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Ep.1「膝枕された話」

初投稿です。見ていただければとても励みになります。

 「...。………。......」

 なんだ?何か話声が聞こえる気がする。まぁ見当はつく。俺の部屋に入る人なんて母さんぐらいだ。どうせまた、「遅刻するわよー」みたいなことを言っているのだろう。

 目を瞑ったままでもわかるほど、外が明るい...もう朝なのか...やだなぁ...高校は楽しいんだけど、授業が面倒くさい。

 とはいえ、単位が落ちるのも問題だしなぁ...いよいよ落単ギリギリなんだ...

 はぁぁぁ.......かったるい。もう少し余裕を持ってゆっくり眠らせてほしい...

 ...なんかやけにいい匂いがする。料理とかの美味しい匂いとか、洗剤の匂いとかじゃない。嗅いだことあるような...ないような...なんの匂いだ?

 匂いといえば、なんだか臭い。こっちは異臭とかじゃない。嗅ぎ慣れてる。草木の青臭い匂いだ。なんなんだ?これは...誰か俺の部屋に何かしたのか?

「ん...まぶ...」

 匂いの正体を探るべく、寝起きで重たい眉を上げる。

「......」

 目の前には何かがあった。なんだかはまだ頭が働いてないからわからない。でも、デカい何かがあった。黒い半透明の膜が張っていて、二つある。丸みを帯びていて、すごい柔らかそうだ

「あ。」

「あ、」

 目があった。二つの何かの隙間から目があった。二つの何かの隙間からすっごい美人がこちらを覗き込んでいた。

「おはようございます。契約者さん」

「え、あ?えぇと?お、おはようございます?」

 は、反射的に挨拶してしまった。状況が読み込めない。俺は今どんな状態なんだ?

 左に視線を移すと、これも黒い半透明の膜が張ってある何かを見た。これは何かわかった。腹だ。いつもよく見てる、人間の形の腹。なんでわかったかって?見えちゃったんだよ。おへそが。

「あぁ...」

「どうかしましたか?」

 うん。きっと何かの見間違いだよ。寝ぼけてんだ。そう、寝ぼけてんだよ。昨日はほぼ完徹級に起きてたからな。まだ頭が働いてないんだ。

 そうそう。目を瞑って、左側に寝返りをうって、違う夢をみよう。うん。そうしよう。

 ...

 ......

 .........

 ...俺はふと目を開ける。

 左側には一面に広がる平原が広がっていた。心地よい風が頬を撫で、鼻腔を土と草の優しい匂いがくすぐられる。

 そして、枕にしてはやけに柔らかい感触。さっきからずっと感じている、妙に心地いい暖かみ。

 ...

「ふふふ。まだ眠たいんですね」

「...」

 これって客観的に見たら非ッッッ常にまずい構図なのでは????

「あの...」

「はい。どうかしましたか?」

「今、これって、どんな状態なんでしょうか...?」

「どんな状態と言われても...膝枕?」

 あぁ。なんて素晴らしいんだ。

 さっきはチラッとしか見えなかったが、この人はかなりの美人だ。

 それに、膝枕ということは、俺が1番最初に見えた何か、俺は寝ぼけた頭なりに正体を理解した。

 さっき目の前にあったなにかは、全世界の男性が、喉から手が出るほどに欲していると言っても過言ではない、希少な存在。それも、ダイナマイトクラス。

 俺はなんて幸運な男なんだろう。美人が、それも明らかにセクシーな服装の美女が、俺を膝枕してくれていると?

 しかも、のどかな平原で?

 ...

 ......

 .........

「いやいやいやおかしいだろ!?」

「わっ」

 俺は勢いよく飛び起きる。

 絶対に何かおかしい。俺は幻覚でも見ているのか?まさか寝てる間にクスリでも注射された?

「どうしたんですか?そんなに急いで飛び起きて」

「どうしたもこうしたも、あなた一体誰なんですか!?」

 まずい。パニックだ。情報を、何か情報を探さないと。

「私ですか?」

「そうですよ!それに、いきなり膝枕するなんてどう考えておかしいでしょう!?」

 目の前の美人は立ち上がり、綺麗な姿勢でこちらを微笑む。

 改めて見れば、すごい格好だ。黒色ベースのローデニールの生地で作られたドレスを着ている。ゆったりとしたシンプルな形で、反対側の風景もよく見える。でも身体のラインを隠すほどではなく、まるでゲームに出てくるような、計算され尽くした絶妙なデザインだ。

 それでいて大事な部分はちゃんと隠れている。なんとも背徳的だ。それに、でかい。アレとソレもそうだが、何よりタッパがでかい。高校に二メートル十センチの外国出身がいるが勝るとも劣らない。百七◯後半の俺でも見上げないといけない。

「私は...誰なんでしょうか?」

「あなたが知らないならだれもわからないですよ!」

 調子狂うなぁ...なんなんだこれは?本当に現実なのか?匂いは本物。この手で感じられた暖かみも、立ち上がる時に触った草の感触も本物。まだエンジンのかかっていない脳みその感覚も本物。

 一体...一体何がどうなってんだ!?

「クソ、何がどうなってる...!?」

 考えろ...考えろ...心あたりが絶対にあるはずだ...

「あ、あの...」

「あぁ!?」

「ひっ...!?」

「あっ...」

 しまった。と思うには少し遅かった。俺に声をかけた女の人は今にも泣きそうなほどに悲痛な表情を浮かべている。

 くそ、キレそうになったとき、反射的に語気が強くなるのは悪い癖なんだ...

「ご、ごめんなさい...地面で寝ていたので...少しでも楽な姿勢をと...思って...」

 女の人は目には涙を溜め、だんだんと語気も小さくなっていく。

 くっそバカバカバカ...!何考えてんだ俺は!?どうする...どうする...

「えぇと、泣かないでください...俺...あいや...僕は別にあなたを責めているわけじゃなくて...」

「ごめんなさい...ごめんなさい...ごめんなさい...」

「えぇぇ...」

 泣き出してしまった...あぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁ!

 もうこのバカアホクズドジマヌケ!なぁぁんで女の人を泣かせるようなことができるんだよ!?自分の顔をぶん殴ってやりたい!!

 どうする...彼女は嗚咽を上げながら大粒の涙を流してしまっていて、とても耳に言葉が入るとは思えない...

「えぇいままよ...!」

「!!」

 俺は足元から崩れてしまった彼女を抱きしめ、頭を撫でる。

 ...我ながら、初対面の女性を泣かして抱きしめるんなんて、生理的な嫌悪感すら覚えるが...パニックを起こした俺の脳内じゃこれしか思いつかなかった...

「ごめんなさい...悪気があったわけじゃないんです...ただちょっと、混乱していて...」

 ああああキモイキモイキモイ。女性を無理に泣かして?そんでマッチポンプのように抱きしめて?挙げ句の果てには保身しか考えていないような事をなぁんで口走っちゃってやがんの?

 バカなの?アホなの?もういっそその命神様に返したら?

「契約者さん...」

「あ...あの...膝枕...ありがとう...ございます?」

 うっわ。もうなにも出ないや。自分で自分に吐きそう。さっさとくたばっちまえ俺。

 あぁ、もうブチギレられるのが目に見えるわ。

「えへへ...喜んでもらえて、嬉しいです」

「...えっ?」

 うそだろ...?通るのか?これが?

「契約者さん、ありがとうございます」

「あぁ...どうも...」

 俺の腕から離れた彼女は、目を腫れぼったくしつつも、優しい微笑みをこちらに向ける。

 なんで、こんなクズ男ムーブが通っちまうんだ...!?

最後まで読んでいただきありがとうございました。

不定期に更新しますが、次回もよろしくお願いいたします

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