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6話 スライム討伐級冒険者

本日2話目になります!

「こんな形だけど…初めてのクエストって緊張するな」

「まあ今回は簡単な試験みたいなモノだけどね私もついてるし…」

「でも緊張するんだよ!」

「そりゃそうよね」

  

 くの字を90度傾けた目をしながら、ははは…と笑うリサ。


 ♢

 

「クエストぉ?」

「そ、今どれくらいの実力があるのかを知るためのテストに行ってみて欲しいんだよね。ここ数日間サンドラたちと一緒にみっちりキミのことしごいたし、ここいらで今のキミの力を把握しておきたい」


 話を聞いていたリサが横からソニアに質問する。

 

「ツカサだけで行かせるの? 危なくない?」

「もちろんリサも同行してもらうよ。2人でのスライム狩りってことだね」

「ということは…俺の初クエストってことか!」


 ♢

 

「着いたわ」


 森の入り口で足を止めた。横にはモンスターに警戒しろという警告が書いてある看板。


「ここにモンスターがいるんだな」

「ええ」

「全然普通の森だけど…」

「そんなものよ」


 看板を見ることもなく、森の中に入っていくリサ。


「魔物…モンスターと呼ばれている奴らはただの獣じゃない。魔力を持ってる獣よ」

「うん、ソニアさんに聞いた」


 モンスターたちは例外なく魔力で身体を強化しているため、普通の獣をさらに凶悪強靭にしたような存在と認識しても間違いはない。


 そのため魔力を扱えない人間がモンスターを見かけた際には兎に角刺激を与えず逃げることが重要である。

 

「モンスター討伐は冒険者の主な仕事の1つよ。ツカサも冒険者ならできないとね」

「あ、あれ!」

 

 ツカサは目撃した、徘徊するそのモンスターに既視感があった。

 それは、リサと会った時に襲われた魔物。


「ええスライムね」

「よっし」

「ちょっと待って」


 ツカサが片足を前に出したところで、しなやかな手を身体の前に伸ばし、進行を止めた。


「まず私がお手本を見せるわ」


 ゆっくりとスライムに近づいていく。そして、スライムがリサの存在に気付いた瞬間に、魔力を解放した。

  

「来なさい」

「!」

「ふっ!」

 

 至近距離での遭遇に驚き、一気に飛び込み攻撃を仕掛けるスライムに、カウンターの要領で剣を振る。


 見事に、スライムは裂け、動きを止めた。


「おお……」

「スライムは流動的な見た目をしているけれど、頭部がしっかりあってそこが急所よ。攻撃してくる時が頭部を狙いやすいから、そこを狙ってみるといいわ」

「了解」


 そして、もう一匹スライムを見つけるまで探し続ける。


「いたわね」

「ああ」


 ツカサが、のそのそと地面を徘徊するスライムの背後から忍び寄る。


「そらっ」


 鮮やかに駆けるツカサ。

 その流れるような動きで、スライムに気付かれる前に頭部を粉砕した。

 

「どうだ?」

「見事よ。もう動いてても魔力で強化はできてるわね」


 リサの分析通り、ツカサは魔力を込め強化した拳でスライムを倒した。


「ああ、それもある程度慣れたし、スライムなら安定して倒せそうだ」

「だからって舐めてかからないこと。きっちり弱点を突けばわけないけどいくらスライムでも複数相手に舐めてかかったら足元掬われるからね。というかそれはどんな相手でもそうだけど」

「もちろん」


 リサは納刀し、ツカサに注意を促す。また、ツカサも当然のことだと納得し頷いた。


「死体は帰ってギルドに報告すれば回収してくれるから。基本はどのモンスターの討伐依頼でも、もしくは他の素材回収の依頼でもそうだけど、サントリナへの報告は怠らないこと、いいわね」

「了解!」


 元気のいい返事に笑顔で首を縦に振るリサ。

 そのまま少し歩いた。


「まだ何かと闘うのか?」

「いいえ。この森に来たついでに薬草を取っときましょ。確か薬草納品の依頼があったはずだから」

「なるほどな」


 手際よく草を引っこ抜くリサを横目に、観察する。


「慣れてるなー」

「ほらほらみてるだけじゃなくて貴方もやってみて」

「うん」


 ホイホイ、とリサが引き抜いたものと同じ草を抜いていく。


「それじゃ帰りましょうか」

「いやー案外スッと終わったな!」

「そうね。まあ、こうなるとは思ったけど」 


 ♢

 

「おかえり」

「ただいま!」

「ただいま」


 2人を笑って迎えるソニアとサントリナ。


「その様子だとクエストは問題なくクリアしたみたいだね」

「はい!」

「スライム討伐級冒険者、おめでとう」

「ありがとう! …それは……すごいの?」


 疑問を浮かべるツカサにリサが横から説明した。


「D級おめでとうってことよ」

「ありがとう! 嬉しい! ありがとうありがとう!」


 ツカサがぴょんぴょんと飛びながら礼を言う。

 

「ソニア的にはあれは素直に喜んでると受け取る感じ…?」

「さぁ本心か皮肉で言われてるのか分かんね…」


 リサとソニアは苦笑いを浮かべながらツカサを眺めていた。


「ま、これでちゃんとD級として最低限やっていけると示せたわけだ。私たちのギルド『阿吽の花』での初クエスト達成、本当におめでとう」


 ソニアがガッチリ肩を組みながら祝福する。


「んで、まずは結果報告だよ。サントリナ」

「はい!」 


 ヒョコヒョコと資料を持ちながら、立ち上がるサントリナ。

 

「ツカサ、こちらで報告を」

「ん、ああ!」


 サントリナに引かれツカサが奥の部屋に行く。

 そして2人になったタイミングでリサがソニアに向けて口を開いた。

 

「見に来てたでしょ」

「ええ〜?」


 ピュイーとわざとらしい口笛を吹くソニア。

 

「ツカサはスライムにも臆さずに対応できたわ。もうダンジョンに行っても大丈夫だと思う」

「なりたてD級冒険者に1人でそれは無茶だよ」

「もちろん私も行くわ」


 目を泳がせるソニアに、どっしり構えた姿勢のリサが目をむける。


「うむむむむ……」

「大丈夫よ、やばいと思ったら否が応でも逃げるし、ツカサも無理矢理でも私が逃すわ」

「……ほんとに?」

「ほんとよ」

「ウソのウソだったりしないよね?」

「しないしない」

「……ほんとのほん」

「ほんとだし! あんま意味ないでしょこの水掛け論!?」


 そう、リサの言うとおり今のソニアは別にリサから本心の確認がしたいわけではなく。


 心の中にある不安を解消するために時間を使ってるだけなのだ。


「〜〜〜」

「モジモジしてるけど…まだ決まらないの?」

「そんなこと言われてもさ〜私もギルドマスターだから色々考えなきゃなんないんだよ〜」

 

 はぁ、と大きなため息をついた後、ソニアを説得するべくリサは椅子に腰掛ける。


「ツカサはギルドのため、私を手助けするために頑張ってくれてる。私もツカサがどんどん成長すればするほど助かる。ソニアも、ギルドの経営が楽になる。ツカサが経験を積むのは良いこと尽くしじゃない。危険だったらすぐ帰るって言ってるんだし」

「まぁね〜」

「盗賊との一件と違って万全の体制でいけるから事故もほぼ起きないはずよ」

「うんうん」

「……ある程度情報が把握できてる簡単なところに行くだけなら?」

「そうなんだよね〜」

「こいつ……」


 ソニアがもはや自分の世界に入っていることを確信したリサは普通に悪態をついた。

 

「はぁ……フィオナはまだしばらくは帰ってこないわよ」

「ううむ……仕方ない、行ってみる?」


 不安で仕方がない、という顔をしながら、恐る恐るリサを見る。


「危ないと感じたら逃げるから、ほんとに大丈夫よ。無理はさせないわ」

「じゃあ…ダンジョンは私が指定したところに行くこと。それが条件。いいね?」

「ええ」

「それまでは普通にクエストに行ってね。ツカサが対応できることはなるべくツカサにしてもらう感じで」


 了解、と頷く。


「それと、盗賊の被害に遭っていた村のこととその周りでの違和感について冒険者協会に連絡しておいたんだけど、調査内容、今聞く?」

「ええ」


 ソニアが真面目な口調で語る。


「まだ原因は把握してないんだけど、モンスターが多いっていうのは当たりだった。近頃、あの村の周辺の土地でモンスター出現の報告が多くなってたみたい」

「! やっぱり…」

「原因は把握できてないみたいだから、解明されたらまた言うよ」

「ええありがとう」


 ソニアは人差し指の爪を親指で削りながら、ぶっきらぼうに報告していく。


「それと、盗賊のことだけど」

「ええ」


 その癖のようなものを続けながら。


「捕まったって。だからもう気にしないで大丈夫」


 嘘をついた。


 ──今はまだ詳細がわからない。なら知らなくていいことだ。


 その判断が、結果として正しかったかどうかはわからない。だが、ソニアはリサに降りかかるリスクを考慮して誤魔化した。


「それじゃあ暫くは安全なクエストを続けるわね」

「うんお願い」


 そして数週間後。ツカサとリサはダンジョンに行くことになるのだが、その新たな扉が開かれたときこそが、2人が新たな騒動に巻き込まれるきっかけとなる瞬間であった。

 

次話からはまた新たな人物たちと出会うことになります!

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