死神の死
お待たせしました!
長いです!
あらすじ
ミツキ、撃沈。
山高帽を被った鼻の高い老人がひとり。
森の中にできた小さな荒野の真ん中で、木の枝の中に固定され身動きひとつできずにいる。
彼は、目の前で繰り広げられる茶番劇を、ただただ黙って見ていた。
もはや、突っ込む気も起きないようだ。
しばらくして、
ゴスッ!
という音と共に辺りが静かになると、ようやくその重い口を開いた。
「___そなたは、いったい何者なんじゃ」
老人は山高帽から覗く右目で、見極めようとするように目の前の人物をまっすぐに見つめる。
「俺、ですか?」
ちらりと先程までの喧騒の原因を見、驚いたように問いを返す、藍色の毛並みが美しい狼獣人の青年。
その問いに、ただ黙って見つめ返すことで答える。
「俺、は、、、。セリアンの東端の町に住む、狼の獣人です」
戸惑うように、ゆっくりと答える青年。
老人は先を促すように、黙ったままただ真っ直ぐに目を見つめ続けてくる。
「、、強いて言うなら
英雄の息子です」
「英雄?」
「狼獣人のライ。
俺が誰よりも尊敬してる人です」
「ライ、、、あの《蒼き雷》か。
__なるほど、合点がいった」
レイは少し照れ臭そうに笑う。
尊敬する父親の名声が、世情に興味の薄いエルフの老人にまで届いていることが嬉しくて、また、息子としてその名に恥じない戦いができた、そう認められたことが、何よりも嬉しかったのだ。
「しかし、、その者とはどういう関係じゃ」
老人は話題を切り替えると、少々鬱陶しげにレイの足元で伸びている人物を顎で指し示した。
「関係、と言われましても。
たまたま森で出会った、迷っていた彼女を家に泊めているだけで。
まあ、今となっては町の恩人でもあるのですが」
レイは言いながら、困ったような、しかしとても優しい表情を足元へと向ける。
その言葉に老人は少しだけ眉をひそめると、静かに語りだした。
「恩人、、?
___その者は、災いを呼び寄せる。いずれ、世界の破滅をももたらし兼ねん。
知っておるか?
『影を操りし者、世を闇へと誘わん』
有名な童話にある一文じゃ。
そして先日、我らが国境においてその者が影を操る術を使ったところを確認されておる。
それも、ただ影を操るだけでなく影そのものとなって地を這うなど、、!
今の術もそうじゃ。わしらエルフも知らぬ未知の魔法に加え、底の知れない魔力。
はっきり言って、化け物以外のなにものでもない。
たとえ獣人の町の恩人であれ、野放しにはできん。
身柄を、渡してもらおう」
ひゅっ、どさどさどさ
最後の言葉と同時に大きく風が荒び、老人を縛る木々の拘束がいとも簡単に崩れ去る。
咄嗟に動こうとしたレイの背に、しかし刃物が突き付けられる。
もう一人の、老エルフ。
どうやら目の前の老人に気をとられていた間に、背後を取られていたらしい。
「っ、、、」
(油断し過ぎた、、!)
レイは苦虫を噛み潰したような顔で、ゆっくりと剣にかけていた手を上げ膝をつく。
「すまんな。
強大な力に影を操る未知の存在。わしらエルフは、そんなものを放っておけるほど豪胆な馬鹿ではない。
その存在自体が異常、危険すぎるんじゃ」
老人もまた苦々しそうにそう言うと、今だ地面に伸びているミツキを、蔓のようなもので後ろ手に縛った。
それも、かなり厳重に。
さすがに口は塞がれてはいないが、もはや簀巻きである。
重石付きで東京湾に沈められそうだ。
、、、。
「ザッシュ、あとを頼む」
ロッドはザッシュにかなりの信頼を置いているようで、小柄な体にひょいっと簀巻きにしたミツキを担ぎ上げて完全に背を向けた。すでにこちらへの注意はないに等しい。
「ミツキを、どうするのですか」
背に感じるその覇気に無理を悟ったレイは、膝をつきながら、尋ねることしかできないかでた。
「この者から、悪意は感じぬ。
安心せい。自由にはできんが、それなりのもてなしはしよう」
ロッドが半身になって肩越しに答える。
レイは、最悪の状況では無いことを知り強張っていた表情を少し緩めるも、やはりその顔は暗い。
ロッドは前を向くと、ミツキを担ぎ直して軽く一息吐く。
と、
「ん、、、みゅ、、」
「っっ、!」
「、、えっ、、?
な、なになになに!!?
ちょっ、、ていっ!!」
ドゴッ
「ぐふぅっ」
担ぎ直された振動で目を覚ましたミツキは、簀巻きにされ担がれていると言う事態に焦り、ロッドを突き放すように体を思いっきりよじった。
その様は、蔓で簀巻きにされていることも相まって、まるでのたうつ芋虫だ。
と同時に、ロッドは足元の右斜め前から突然突き出た地面に体をくの字に折り曲げ、漏れ出た声と共にその場に崩折れた。
どうやら、突然のことに焦ったミツキが、反射的に自分を担いだ人物を突き離そうとして力み、結果、ミツキの動きに連動してその人物ロッドへ向けて地面が思いきり突き出た、、らしい。
「ミツキ!」
無事を(おそらくほぼ確実に無事であると思われるが)確認するために名を呼ぶレイ。
「レイ!(ドゴッ!)」
名前を呼びながら、くねくねぴょんぴょんと駆け(?)寄るミツキ。
レイが跪き、刃物を突き付けられていたのを確認するや否や、後ろの老エルフも突き飛ばしながら、である。
あまりに自然だったことと、目の前に迫りくるミツキの阿呆丸出しの奇怪な動きに、レイが後ろのばけものの声なき声に気づくことは無かった。
ちなみに、ばけものは呻くこともなく、静かに地面に横たえた。
「、、ミツキ。
あー、その、何でその蔓切らないの?」
「はっっ!」
今気づきましたという顔で驚くと、少し恥ずかしげにいそいそと風魔法で蔓から自由になるミツキ。
なんか変な顔でちらちらとこちらを見てくる。
「うん、、、。
で、この人たちのこと、知ってる?」
反応が面倒臭そ、げふんげふん。
触れない方が良いと思い、突っ込んで欲しそうなチラ見をスルーしつつ、状況の確認に入るレイ。
先程のやりとりで何やら吹っ切れたのか、ミツキの扱いが雑になって、、分かって、、、、慣れてきたようだ。
「、、ううん、知らない」
ミツキは少しだけ寂しそうな顔をするも、ちゃんと答える。
「だよね。
じゃあ、どうしてこの人たちが襲ってきたかは分かる?」
左手で、地面から拾ったミツキのナイフを肩にトントンと当てながら聞いてくる。
なんだか少し、レイの笑顔が怖いような気がする。
「え?うーん、わかんない」
頭を捻り、きょとんとしながら答えるミツキ。
なんとなく、身体が強張る。
「ミツキ、外で影魔法使った?」
レイの背後に鬼が揺らめいて見える、ような気がする。うん、見間違いかな?
「い、いや~、、、
その、一回、だけ?
ちょこーっと、薬草採りに、、」
ミツキにも、なんとなく分かってきた。
身に覚えがあるので、目が泳ぎまくりである。冷や汗が止まらない。
「どこに?」
ただただ静かに響くレイの声。
「う~ん、、エルフ、の、森・・・」
言いながらどんどんと声が小さくなっていくミツキ。
レイは、左手のナイフを右手に持ち変えながら静かに続ける。
「、、、で?
この人たちが何で襲ってきたのか、わかる?」
今度は、レイの背後に揺らめく鬼が、はっきりと見える。
右手に持ち変えたこん棒を、左手にぺしぺしやっている。後ろにゴゴゴゴという擬音まで見えてきた。
ミツキは、右下をみて、左下をみて、口を開けようと左斜め上をみ、また口を閉じた。冷や汗がだばだば出ている。
鬼の後ろの擬音がゴォオオオ、に変わってきた。
鬼の下から上へ風が吹き荒れ、スーパーサ○ヤ人みたくなっている。
「ご、ごごごごめんなさいぃ!!」
ミツキが、ビシィッ!と音が聞こえてきそうなほどの勢いで、顔が足に付くくらいのお辞儀とともに謝る。
「・・・。」
レイの無言の圧力に、懺悔のようにぽつりぽつりと話し出す。
「ごめん、なさぃ。
その、私が影を使ったから、
あの、この人たちが、それを見てて、、
ひっく、うぇ、、
でも、でもぉ、知らなかったからぁ!
影がダメなこともぉ、見られてたことだっで、知らな"がったからぁ"ぁ!」
そしてついには、子供のように泣き出した。
「っ、ぐむぅ、、、
わかった、もうわかったから。
悪かったって。
知らなかっただけだって分かってるから。
どんなに化け物じみた化け物でも、それを自覚してないだけだってわかってるから!」
レイ
>無自覚の言の刃
>ミツキに クリティカル Hit!!
「うぅ、ぅう"あ"あ"あぁぁぁ!!」
「あいや、ごめんって。
ホント悪かったって。
化け物じゃないよな、うん。
あれだ、俺の手に負えないだけだな」
「ぐっふぁぁ"、あぇっふ」
>HPが0になった!ミツキはその場で崩れ落ちた!
______
「のぉ、ザッシュよ。
わしらは、いったい何をしに来たんじゃろうな」
「言うな」
いつの間にか起き上がり、ロッドが移動してザッシュのところで事の顛末(?)を見ていたふたり。
遠くを見る目で騒いでいた二人を眺めている。
「どうしたもんかのぉ」
「もう、いいだろう。
帰ろう」
「__そうじゃな。
ん?
おぬし、今、帰ると言ったか?」
「、、あぁ、言った」
「そうか、帰る、か。
ようやく、帰る気になったか」
ロッドは、何やら嬉しそうにそんなことを言う。
それに対しザッシュは目を瞑り、ながいながい息を吐くと、ゆっくりと話し出す。
「____俺は、、。わしはただ、《ザッシュ》の死を受け入れたくなかった。
あやつを、忘れるのが怖かった。
辛い過去から逃げてしまいそうになる自分が、嫌だった。
だから、己の名を捨てあやつの名を名乗った。
嫌になるほど弱い自分を脱し、あやつの分まで強くなれるように。
辛い過去を、思い出したくない過去を、否が応にも思い出せるように。」
「・・・。」
「じゃが、違った。それだけではなかった。
やつに負けて死を垣間見た時
ふと、<ようやく会える>そう思った。思ってしまった。
わしはただ、あやつに会いたかったんじゃ。
あやつと同じように、戦って死ねば。同じ道を行けば。
もう一度、会える気がした。
あやつの為と言いながら、結局、全て自分の為だったんじゃよ。
あやつに、、
あやつに、会わせる顔がない。」
悔しげに、絞り出すような声でそう言うと、静かに、ただ静かに、下を向いた。
いつでも凛々しく力強い出で立ちであった彼の、目を伏せ俯いたその姿は酷く寂しげで、疲れきった老人のように弱々しい。
ロッドは、すっかり老け込み弱々しくなってしまった相棒に目を向けてから前へ向き直る。
相棒の紡いだ言葉を噛み締めるようにぐっと目を瞑り、そして再びゆっくりと目を開けた。
「___ないなら、取り戻せばいい。
もう一度。
己自身として、精一杯生きればいい。
今度こそ。
友に、恥じぬように。
のう、《ゼイス》 」
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
その際は是非、↓↓ブクマや評価感想↓↓などよろしくお願いします。
作者の創作意欲に繋がります。
より面白くなったりならなかったり、、、。




