悪魔か神使か
おはようございます。
約束は、果たした!
すみません、調子乗りました。
長くはありませんが
どうぞ。
「あー。もういいよ。お好きなように」
溜まりに溜まった疲労から、投げやりに崩れた言葉を返すミツキ。
その態度は目の前の老人にどう映っただろう。
返答を受けた老人は、声にならない声の漏れ出る口を、ゆっくりと小さく開いたり閉じたりしている。
目は、少しの困惑にひそめられつつも驚きに呆け見開かれ、それでいてどこかキラキラと輝いているようにも見える。
それを受けたミツキは、目の前で打ち震えている老人をただ「なんだこいつ」という冷めた目で見下ろした。
全く別の感情を持った2人が見つめ合うという奇妙でむず痒く微妙な間のあと、ようやく困惑と驚きとその他雑多なものが入り交じった複雑な感情を持ち直し、老人はまた漏れ出るようにそれでいてハッキリと声を言葉を溢し落とした。
「なんと、、
なんと寛容か!」
そうしてミツキに対し、聖人か何かへのそれのように羨望と深い尊敬の眼差しを向けるのである。
触れたいのに触れてはいけないものにするように行き場のない両の手の平を空に漂わせ、ミツキを崇めるように見上げている。
そのまま頭を垂れ拝み始めそうな勢いだ。
して、対するミツキはというと。
(ああ、何か面倒そうだな。けどこれはこれでイイ感じに話を進めてくれそうかも。ラッキーなようなそうでもないような。なんか複雑。)
などと、どこまでも不実な事を考えているのだから全く始末に負えない。
ここまで来ると老人が可哀想に思えてくる。
ここまで来なくても可哀想な嫌いはあったのだが、まあ、今はそれはいいだろう。
「申し訳ないけど、疲れているんです。今日はもう帰って休ませてもらえませんか?」
疲労も限界に近いのだろう。ミツキは半目になった、目だけで作ったようなともすればそのまま眠ってしまいそうな笑みを向け、どうにか言葉を紡ぎ出す。
「ええ、ええ。構いませんとも!
ご不快でなければ寝所も用意いたしましょう。
わしが何人たりと近付けさせませぬ故、安心して休まれよ。」
老人は何度も大きく頷きながら、今にも眠ってしまいそうなミツキを気遣い、興奮に大きくなってしまいそうな声を抑え応える。
「ん、、、、。
じゃあ。ちょっと、休ませて貰おうかな。
もう、、げん、かぃ」
ふぁさり。
ミツキが両手にぶら下げていた葉っぱの束が脱力し緩んだ握力に従いその手を離れ、少しの砂埃を舞上げながらゆっくり静かに地に横たわった。
本当に限界だったのだろう。ミツキ本体は両手を力なく下げまっすぐ立ったまま、深く静かな眠りに身を沈めてしまった。
何とか意識を保とうと開いていた白目気味の薄目すらも柔く閉ざされ、頭を斜めに傾いだ形で静止している。
よだれはまだ、垂れてはいない。
そこへ丁度良く空から続く頭上の穴から幾筋かの光の柱が降りそそぎ、安らかなミツキの寝顔を斜に照らし出した。
薄暗く静かな部屋の中、それはどうにも神聖な何かが降り立った姿に映ってしまう。
足元に横たわる青々とした葉の束が、光の中のミツキへの供え物に見えてくる。
いっそその背に祠のようなものを幻視すらしてしまう。
もしここに普段のミツキをよく知る者がいたならば、そんな風に見えることに笑ってしまったかもしれない。
ただただ、気の抜けた穏やかな寝顔にほっこり笑ったかもしれない。
しかしここにいるのは、今しがたその寛容さに驚き困惑し尊敬の念を抱いた老人ただ一人。
彼だけが、このどこかチグハグで誂えられたかのような不思議な光景を目にしている。
目の前、ミツキと名乗った小柄な彼女。
清浄さにひんやり詰める空気の中ただ凛と咲き、耳鳴りがする程静謐で厳かな空間へとそそがれる光の柱、その中に穏やかに眠り佇むその姿。
呑まれる事なく、闇を抱き闇を払ったその存在。
その姿はその存在は、正しく『神の使い』。
彼には
そう見えた。
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少しでも面白いと思って頂けたら嬉しいです。




