」
『ハイ』
『ハイ』
『ハイ』
『ハイ』
『ハイ』
響き渡る声。
俺は頷き、振り返った。
ハイブ魔物が、そこそこ苦戦しているという。
挟み撃ちにして、損耗をできるだけ減らそう。
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