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狂想爆炎ピアチェレディ!  作者: ハリエンジュ
第四話『夢想家どもの、終末糾弾』 ~スズベルパート~
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その2 奈落の少年

狂騒(きょうそう)爆炎(ばくえん)ピアチェレディ!

第四話『夢想家どもの、終末糾弾』

その2 奈落の少年


teller(語り手):スズベル=エメラルダー




 これまでのあらすじ。

 今から10歳のガキを助けねえと世界が終わります、ファイト!

 ……と、冥助(めいすけ)のオッサンに言われた。


 ………………いや。いやいや。


「……ッ、ファイトじゃねえよ!?!?」


「スズべル! 闇が迫ってきている! 操縦桿(そうじゅうかん)から手を離すなよ!?」


「わーってるよ! 凪哉(なぎや)! テメエは邪魔にならねえよう壁にめり込んどけよ!」


「だから無理は言うな阿呆!!」


「うっせテメエ確か自称奇跡だろ! そんくらい叶えろ!」


「ぼくの目指す奇跡はそんな杜撰(ずさん)なものではない!! くっ……今のジェーン・ドゥを雪の中に出すのは危険か……!」


「あーそうだ危険だ! とりあえず大人しく黙ってろやヘンテコ語彙野郎! 舌噛むなよ!!」


 雪の中、ブリキハートを走らせる。

 柔らかな雪の上を、凍った大地の上をどんどんと滑走して行く先に広がるのは、真っ暗な闇。

 雪景色にはかなり不釣り合いで異質な暗黒空間が広がっていて、しかもそこからどんどん闇が延びて白を飲み込んで、暗くてつまんねえ世界を広げようとしてやがる。


 でも、オレらはこの先に行かなきゃならねえ。

 冥助のオッサン情報によると、この先に、よりにもよって闇の中に――助けなきゃいけねえガキがいる。

 【妖精因子(フェアリーファクター)】を暴走させちまってる、まだ10歳のガキンチョ。

 そんなオレの半分も生きてないチビスケが、たった今、世界の命運なんかを握ってる。

 正直厄介なことになったとキレ散らかしたいくらいだが、そんな時間も惜しい。

 まずは駆けて駆けてあの闇に飛び込んで――暴走の渦中から、闇の内側から、事態をどうにか収めるしかねえか。

 雪対応装備が無い機体でどこまやれるかわかんねえけど、一応凪哉と【レディ】ジェーン・ドゥも連れて。

 ほんっとに厄介なことになったし面倒なことにもなったけど――頼んだぜ、ブリキハート。オレの愛機。


「……? 先程から冥助殿が静かだな?」


「オッサン今頃忙しいんだろうよ。ノリがユルくてムカつくあのオッサンが世界の危機とまで 言いやがったんだ。さすがに真面目に解析だの対策だのやって頭抱えてんだろ。今回はオッサンのサポートは期待しねえ方が――っと……!?」


 滑走していた雪原が、急に崩れた。

 氷に覆われていた大地が、闇に触れた部分から次々に割れていく。

 突然の地割れ、割れた先にはやっぱり底の見えない闇。深淵。異空間。


 まるで、世界が奈落に落ちていくみたいだと思った。


「く……っそ……!!」


 掴まれるような引っかかりは辺りに見当たらなくて、ブリキハートは地割れに飲み込まれて闇の中に落下していく。

 引きずっていたジェーン・ドゥごと。

 コックピットに居るオレと凪哉ごと。


 終わりの見えないジメジメした、クソみてえな真っ暗闇に――オレたちみんな、堕ちて行った。





『……もしもーし』


 ……ん、あれ。

 少し意識トんでたな。クソ、不覚。

 頭ガンガン痛ぇし重いし……ああ、落ちた時ぶつけたんだろうな。

 くっそ、嫌になる……早く頭のボヤボヤ振り払って起きねえと――。

 ……こういう時、アリスちゃんみたいな美少女にキッスの一つでもしてもらえりゃ最高の目覚めなんだけどなあ……。


『……スズベルくーん? ……ありゃ困った。全然起きない。凪哉くんごめん、ちょっとスズベルくん蹴り起こしといて』


「うむ、承知した」


「ッッってえ!?!?」


 ――悲しいことに現実ってやつは残酷で。

 オレの横っ面にかまされたのは美少女のキスなどではなく野郎の渾身の蹴りだった。

 痛みと衝撃のせいで一気に起き上がるハメになったし、否応なしに意識が覚醒させられた。ふざけんな。力技すぎんだろアホか。


「てっめえ凪哉!! 承知した、じゃねえわ! 少しは躊躇えや! ガチで蹴ってくんじゃねえよ! 歯折れるかと思ったじゃねーか!」


「すまない……貴様があまりに気味悪くにやけていたものだから、ぼくもつい力が入ってしまった」


「『すまない』の後に続く言葉じゃねえだろそれ! ケンカ売ってんのか買うぞコラ!?」


『はいはいスズベルくんうるさいよー。俺マジで今色々手が離せなくてそんな頻繁に君のクソ野郎っぷりフォローできないんだからマジメにやんなー?』


「……人を起こす手段に暴力を命じるあたりオッサンも立派にクソ野郎だとオレは思ってっからな……」


『そお? お揃いだねおめでとさん。そんじゃめーすけさんは事態解決のためにガチ集中しなきゃだから、お二人さんは引き続きファイトファイト』


「だからファイトじゃねえわ! そんな軽く言うな!!」


 久々に冥助のオッサンが通信入れてきたかと思ったら、大した話はしねえしなんだアイツふざけんな。

 忙しいとか言ってっけど実はそこそこ余裕あるんだとしたら許さねーぞあのちゃらんぽらんユル男。


 オッサンへの苛立ちをしまい込む為に吐き捨てるように息をついてから、状況を確認する。

 ここは……地下か。しかもかなり深い。

 オレと凪哉は相変わらずブリキハートのコックピット内。

 引きずってきたジェーン・ドゥの反応も近くに確認できる。

 辺りはまあ、予想はしてたが暗い。だいぶ闇に飲まれちまってる。

 ライトを点けようと手を伸ばした時、凪哉が言った。


「……スズベル。前方に人が居る」


 凪哉はフィジカルだけでなく視力も桁外れに良いらしく、前方を真っ直ぐに見て――何かを捉えたらしい。

 オレの方はブリキハートのコックピット内のモニターの反応と、モニターが捉えたシルエットの小ささを確認して舌打ちする。


「……気ぃ引き締めろよ、凪哉。不本意だが、今のオレらには世界まるごとって大層なモンが託されちまってる」


「……となると、あの影……いや――あの少年が……」


 前方に間違いなく居る、小さな影。

 10歳くらいのガキのシルエットと考えりゃ、妥当だ。


「……ああ。あいつが【妖精因子(フェアリーファクター)】でこの闇を作り出しちまった、今回の騒動元。――オレらが今から助けなきゃなんねえ、クソガキだ」


 オレと凪哉、そしてブリキハートの視線の先。

 ようやく点けたライトに照らされたのはやっぱり、10歳くらいの男のガキと――その背後に(そび)え立つ、【レディ】らしき巨大ロボットだった。





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