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徒の目覚め



おはようございます。


今回は心の中でよく喋る主人公視点。

お腹空く回かもしれません。


どうぞ。





 ちゅちゅっ ちゅん


  ちちっ



 朝。鳥の(さえず)る声と頬を撫でる柔らかな風に目を覚ます。


「んっ、、、!

 くぁぁ、、ふう」


 気持ちのいい朝の微睡(まどろ)みに、大きくのったりと伸びをして新しい空気を身体に満たす。


 こんなに気持ちの良い目覚めは久しぶりな気がする。

 頭の後ろに少し残った穏やかな眠気がとても心地良い。


 こんな日には優雅に紅茶なんかを淹れるのも悪くない。

 まあ、紅茶なんて高尚(こうしょう)な物はないのだけど。


 代わりに少し豪華な朝食にしてみようか。

 まだ家の中が静かだから、今日は自分がいちばんの早起きらしい。

 朝食作り、いつもはカナさんとレナさん母娘が早起きだし、ちびもふたちのお散歩があるからお手伝いしかできなかったけど、今日は先に作って驚かせよう。


 よし。


 鶏卵じゃないけど、卵と燻製肉があったからスクランブルエッグ(仮)にベーコン(仮)を焼こうかな。


 ぱしゃぱしゃ。


 ここのスクランブルエッグってなんかそぼろに近いんだよね。卵といえば基本目玉焼きだし。それも両面焼きで半熟で食べたりもしない。

 朝採れだからお腹壊すとかないと思うし、絶対美味しいと思うんだよね。


 ふきふき。


 ミニトマトみたいなオレンジの野菜とレタスみたいな瑞々(みずみず)しい葉っぱを添えれば見栄えもバランスも悪くないよね。


 ぺちぺち。


 あ、ミント(仮)浮かべた果実水を出そう!紅茶に負けず劣らずお洒落じゃん。天才だな、私。


 それにしてもこの化粧水すごいなあ!もう消えちゃったよ。

 お肌がぎゅーんで吸ってったもん。

 気持ちいい〜。

 もっかい付けちゃお。

 お〜、ほっぺちょっとむちむちしてる!

 CMみたい〜


 はっ?!


 どこだここ。

 私の部屋じゃない!


 目の前には鏡と洗面桶(お洒落)と柔らかいタオル。化粧水やら保湿クリームやらが綺麗に並んでる。

 お、森の香りのする香水もある。これ、初期装備で持ってたやつだ。そういえばあれどこやったっけ?

 まいっか。


 それよりも、今はここがどこかだよ!

 間取りも似ててあまりにも違和感がなかったから気付かなかったわ。危ない危ない。


 入り口から見て右奥にベッド。正面左寄りに東向きの窓。格子の木枠にガラスが()まった丸っこいやつに、陽射しを和らぐ短めの白いレースのカーテンが掛かってる。

 可愛い女子部屋の夢だな、これ。え、違う?そこは人に()るでしょ。


 左奥、ベッド降りてすぐ横に椅子と鏡台。動線最強だよね。私の部屋は鏡は壁掛けだけど、ここのはちょっと飾りの彫刻がされてるなんか良さげな鏡台だ。


 同じ間取りだけど、ここの方がちょっと広い。代わりに天井は低め。

 まあ、丁度いいんだけどさ。

 いや、私の部屋が天井高かっただけだと思うよ?だってライさんとかこの高さだと頭すれすれだもん。髪の毛で天井掃けるもん。

 ほら、獣人って大柄な人も結構いるから。高めにしとかないと。ね?



 こほんっ。


 内装は豪奢ではないけど、なんていうか美しい。

 機能美?いや違うなぁ。洗練された感じの、こう、自然の良さが生きたお洒落さっていうか。ありふれたものでお洒落を演出してるっていうか。

 センスが良いよね。ものすごく。


 居心地が良い。馴染むんだよなあ。

 木の香りも良い。嗅ぎなれた獣の臭いはあんまりしないな。

 うん、落ち着く。


 はっ!


 落ち着いてどうする。

 ここがどこか、ちゃんと調べないと。


 窓からはなんか立派な森が見える。Jungle(ジャンゴー)だね。整備されて綺麗なジャングル(ジャンゴー)。ま、ガラスが平らじゃないから向こうがぼんやり見える程度だけど。


 カタカタ。


 うーん、この窓は開かなそうだ。流石に回転式じゃないか。

 そういえば窓開けてないのに空気が気持ちいいなあ、ここ。森の中みたいな。


 だめだ。なんか力入んないや。

 危機感が全然仕事してくれない。

 なあんか落ち着くんだよなあ、ここ。


 ぽすんっ。


 お、これ着替えかな?


 鏡台横の台に綺麗に畳まれた服が目に止まる。


 今の格好は白くて柔らかい前開きのワンピース。寝間着、だよね。枕元に白い帽子も落ちてる。あれも着けてたのか。なんか恥ずかしっ。

 着替えとこ。


 用意されてたのは7部丈くらいの薄緑のシャツ。ピスタチオグリーンってやつかな。それと斜めにゆったりとドレープがついた足首丈の白スカート。あとはレース地の柔らかいショール。

 うん。お洒落(され)だ。

 汚さないよう大人しくしとこう。


 ん。

 その横に、すごく見覚えのある服、と装備。

 広げてみて思い出した。


 そうだった。

 ここ、エルフの森だったわ。



 気絶(?)かな、すっごい眠気でそのまま寝たんだった。


 一緒にいたおじいちゃんも歓迎ムードだったから、まいっかって思って意識保てなかったんだ。


 がさごそ。


 うん。持ち物もナイフ含めちゃんとあるし身体も清潔。綺麗な部屋のふかふかのベッドに寝かせてもらってたし、かなりの好待遇。

 てゆうか持ち物もなんか綺麗になってる気がする。ナイフピカピカ。革とかもツヤツヤしてる。


 かちゃかちゃ。

 すちゃっ。


 鞄とナイフ、装備完了。ベルト付けると落ち着くな。習慣って凄いね。平常運転って感じ。

 ボロボロの革鎧も鞄に入って良かった。パンパンだけど。

 帰ったら謝ってまた作ってもらうかな。今度はちゃんとお金払おう。あ、稼ぎないや。どうしよ。


 後で考えよう。



 取り敢えずは勝手に出歩かないで人が来るのを待つ方が良さそうか。



 それならば、と。


 ぽすんっ。


 せっかくだ。大人しくこの部屋での〜んびりさせてもらおう。

 ヤバそうだったらその時考えよう。そうしよう。


 喉乾いたな。水、水。


 鏡台横の水差しに手を伸ばして気が付いた。隣の大きな葉に包まれた香ばしい香りのするものに。


 まさか。


 がさがさ。


 おぉ!

 これは、これは、、!


 かの有名なレンバスでは!?



 粗挽きの小麦粉に蜜、乳、水などを混ぜ二度焼きし、ブナの葉などで包んだエルフ秘伝の携行食。1枚食べれば1日歩き通せるという。


 しかもこれは、食べやすいようにかな。ナッツやドライフルーツが入ってる。


 お、おお落ち着いて。先ずは水を飲もう。

 喉に詰まるといけない。


 ふうっ。


 では、(かしこ)みまして。

 頂きます!



 さくっ、ほろ。


 、、っ〜〜〜〜/////


 美味、、しい、、!



 カリッと香ばしいナッツとドライフルーツの甘み。噛む度ほろほろ崩れる全粒粉のほんのり甘く素朴な生地。それを包む優しい葉の匂い。

 それに生姜かな?舌に感じる辛みと鼻に抜ける刺激的な香り。


 はあ~。最っ高。


 ごくごく。



 いや、正直ね。口の中の水分すごい持ってかれるよ?ちょっと湿気た固めのビスケットとスコーンの間みたいな食感だし。焼き締められてかなり固いとことかもあるよ。なんなら粗いからか全粒粉の殻みたいのが口に残るし。


 でも、それでも!美味しい!

 何よりも、エルフの森でレンバスを(ほふ)るこの感動。この多幸感。


 最高だよね。


 しかもしれっとお水にミント(仮)の香りを付けてくれちゃったりしてる訳ですよ。レモン(仮)なんか浸けてくれちゃったりしてる訳ですよ!


 ああ〜、幸せだぁ〜。



 ふう。



 うむ。

 おててのシワとシワを合わせて。


「御馳走様でした。」


 ふは〜///



 <コンコンッ


 

 レンバスの多幸感に浸っていると丁度良く部屋の扉を叩く音がした。





見つけて頂きここまで読んで頂きありがとうございます。

少しでも面白いと思って頂けたら嬉しいです。



レンバス。憧れます。


それにしても。

ミツキ、いくら間取り似てても普通気付くよ。

それに君、朝の洗顔は水場に降りてしてたじゃない。


ちなみに鏡台に並んでたのが化粧水やらと分かったのは、英語のラベルが付いていたからです。

ミツキ頭悪い訳じゃ無いんです。緩いだけなんです。致命的に。



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