Ep.3「ユウトの話」
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「怪我はありませんか?契約者さん」
絶対に、彼女は人間じゃない...
返り血と肉片で汚れたメイスさんを見て、俺は腰を抜かして動けない。
いや誰だってあんな残虐なものを見たらそうなるだろう...吐いてないだけマシだと思う。
「メ、メイスさんは、一体、何者なんですか...?」
「......?...」
メイスさんは「どういう意味だろう?」という表情で首を傾げている。頼むからそこで突っかからないでくれ...
それにさっきも同じような質問をしたような気がする。歯がゆい。
少なくとも、俺を心配してくれるから危害を加えるってことは無いと...思うんだけど...
どうにも、メイスさんのことを警戒してしまう。敵意は感じないけど、どっかしらのネジが外れている気がしてならない。
なにか地雷を踏んで、メイスさんの機嫌を悪くして俺の脳天をかち割られたら...たまったもんじゃ無い...
「契約者さんの護衛?召使?うーん...?」
やっぱり、曖昧な返事しか返ってこない。メイスさんは本当に何者なんだ?メイスを地面から引っ張り出すし、手は真っ黒になるし、馬鹿力だし...本人が何もわかんないんじゃぁ何も進まないなぁ...
「あっ!私のやりたいことならありますよ!」
「メイスさんのやりたいこと?」
メイスさんが目を輝かせ、得意気にそう言ってくる。やっと進展が来た!
「はい!私は、契約者さんを幸せにしたいです!」
メイスさんは胸を張ってフンッと鼻息を吐く。どうだ!すごいだろう!と顔に書いてある。
顔は口ほどにものを言う。というが、メイスさんはその擬人化みたいだ。かわいい。
「...俺の幸せ?」
「そうです!私は契約者さんを幸せにすることが使命であり、生きる理由です!」
そこまで言い切るかぁ...契約者って、俺のことだよな...俺の幸せって何だ?...お腹いっぱいになること?
俺の幸せはともかく、メイスさんが嘘をついている様子はない。メイスさんと会ってから二十分経ってないぐらいしか話してないけど...なんとなく、そんな気はする。だってすっごいふんぞりかえってるんだもん。私は幸せにして見せます!って。
「そうは言っても、お互いに初対面ですよね?」
「...あっ」
「あっ、て...」
メイスさんはポカンとした後に、すぐしょんぼりしてしまった。ベットベトに血まみれだけどかわいいな。
というか、俺もメイスさんのこと何にも知らないや。いやまぁ本人もよくわかってなさそうなんだけど...どうにも話が進まない。どうすべきか...
「あの、メイスさん」
「はい!なんでしょう!」
「なんだか改まって言うのもなんですけど、自己紹介しませんか?」
「ジコショウカイ?」
「そうです。自己紹介。お互いなんにもわかってないのはやりずらいので。多分、お互い一緒に過ごしますし」
今の俺にとってメイスさんがいちばんの頼りだ。何より、話し相手がいるのが一番嬉しい。人間はやっぱり社会的に生きてる生き物なんだなぁ。
「ジコショウカイ...?」
「...ん?」
メイスさんは頭に?を浮かべてずっと考えている。
...ひょっとして...
「自己紹介って、ご存知ありません...?」
「契約者さんの好きな遊びですか?」
そ、そうきたかぁ〜〜...
そうだもんな。こんな世界だもんな。俺の常識が通用するわけもないもんな。これは常識にとらわれた悪いわ。うん。
さっきの撲殺もそうだし、やっぱり俺の常識とずれているんだろう。以後気をつけるようにしないと...
「えぇと...自分のことを相手に知ってもらうことを自己紹介っていうんです。好きなこととか、やりたいこととか、嫌いなこととか。お互いに自分の事を教えるんです」
「ああ!なるほど!わかりました!...ってどうやるんですか?」
「まず最初に名前を名乗って、そこから初めて行くのが1番多いやり方かな...僕が見本を見せるので、それに続いてやってみてください」
「わかりました!」
「オホン。僕の名前はヒロトって言います。好きなことは本を読むことと運動することと人と話すこと。特技は...一応、勉強。人と離れると寂しくなってしまうので...その...色々お話しをしてくれれば...嬉しいです...」
何だこれ。すげぇ恥ずかしいな。ここしばらく自己紹介なんてしてなかったからなぁ...頬が熱い気がするし最後の方少し弱々しくなってしまった...
「今度は私の番ですね。私はメイス。契約者さんと一緒にいること、一緒にご飯を食べることが好きです。得意なことは、契約者さんを守ることです。契約者さんの幸せのために、頑張ります!」
メイスさんはどこまで行っても契約者さんが好きなんだなぁ...羨ましい限りだよ。本当。羨ましいだろ?
「と、どこか体を洗える場所を探さないと...」
「洗う場所?」
さっきからずっと無視していたんだが、今メイスさんは狼に返り血でびちゃびちゃだ。
あんなにいい匂いのメイスさんが臭い獣臭を漂わせているのはなんだか申し訳ない。あれ今俺キショイこと思ったか?
ともかく、どこか綺麗な川か池を探さないといけないんだが...
周りを見渡すと、のどかな平原がどこまでも広がっている。
しばらく観察していると、地平線に何やら集落のようなものがあるのがわかった。
「ここで足踏みしていてもしょうがないですし、あそこに行ってみましょう」
「はい。わかりました。ああそれと、私に敬語は入りませんよ?」
「えっ?」
「私は契約者さんのものですから。さん付けも要りません」
ふふん。と鼻息を立てて胸を張る。どこでそんな自信を持って来たのだろう。
「えっと...それじゃあ遠慮なく...メイ..ス?」
ううん。むず痒い。敬語は無くせると思うけど呼び捨ては流石になぁ...
「ウゥン!?...ンッ!...く...!」
「!?」
メイスさんがいきなりうめき声を上げ、身を捩り出す。そんなにしんどかったのか!?俺の呼び捨てが!?自分でもどうかとは思ったけど...流石にショック...
「ハァ...ハァ...な、何という破壊力...いつも呼び捨てされたら...く...!」
「えぇ...」
メイスさんは息を切らし、悶えている。そんなにキモイの...?まじで言ってる...?以降呼び捨てはしないようにしよう...
「と、とにかく!先を急ごう。さっきみたいに狼に襲われたらたまったものじゃないし...」
「ハァハァ...そうですね...早く移動しましょう...ハァハァ」
何この人怖い!慌てて話題を転換しちゃったけど、この人顔真っ赤だし!絶対怒ってる...俺が調子に乗ったからだ...怖い...脳天ぶっ叩かれそうで怖い...しばらく敬語は続けよう...うんそうしよう
...
......
.........
しばらく、俺とメイスさんは一緒に歩いていた。
メイスはどうやらハイヒールらしかったのだが、辛くないかと聞いたところ「大丈夫ですよ」というのでそれ以来言わなかったのだが...
歩いている姿を見るとまるでスポーツ選手だ。素人目で見ても体幹がブレてない。ハイヒールは柔らかい地面は歩きづらいと聞いていたんだけど、それでも疲労を一切見せず、さらにはあくびまでしてる。色々すごい人だ。
そんなこんなありつつ、村が見えて来た。結構な距離を歩いていて、日も暮れそうになっている。動中で狼に襲われなかったのも幸運だった。
とはいえ、俺は無一文。身につけているのは私服のパーカーとジーンズだけ。日が暮れて野宿だけは、どうにかしないと...
最後まで見ていただきありがとうございます。このシリーズはヒロトとメイスの甘々ストーリーを楽しんでいただく構成にしていこうと思いました。
次回は「閑話:メイスの視点」をやってからEp.4に行こうと思います。
ぜひ、次回もお楽しみに




