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064_やり過ぎだよね?

今頃になって蒼の胸の秘密が! 多分成行任せだからでしょうね。

もしくは蒼が自分の胸で悩んだりせず、寧ろ面白がっていたから?


作者もずーっと耳鳴りが続いているけど、痛くも痒くも無いから、

全く気にならない。 案外、ソレに近い感覚なのかも知れません。

遠藤さんが優秀過ぎて、俺のする仕事が無くなって来た。 これは想定外の僥倖(ぎょうこう)


ちなみに遠藤さんというのは母ちゃんが紹介してくれた、というか財団運営の為

に派遣してくれた秘書室期待の新人さんで、牛丼チェーンの店長やらNPO法人の

役員やらフリーのライターやら大学の講師やらと、かなり変わった経歴の持ち主。


・・・その経歴から、凄く優秀で少しばかり変わった人だろうとは予想していた。

多様な経験と知識と行動力を持ち乍らも、気紛れでやや落着きのない人だろうと。


・・・・・・・・・


母ちゃん(いわ)く『 ムラっ気さえ無ければ、万能レベルに優秀な好青年 』とのこと。

ちなみに 28歳、その年齢でこの経歴は確かに凄い。 いい意味でも悪い意味でも。


それでも・・・癖は強いが、それ以上に優秀な人材だと母ちゃんは評価している。


そんな優秀な人材を、俺の許に派遣した理由は二つ。 一つは純粋に優秀だから。

生まれたばかりの組織には、骨格を組み上げる能力を持った人材が不可欠だから。


もう一つは俺の想像なんだけど、母ちゃんとの相性が最悪だろうから。 母ちゃん

の突発的な気紛れを許容する様なタイプでは無いと思ったのだ。 間違いなく退社

するだろう優秀な人材を駄目元で、俺なら大丈夫かな? と考えて派遣した可能性。


まぁそんなことは、今となってはどうでもいい。 結果的に大成功だったからだ。


・・・・・・・・・


本当に優秀過ぎて・・・俺に残された仕事は資金調達だけになってしまったのだ。

そしてその資金調達も、既に計画は作成済みで最終的な纏めに入っている状態だ。


その纏め作業は当然乍ら、セキュリティの都合で自室PCでしか行う事が出来ない。


・・・・・・・・・


つまり、映研部室で行える仕事が、いよいよ無くなってしまったという事になる。


・・・そんな事を、ぽつりと漏らすという事件が発生した。


具体的には近日発売の円盤をチェックしていた時に、沢瀬から追及を受けたのだ。


『 仕事を私や伊藤君に丸投げしておいて、ひょっとして蒼君は暇なんですか?』


・・・と。


・・・そんな事件があったのだ。




   ◇ ◇ ◇




「 今日は蒼君の奢りですから、皆さん、遠慮なく召し上がって下さいね 」


金曜日の放課後、映研部全体ミーティングと称して天王寺の回転寿司店を訪れた。

態々天王寺迄足を運んだのは、学園近くのお店より美味しいという評判だからだ。

その上駅に近いという利便性にも優れたお店でもある。 難波よりは空いてるし。


「 このお店、現金オンリーってことはないよね?」


念の為、沢瀬に確認する。 普段から現金は 3 万ぐらいしか持ち歩かないのだ。

『 大丈夫です、カードも使えますよ 』ということなので、遠慮なく注文してね。


俺の言葉に昂輝が率先して大量注文を入れる。 昂輝は食べない俺に代わって、

こんな場面ではいつも旗振り役を買って出る、気の利く、とてもいい奴なのだ。


続いて山田と田辺もどんどん注文を入れる。 これで一年生も頼み易いだろう。

『 大トロを食べたい人は⁉』 等と言い乍ら、皆でタブレットを操作し始めた。


・・・俺にもタブレットが回って来た。 スワイプし乍らメニューを眺めていく。


・・・・・・・・・


実は俺、回転寿司の方が一般的なカウンターのお店よりも好きだったりするのだ。


先ず声を出さなくてもタブレットで注文出来る処がいい。 声を出すのは疲れるし。

対面しての注文だと『 えっ⁉ そんだけ?』って顔をされるから。 毎回の様に。


そして何より・・・「 おっ⁉ 抹茶パフェなんか有るんだ! しかも期間限定!」

充実したサイドメニュー。 「 んじゃ俺は茶碗蒸しと抹茶パフェで決まりだな 」

形式とかマナーとか無視して、好き勝手に食べたいモノだけを注文出来るからだ。


寿司屋に入って寿司を食べない。 普通の寿司屋だとちょっとやり辛い事である。

それを職人さんに気を遣わずに出来る。 だから俺は回転寿司の方が好きなのだ。


江澄さんも俺と同じ寿司抜き注文。 抹茶パフェに大盛ポテトフライ、割と健啖。


「 別にお寿司じゃなくてもいいけど、もう少し位食べる様に努力しないとねぇ。

  美倉とみーちゃんの欠食コンビは。 特にすぐに倒れて周りを心配させる方!」


五十嵐の言葉に欠食コンビを除く全員が頷く。 旗色がむっちゃ悪いから追加注文。

俺がかんぴょう巻で江澄さんは若鶏の唐揚げ。 日和った俺と初志貫徹の江澄さん。


・・・・・・・・・


江澄さんって、意外と強情なのかも?  そんな俺の推量を、

「 単に食べ物の、好みの問題では?」  沢瀬が軽く否定した。




   ◇ ◇ ◇




( あんなに食べて大丈夫なのだろうか? ) 手島君の食べっぷりに少し驚いた。


そして去年の今頃家に来た、高梁の、予想を超えた食べっぷりが思い出された。

俺の二人前は食べるだろうという予想に 『 三人前は食べるわよ 』という言葉。

姉ちゃんの言葉に従って良かったと実感した、アノ食べっぷりと同じに見える。


・・・・・・・・・


あの大量の食べ物が、身体を急成長させるエネルギーに変換されるのだと思った。


そして、俺には真似の出来ない事だとも思った。 俺って少し食べ過ぎたら、直ぐ

お腹を壊すし、お腹を壊さずに済んだとしても、翌朝の体調に悪影響が出るのだ。


沢山食べるという行為は、消化器系には大きな負担になってしまう行為だからだ。

沢山食べるという行為に、消化器系が耐えられない・・・そんな人間も居るのだ。


・・・成長期・か。


・・・胸なんか大きく成らんでいいから、その栄養分身長が伸びて欲しかったわ。


・・・・・・・・・


医者は自律神経がどうのとか、男としての第二次性徴が現われてないからだとか、

色々と理屈を()ねていたが、結局ハッキリとは判らず仕舞い。 稀な症例で終了。


・・・ホント、何で背が伸びずに胸が膨らんだんだろ?


・・・少し、真剣に考えてみるか?


胸といえば脂肪。 主な役割は乳タンク。 ん⁉ ・・・脂肪と乳? 乳脂肪分⁉


・・・まさか!?     アイスクリームの食べ過ぎなのか!!!?


・・・・・・・・・


だったら・・・仕方ない。 本当に、どうしようもない事だったのだ!


だってアイスと邪魔な胸、どちらかを選ぶとなったら、当然アイス一択だもんな!


・・・・・・・・・


ということで、胸に関する考察は終了。 茶碗蒸しが驚く程の早さで回って来た。

回転寿司の茶碗蒸しは朝から湯煎で温めっ放し。 なんて話は本当かも知れない。


間髪入れずにかんぴょう巻も回って来た。 このスピード感も回転寿司のいい処。


「 かんぴょう巻は蒼君でしたね・・・それでは、はい、これも一緒にどうぞ 」


そう言い乍ら沢瀬は、かんぴょう巻のお皿と一緒に、一部の紙束を手渡して来た。


・・・ふむ?


・・・何なのよ?


・・・この分厚い紙束は?


・・・【黒髪の戯れ】・・・て、何の事???



「 皆さん、食べ乍らで構いませんので、お配りした冊子を御確認下さい 」




   ◇ ◇ ◇




「 何というかね、来年の文化祭で発表する映画を作ろうって・・・どゆこと?」


沢瀬の言葉は俺の常識を超えたモノだった。 流石は常識に囚われぬ蛮族の女王。


「 部活規定にも、帝山祭参加規程にも抵触してませんから問題ありませんよ? 」

「 いや、帝山祭の規定には、年度内の活動に限定されると書いてあるでしょ? 」

「 そうですね、ですから前年度には撮影だけしか出来なかった映像データを、

  帝山祭同一年度内に編集して完成させるのなら、何の問題もありませんよ 」


普通に今年の帝山祭までに完成する映画を、無理矢理年を越して仕上げるってか?


・・・・・・・・・


確かにルールだけを見れば問題は無い。 ルールの盲点を突くといったやり口も

沢瀬らしいし、何でもありな映研部らしいとも思うけど、少しばかり抵抗がある。


「 今年上映予定の【家族を想った二人】ですが、長崎ロケの都合で三年生だけ

  が出演する映画になりましたけど、仁宮さんも小田部さんも、蒼君と一緒に

  映画を作りたかった、蒼君と共演したかったと、望まれていた様なんですね 」


抵抗はあるんだけど、こんな話を聞かされたら文句なんか言えなくなってしまう。


・・・・・・・・・


長崎ロケが駄目だったとは言わないけれど、にやこたにも配慮すべきだったのだ。


・・・全ては沢瀬の掌の上。 という事が判っていても認めざるを得ないと思う。



映研部全員の賛成で新作映画の制作が決まった。



山田と江澄さんの二人は『 興味無いから賛成でいいよ 』が見え見えだったけど。




   ◇ ◇ ◇




その夜、当然の如く沢瀬はお泊りだが、映画の打合わせも兼ねてにやこたの二人も

泊っていく事になった。 二人は今度の映画でも準主役で出演するし、次代を担う

映研部のWエースでもあるのだ。 仁宮さんが部長で小田部さんが部長補佐は確定。


その次代のツートップと殆ど幽霊化した田辺、そして俺と沢瀬と姉ちゃんの六人

が新作の脚本に目を通している。 「 BLではないのですね 」と呟いたのは田辺。


・・・・・・・・・


確かにBLではない。 てか百パーセント百合。 俺が主役なのに百合映画なのだ。

しかもベタベタに甘ったるい恋愛モノ。 脚本は薫坂智詩(かおるざかさとし)? 何か知ってる様な?


「 蒼君が ” 変態眼鏡 ” と呼んでいる方ですよ。 前々から思っていたのですが、

  蒼君はもう少し人の名前を覚える努力をした方がいいと思います。 相手の

  方に失礼です。 蒼君だって " 病弱ちゃん " なんて呼ばれたら不快でしょ?」


うん、むっちゃ正論をかまされた。 でも興味を覚えない、関わりを持ちたくない

相手の名前までいちいち覚えるなんてねぇ・・・記号か渾名で十分だと思うのよ。


・・・・・・・・・


そんな相手に何て呼ばれようが、どう思われようが、俺の知ったこっちゃ無いし。


・・・とは云わないけどね。 絶対に何倍にもなって跳ね返って来るだろうから。


それにしてもあの変態眼鏡・・・随分久しく顔を見てなかったから、とうに関係が

切れたものと安心していたけど・・・まさか、こんな形で関わる事になるとはね?


「 ひょっとしてこの脚本って、沢瀬が作成を依頼したの?」


「 違いますよ。 私が蒼君を主役に映画を作っていることを知った薫坂さんが、

  是非にもと、脚本とメインキャストの衣装提供を約束して下さったのですよ 」


ちょっとした、興味本位の疑問に対しては、かなり驚かされてしまう返答だった。

・・・脚本だけでなく衣装迄とは? 変態眼鏡には何のメリットも無いだろうに?


「 「 お姉様に、自分が作ったお話に出演して貰い、自分がデザインした衣装を

   その身に纏って貰う。 それを超えるご褒美なんてありませんから! 」 」


残念乍らこの二人の言葉はあまり参考にならない。 仁宮さんの正確無比な分析力

と判断力も、スーパーアシスト小田部さんの異常に鋭い勘と洞察力も、俺が絡んだ

途端に何故かポンコツ化してしまうからだ。 本当にどうしようもないレベルまで。


・・・・・・・・・


でもまぁ、馬鹿と変態眼鏡の考える事は解からん。 そういう結論で問題は無い。


・・・と思う。


そんでその変態が書き下ろした脚本なんだけど、かなり評判がいいみたいなのだ。

狂信レベルのBL教徒である田辺でさえ『これはこれでアリです!』とか言うのだ。


「 今日の脚本、面白いと思った?」 『 それなりに面白そうだが?』

「 今日の脚本、面白いと思った?」 『 そうだね、かなり面白いと思ったよ 』

「 今日の脚本、面白いと思った?」 『 はい! 素敵なお話だと思いました!』


俺は何処が面白いのか解かんなかったけど、男子三人の評判もなかなかいいのだ。


・・・本当に、何処が面白いんだろう?


「 蒼君の恋愛理解力はバッタ並みですからね 」


・・・どうやら、そういうことらしい。


「 そんなことよりも、仁宮さんと小田部さんには観て頂きたい映像があります 」




   ◇ ◇ ◇




『 ・・・や・あっ、だめ・ぁん・・・ㇵァ・ 』

『 フフフ、もうこんなになってるのね・・・ウフッ、何が駄目なのかしら?』

『 ・・・そんな・・・ㇵ・・・ゕ・ぃ・・・ゎせ・や・ぁん・・・ 』


     「 「    (  ・・・・・・・・・  )    」 」


沢瀬が用意したサプライズ映像に、にやこたの二人が無言のまま見入っている。


【家族を想った二人】のセル専用長尺版である【奪われた恋人】のワンシーン、

マンションのテラスに造られたセットで、秘密裏に撮影された俺と姉ちゃんの、

かなり濃厚なベッドシーンだ。 R18扱いでもおかしくないと思うが一応はR15。


性器を映さなければ、かなりエロくてもぎりぎりR15と主張出来るらしいのだ。


・・・知らんけど。


ともかく、そんな沢瀬の趣味が暴走したエロ映像を、二人は見せられているのだ。


・・・どんな表情で見ているのかは判らない。 俺より前に並んで観てるからだ。


・・・・・・・・・


というか、俺が後ろに避難しているからだ。 この状況、殆ど羞恥プレイだもん。


撮影してる時は姉ちゃんと沢瀬だけだったから、そんなに気になんなかったけど、

それを他人に、特に下級生に見られるとなったら、かなり恥ずかしいものがある。


いや、恥かしさなんかより、二人がどう思っているのかが気になってしまうのだ。


俺の事を、男のくせに女みたいに愛撫されて悦んでいる・・・そんな変態野郎と


     「 「    ・・・ じゅる ・・・    」 」


思って・・・ ” じゅる ” とな? 何かを啜った様な音が聞こえた気がするんだが?


・・・まるでよだれを啜ったかの様な、いや、忘れよう。 そんな音はしなかった。


とにかく、よだれを啜った様な音がすることも無く、平穏無事にエロ映像の鑑賞会

は終わったのだ。 うん、これで全て終了したのだ。 という訳で俺はもう寝る。


・・・逃がしてくれなかった。 沢瀬がパジャマの襟をがっつり握っちゃってるの。


解かりました。 大人しく座っています。 それでいいんでしょ? いいみたい。


「 実は【黒髪の戯れ】には続きがあるんですよ 」 


そう言い乍ら沢瀬が鞄から取り出した冊子。 その表紙には【黒髪の悦楽】の文字。

今この時点で話し始めたことから物語の内容は想像出来る。 間違いなく百合エロ。


「 尤もコレは上映時間の制約上、セル専用パッケージのオマケなんですけどね 」


いや、絶対にオマケなんかじゃない! 寧ろこっちが本編だろ! エロ優先だろ⁉

変態眼鏡が協力的な理由が判ったわ! 自分が観たい百合エロの為、それだけよ!


「 仁宮さんと小田部さんの二人には、先ほど見て頂いた映像と同じ内容の演技を

  蒼君と三人で演じて貰おうと考えています。 勿論断って頂いても構いません。

  その場合は別の方にお願いする予定ですので。 ・・・で、どうされますか?」


「 「 やります!! いえ、是非やらせて下さい!! 」 」


沢瀬の言葉に即答する二人。 二人揃って()()()が全身に漲っている様に見える。


・・・・・・・・・


少し冷静になって考えてみない? さっきのアレ、殆どAVよ? ソレに出るんよ?

いくら次代の映研部を担う立場だからって、あそこまでする必要は無いと思うよ?



・・・てか、アレは絶対にやり過ぎだよね?




「 「 お姉様!! アレはAVなんかじゃなくて、芸術です!! 」 」



・・・・・・さいですか。



悲しい事ににやこたの二人は、完全に沢瀬サイドに堕ちてしまった様だ。

対面しての  :注文で、『 えっ⁉ それだけ?』と言われたことがあります。

        酒は飲まない、沢山食べないは、正直外食し辛いものがある。


朝から湯煎で :真偽は不明です。 でもそう考えても不思議はない程、

        回転寿司の茶碗蒸しって、出来上がりが早いですよね。


知らんけど  :実際、性器を映す以外では明確な線引きが無いみたいです。

        あくまでもエロに限定した話になりますが。 後は知らん。

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