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狂想爆炎ピアチェレディ!  作者: ハリエンジュ
第二話『奇跡は綺譚を紡ぎ出す!』 ~スズベルパート~
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その5 新たな役者、いざ、お迎えに!

狂騒(きょうそう)爆炎(ばくえん)ピアチェレディ!

第二話『奇跡は綺譚(きたん)を紡ぎ出す!』

その5 新たな役者、いざ、お迎えに!


teller(語り手):スズベル=エメラルダー



 戦いを、終えて。

 次の異変の発生地・雪原地帯に向けてブリキハートを走らせつつ、コックピットの中でオレは冥助(めいすけ)のオッサンに問いかけていた。


「……オッサン、あの金髪モンスター野郎……マジでWITTS(ウィッツ)に入れんのかよ?」


『金髪モンスター野郎、じゃなくて凪哉(なぎや)くんね。いい加減に可愛い女の子以外の名前を覚える習慣をつけなねスズベルくんはさ。……でまあ、凪哉くん本人の強い希望だしねえ。善性強めだしやる気満々だし初陣(ういじん)で強かったし、いーんでない?』


「……人間の、凪也(なぎや)=ラブクラフトへの贖罪(しょくざい)にもなるからか?」


『まーね。それなんだけど、凪哉くんにも話しといたんだけどもさ』


「あ?」


『その、凪也=ラブクラフト青年……色々、不可解な人間だったりすんのよ』


「……不可解?」


『うん。WITTS(ウィッツ)入隊を夢見ていた善良な青年……って凪哉くんは凪也青年のことを話してたわけだけどさ。WITTS(ウィッツ)に入りたいならこの大陸だと我らがイース・トーヴ支部を目指すはずじゃん?』


「まあ……地図上はそうなるよな」


『でも凪也青年はこの荒野地帯に居た。……どのルートからスタートしたとしてもね、支部を目指すならこんな荒野地帯は通らないはずなんだよ』


 冥助のオッサンの言葉に不穏さを感じ、オレはブリキハートの移動速度を緩めないままに眉を(ひそ)めた。


「……金髪……あー……凪哉、は。その凪也=ラブクラフトって人間の記憶も受け継いでんだろ? なんか事情知ってんじゃねえの?」


『凪哉くんはまだ人格とか生まれたてで無垢すぎるからさ。凪也=ラブクラフト青年の人格や人生の全部をまだ深くまで噛み砕けてないんだ。だから、凪也青年の全ては謎が多い。経歴もね』


「経歴……は、オッサンが調べられんじゃねえの? 得意だろ、個人情報暴くの」


『人聞きめっちゃ悪すぎない? それはともかく、調べ物まだ無理よ。データベース漁ろうとしたけどロックかかってたんだよね。……誰かもわからん人間の手で』


 ……それは。

 誰かが意図的に、凪也=ラブクラフトの経歴を隠してるってことか?

 何の為に。


 きな臭い情報の数々に、オレの眉間にはどんどん皺が寄る。

 対して冥助のオッサンは、いつもと変わらん飄々とした調子で話を続けた。


『もしかしたら、だけどね。凪也=ラブクラフトくんという人間の死には、まだ何か裏が隠されているかもしれない』


「……ただの被害者じゃないかもって言いてえのか? ……そうだとしたらよ、そいつの死を防げなかったオレたちに都合良すぎだろ。そんなの――」


『ま、ほんとに善良な青年の可能性も高いし、そうだとしたら責任はもちろん俺たちWITTS(ウィッツ)にある。とりあえずはその方向で考えて、一人の人間の死を重く受け止めつつ未来の悲劇を防ぐ為に今後もファイトってことで』


「軽いんだよテメエはよ。凪哉の野郎に殴られても文句言えねーぞ」


『スズベルくんがまずおもーく受け止めてるっぽいからねえ。俺たちどっちも沈んでたら凪哉くんもやりにくいと思うよ?』


 どんな時も自分のノリを崩さねえ冥助のオッサン宛に舌打ちをする。

 このオッサンのこういう態度が、いつも腹立つ。


『まあ凪也青年のことは俺もちょこちょこ調べてみるからさ。スズベルくんは仲間入りしそうな凪哉くんの面倒見てあげてねー』


「……あの野郎、オッサンのことは『貴殿(きでん)』だの『冥助殿』とか呼んだりで敬意見せるくせに、オレにはナメくさった態度とんだけど」


『まずスズベルくんが凪哉くんに対してアホみたいに口悪くて態度ひっでえから、そりゃ向こうからも雑な扱いされるでしょうに』


「オレの優しさは可愛い女の子専用なんだよ! そう……例えば純情可憐純粋無垢を地で行く麗しのアリスちゃんのような♡」


『目的地到着まで、推定残り――』


「だ、か、ら!! 鬱陶しくなる予感したらすぐナビの振りすんじゃねえ!! 切り捨て方が雑にも程があんだよ!!」


『死ぬほどどうでもいい話題だからなあ……ほら、雪原地帯急ぐよー。そこの問題解決して支部戻れば君の愛しのアリスちゃんを迎えに行けるんだから。キリキリ働きなー?』


「言われなくてもトバしてやるぜ。なんてったって、オレだけのフェアリー・メイド兼天使♡ ことアリスちゃん♡♡ が健気にいじらしくオレのことを待って――」


『推定残り二時間を―』


「ナビ化はもういいっつの!!」





teller:凪哉(なぎや)=ラブクラフト



 我が愛機、ジェーン・ドゥ。

 その肩に乗り、風を一身に受け、空を見上げ――ぼくは決意を新たにしていた。


 冥助殿の話に、よると。

 我が友――凪也には、謎が多いらしい。

 凪也の死も、ぼくがこうして生まれたことも、もしかしたら今のぼくでは想像もつかない背景があるのかもしれない、と。


 そうだとしても。


 ぼくは、誓いを込めて冥助殿に告げた。


 ――凪也がどんな人間であれ、死の際にあった凪也の優しさに、彼が紡いだ物語に、ぼくが救われたことは確かなのだと。


 ぼくの決意は変わらない。

 ぼくは、奇跡を果たす。奇跡そのものになる。

 凪也の物語に惹かれたぼくが、凪哉として、新たな物語で世界を満たす。


 その為に、ぼくはWITTS(ウィッツ)に入隊する。

 世界を満たす物語を、愛と希望と幸福で彩るために。

 奇跡として生き、多くの希望を守る為に。


 左手を、空にかざす。

 冥助殿が遠隔操作した小型ロボットが即席で作り、ぼくに与えてくれた(たい)摩擦(まさつ)用グローブが、そこには()められていた。

 ちょうど手の甲の辺りに埋め込まれたレンズは、冥助殿との通信を便利なものとするらしい。

 有難い話だ。


 空にかざした手。

 空に焦がれし瞳。

 それらを得た自分自身への充足を噛み締め――。


「凪哉=ラブクラフト!! この名の奇跡、広めてみせる!!」


 ぼくだけの決意表明を叫び、少しだけ微笑んでみる。

 

 さあ、奇跡の幕開けだ。

 物語は、永く永く、続いていく。





「……思ったんだけどよ」


『なんだいスズベルくん』


「……凪哉の野郎の喋り方、なんであんな妙ちきりんなんだ?」


『それについては諸説あるねえ』


「諸説だあ?」


『凪哉くんが凪哉くんとして生まれた際、言語出力がバグ起こすハメになったか、もしくは』


「もしくは?」


『……凪哉くんの人格や知識の元となった凪也青年が、普段から独特趣味の読書等に(ふけ)っていたか』


「よし、嫌な予感してきたからこの話もうやめようぜ。これ以上触れちゃいけねえ気がする」


『うん。深掘りせずにそっとしとこうね。気まずいからね。ところでスズベルくん』


「ああん?」


『これから雪原地帯に行くわけだけど、凪哉くんのジェーン・ドゥはまだ内部の設備が不十分で寒さに耐えられないわけよ』


「…………ん?」


『もうちょっとしたら、ブリキハートのコックピットに凪哉くんを入れてあげなね』


「………………オレのブリキハートには、オレの他には可愛い女の子しか入れねえって矜恃(きょうじ)が」


『捨てちまいな、そんな矜恃(きょうじ)。コックピット入れてあげる時はちゃんとスズベルくんから凪哉くんに声掛けてあげてね。心配してるって気持ちと、あと態度の悪さへの謝罪は、ちゃんとはっきりわかりやすい言葉で堂々と伝えなね。人としてね』


「……………………待っててねオレのアリスちゃん……感動の再会のその時はアツいハグをしようねアリスちゃん……」


『都合の悪い展開になったからって甘ったれた妄想に逃避するのやめな??』



◆3話につづく!

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