7話 ダンジョンと気まずい再会
夜もまた投稿するかと思います
「準備は万全よね?」
「ああ大丈夫荷物も全部入ってる、というかこれで確認は俺自身でやったのも含めて10回目だぞ? でもいいことだな!」
「ええ。それじゃ、気合を入れていくわよ!」
2人は、その足でダンジョンへと向かう。
そう、ツカサにとっては初めてのダンジョン攻略である。
♢
「見つかったの!? ダンジョン!」
「うん、ツカサでもいけそうなダンジョン調査の依頼が入ってたよ」
「俺でも〜!? おいおいどんな強敵なんだ!?」
「サントリナ、書類」
「あ、はい」
「普通に無視された……」
いつになく真面目なソニア。難易度としては簡単ではあれ、それだけダンジョンが危険であることを物語っていた。
「調査対象となっているこの2つのダンジョンは観測できる限りでは低級モンスターしか見かけられなかった。ダンジョンだけでなく周りにある森や土地にもスライムがたまに見受けられる程度で、君にはもってこいの依頼だと思う」
けど、とソニアは前置きする。
「危険なことには変わりないよ。本当に行く?」
「ああ、リサもいるし大丈夫! やばそうだと思ったら逃げるし!」
「ツカサもこう言ってるし大丈夫よ、それにいつまでも私とツカサをスライム討伐の任務だけに回せないでしょ。いつも経営難なんだし」
そう、ソニア率いる『阿吽の花』はギルドマスターが安全第一主義なのもあり、クエストをこなす回転率があまり高くなく、所属人数も少ないためお金の巡りは良くない、というよりハッキリいうとかなり貧乏なのだ。
「うう〜…貧乏で申し訳ない」
「別に貧乏なの自体はいいけど、借金抱えて解散しなきゃならない、とかが嫌だって話よ。」
「えっそもそもここって貧乏なのか?」
ツカサがリサとソニア2人の会話に横から入る。
「見ての通り…って言ってもツカサはギルド初めてだもんね、無理もないか」
「ちょっと待ってサントリナの口からそういうの出るのなんか嫌なんだけど」
かなり信頼を置いていたようでいざサントリナからその事実が告げられるとソニアが不満そうな顔をしていた。
「あっいやマスター……私はそんなところもアットホーム感があっていいと思います!」
「そ……うか」
「そんなのどうでもいいわよ。それより準備始めるけどいいわよね? ソニア」
「うーん……まぁ、ツカサもそろそろ小慣れてきてる感じもするし……うん、十分気をつけるのが条件だけど、行ってみようか? ダンジョン」
「はい! 任せてください!」
♢
そして現在。準備を終えたツカサとリサはダンジョンまで来ていた。
「冒険者協会からの情報によると…本当にスライムばかりが出現するダンジョンで、探索するエリアもさほどなさそう。だって」
「聞いた限りじゃ本当にどっちも難易度の低そうな場所だな」
「ただ、ダンジョンってだけで不確定要素が多いんだからソニアも言ってた通り、重々気をつけるわよ」
「ああ、しっかり冒険セット一式整えてきたし! 気を引き締めような!」
ツカサは顔を二度叩き、ダンジョンへの入り口に足を大きく踏み出した。
ダンジョン内には、スライムや、ゴブリンなどがいたが、リサと協力しながら動くことで、奥まで難なく攻略することができた。
「ここまでは順調ね、順調すぎてダンジョン感なんてないくらいだわ」
「そうだな、普段のクエストとあんまり変わらないかも」
「もう最深部まで着いちゃったものね…」
特に何があるでもなく、ただ魔物が住み着いているだけの遺跡だった。
「ダンジョン調査がこんなので良かったのかな…何もねえじゃねえかって怒られる?」
「そんなことないわ。全貌が明かされていない遺跡が、中は何もなかったっていうのがわかっただけでも協会側からしたら助かる情報だもの。まあ、危険なダンジョンよりは当然報酬が少ないと思うけど…それでもダメなんてことはないのよ」
「ああ、ソニアさんがそんな感じのこと言ってたな。貢献するほど追加報酬は多くなるって」
「ええ、だけどその分危険が増すって意味だから。ソニアは危険だってわかってるダンジョンじゃなくてこういう安全性が高いダンジョンの方が好きなのよ。報酬が低そうだってわかってる分他のギルドもあまり食い付かないしね」
「安全性を重視してるんだな」
「そうね」
ソニアの慎重さは筋金入りだ。だからこそツカサはより一層、入る前よりもギルドの皆んなを好ましいと思った。
「けどさ、リサは案外1人でもガツガツ行くタイプだよな、ダンジョンにも乗り気だったし、俺と会った時もギルドからだいぶ遠いところに単身でいたんだし」
「ええ、まあそれでソニアにはしょっちゅう怒られてるわね」
「でもリサは『阿吽の花』でバリバリ冒険者としてやってるんだろ?」
「ええ」
もっと精力的に動くのなら、他に合ってるギルドがある気もするのに、なぜあのギルドに所属しているのだろう、とツカサは言いたいのだろう。その意図を汲んだ上でリサはキッパリと言い切った。
「あのギルドが好きなのよ。だから移籍する気もないわ」
リサの言葉に笑顔で頷くツカサ。
「俺も、『阿吽の花』のみんな、気持ちいいくらいに良い人たちで好きだ。誘ってくれてありがとな」
「ふふ、みんなって言っても3人しかいない弱小ギルドだけどね」
「あはは」
「そこはそんなことないって言いなさいよ!」
「ぎゃあ!」
それはそれで変なツッコミだろ、と満足げに言いながらリサと笑い合った。
「それじゃ帰りましょうか。帰りに奇襲がないとも限らないから、ちゃんと注意するわよ。そんでもってもう1つのダンジョンもキッチリ調査しましょ」
「当然!」
♢
無事にダンジョンを出た2人。心なしか入った時よりも空は青く澄んでいた気がする。
「実際来た時より雲が少し晴れてるわね」
「ダンジョンをクリアした清々しさからそう感じたってことにした方がいい感じなのに……」
ふ、と笑いながらリサが歩いていく。
「その清々しさは帰って味わうものよ。ほら、気を引き締め直してもうひとつ、行くわよ!」
「そうだな!」
そうやって会話をしていると。
小さく、しかし怒号のような音が響いた。
「!? リサ…今のって…森からか!?」
遺跡より少し離れた場所にある森。ツカサは確かにその方角から音が聞こえたのを見逃さなかった。
「ええ、間違いないと思うけど…」
「人が襲われてるんじゃないのか? それとも、魔物同士の喧嘩か?」
「今の音だけじゃわからないわ…」
「見るだけ行ってみよう、リサ!」
その言葉に、すぐにうんとは言わず。
数秒間だけ思考した。
「リサ?」
「…貴方を守りながら闘う余裕がないくらいの相手だったらすぐに退くわ。いいわね?」
「ああ」
リサとツカサ、2人で森に侵入し、音のした場所へと向かう。
そして今も何かと何かが衝突する場所へと向かうと。
「誰かが戦ってるぞ…!」
「……!」
リサは、一瞬目を揺らしたが、すぐに戦闘体制に切り替えた。
「貴方に私の魔法を掛けた。とはいえあのレベルの魔物相手じゃ直撃は危険だわ、私が奇襲を仕掛けるからツカサはその後確実に一撃を入れられるタイミングで攻撃して」
「了解!」
その魔物は熊のような見た目で鋭利な爪を用いて女性冒険者を攻撃していた。
「ふっ!」
「グォオオ!?」
「!? 貴方……」
リサの唐突な一撃にモンスターが驚き、体勢を崩した。
「よろけたわ! 今よ!」
合図に合わせ、木の上からツカサが渾身の蹴りをモンスターの後頭部に打ちつけた。
「そら!」
よろめき倒れるモンスター。だが、最後の抵抗か、バッと立ち上がり、爪を振りかざす。
──が、その一撃がツカサにかかることはなかった。
「……お?」
前に出していた両手を下げ、モンスターを見ると、脳天に剣が刺さっていた。
「ありがとうございます。助かりました」
冷静に一撃を加えたソロ冒険者は、淡々と2人の前に立ち礼を述べた。
「あ…いや、こっちこそ。助けてくれてありがとうございます」
「ツカサを助けてくれてありがとう。おかげで怪我せずに済んだわ」
「……」
少し暗みを帯びた黒い長髪の少女は、少し無言になった後。
「リサ、私のことが分からないんだ、本当にどうしようもないね…」
「…え?」
少女は剣を引き抜いたあと、血を拭き処理をしていく。
「その声……もしかして……」
「ようやく気づいたんだね。私はさっきから気づいてたよ」
眉をひそめながら、リサは不安げに声を漏らす。
「リサ……?」
「久しぶり、リサ」
「……ガーベラ」
1つ目のダンジョンをクリアしたのも束の間、リサと何やら訳ありの少女が再会を果たしたのであった。




