乙女ゲームじゃ…ない?
王都は王太子と王太子妃の誕生に沸いていた。
今日、わたしはライアン第一王子と婚姻し、それとともに彼は立太子された。
厳かな式が行われ、王都をパレードしたあと、外国からの来賓も招いての披露パーティーが開かれる。
パレード用の屋根のない馬車に乗り、大歓声の中、わたしとライアンは国民に向けて手を振った。
多くの護衛の中の一人として、騎士団に入団したルイスが馬で並走し、文官としてライアンに仕えるイーサン、ノアも近くに控えている。
公爵家の娘となることを決めてから、わたしは王族の婚約者になるための勉強を始め、恋愛小説を読む時間もあまりなくなってしまった。
けれど新しいことを吸収していく日々は楽しくもあり、疲れた時にはいつものメンバーがお茶会を開いてくれた。
四人だけでなく、時にはわたしの友人たちや、公爵家と付き合いのある人たちなどを交えることもあり、様々な人と交流を持つことができた。
公爵令嬢のおいしい手作りお菓子が食べられる、と噂になったお茶会は、王子をはじめ見目麗しく優秀な令息たちがいることもあって参加希望者が殺到した。
おかげで人脈は広がり、猛勉強の甲斐もあって、学園を卒業する頃、わたしはライアンの婚約者と認められた。
それから一年、今日ようやくこの日を迎えたのだ。
そんなわたしたちを繋いでくれたお茶会が始まるきっかけは、一人でこっそり食べていたクッキー。あの時のノアは本当に子犬みたいだったなぁ、と馬車から手を振りながら回想していて、ふと気付いた。
あれ、ケイナインって……
前世で、犬って意味じゃなかったっけ?
エイブは、エイプ、猿に似てるし……
フェザント、って何だっけ。……キジ?
オグル……オーガ……鬼?
わたしの名前はモモ……
じゃあ、手作りお菓子で次々とお友達になっていったのは……
「モモ?どうした、ぼうっとして」
放心するわたしを心配してライアンが声をかけてきたが、それに応えるどころではなかった。
「ここ、乙女ゲームじゃなくて、桃太郎かよ!!」
この世界が桃太郎なのか、乙女ゲームなのかは、このあとのモモの幸せな生涯の中で判明することはなかった。
小ネタをいろいろ入れていたのですが、途中で気付いた方はいらっしゃったでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。