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家族

 気がついたら凄く長くなってました。空白抜きで5000字くらいです。

通りで、書くのに時間かかったわけだ。


 2019/06/02 文章を少しだけ修正しました。


 あらすじ

 倒れたミツキを、皆が心配してくれました




「さてと。そろそろ町の皆を手伝いに行くわ。回復役は一人でも多い方がいいから。」


 窓から朝陽が射し込んできた頃、カナさんが立ち上がって言った。

 ミツキも一緒に行こうと起き上がる。


 つっ、、、


 ミツキが痛みに顔をしかめると、カナさんが優しく笑った。


 「ミツキ、あなたはもう少し寝てなさい。ここにお薬とお水置いていくから、ちゃんと飲むのよ」


 我慢できるくらいの痛みだけど、ここはお言葉に甘えて、もう少し休ませてもらった方が良さそうだ。


「・・・分かりました。ありがとうございます」


「あ、私もいく。

 私は倒した魔獣の処理、手伝ってくるわ。

 使えるものはみんな食料にしてやるんだから。皆には精のつくものいっぱい食べてもらって、早く元気になってもらわなくっちゃ!」


 レナさんがそう言って、カナさんの後を追う。

 なんとなく、空元気のように見える。


「オレも行こう。何か手伝えることがあるかもしんねぇ」


 そう言って、二人に続くようにライさんも立ち上がった。


 コ。コツ、コツ


 あれ?

 ライさんの足、なんか変だ。


 すごく、嫌な予感がする。



「ライさん。足、どうしたの…?」


 ミツキは聞きながら

 本当は、とっくに理解していた。


 聞いてはいけない、聞きたくない。

 それでも聞かずにいられなかった。


 ただ、目の前の現実を、認めたくなかった。


 ミツキの問いかけに、レナさんとカナさんの眉がぴくりと動く。



「あぁ、これか。

 ちょいと、魔獣どもにくれてやったのさ」


 ライさんは笑いながら事もなげに言って、右の足を軽く振って見せた。

 ズボンの裾がめくれて見えた先に、足はなかった。

 膝から下にあったのは足ではなく、体を支える、無機質で頑丈そうな木の棒、義足が付いていた。



 ミツキは

 言葉を失った。



 固まったまま、目だけでライさんと義足を交互にみる。

 何度見ても変わらない現実。でも、それを認めることができない。認めたくない。


 ライさんは町の象徴みたいな人だ。

 皆口を揃えて、彼は町の自慢だという。

 ミツキは、彼がどうしてそこまで敬われているのかはよく知らない。

 それでも

 誰からも尊敬され

 町を歩けば、自然と人が集まってくる。

 誰もが、町の長老でさえ、彼の言葉に耳を傾けていた。


 そんな人が、片足を失ったのだ。

 狩りの天才と言われた男。

 しかしもう、昔のように狩りをすることはできない。

 今は、歩くことすらままならない。


 それがどういうことなのか、ミツキには想像もつかない。


 ただただ、頭の中で言葉にならない感情が溢れ、渦巻いている。




 __あの魔獣の数なら仕方がなかったかもしれない。

 違う。

 むしろ、誰も死ななかったのが奇跡なんだ。

 違う。

 皆凄かった。自分がいなくても結果はあまり変わらなかったはずだ。

 違う!



 ___自分のせいだ。


 もっと早く判断できていれば、きっとこんな事にならなかった。

 もっと早く目が覚めていれば

 あんな馬鹿なことで、雑用に疲弊していなければ


 自分にもっと、知識や力があったなら!



 自分が怪我をするべきだったんだ。

 自分が犠牲になれば良かった。

 どうして自分じゃない。

 ああなるべきは、自分だったはずなのに。



 何か言いたいのに、言葉がつまって出てこない。



「どう、して・・・」


 気がつけば、ただ

 疑問の言葉だけが、口から漏れていた。



「そんな顔しなくたって良いだろ。命に別状があるわけでもなし。慣れちまえば、日常生活を送るのに大した不便もないさ。

 むしろ、この程度で済んで良かったってもんだ」


 ライさんは変わらず、軽い調子で言う。


 確かにそうかもしれない。

 でも、そうじゃない。

「そんな、、」


「若いもんに、大した怪我した奴ぁ出なかった。それでいい。十分だ。

 若者を守るのが、俺たち大人の役割だ。リーダーが先陣切って戦わねぇで、どうすんだよ」


 ライさんはそう言って

 にかっと笑った。

 日に焼けた肌に白い歯がすごく眩しい。




「おい、さっさと行こうぜ。皆、待ってる」


 ライさんが、入口で動かなくなっていた二人を急かし、慣れない義足でゆっくり歩いていく。



 部屋の入口に手をかけたところで、ライさんが振り向いた。


「レイたちを、若いもんを守れたのはミツキちゃん、君のお陰だ。

 本当にありがとう」


 入口に手をついて体を支えながら、深々と頭を下げる。



 ミツキは口を半分開けたまま、動かない。



 頭を上げたライさんは、そんなミツキを全く気にしない様子で向き直り、コツコツと義足の音を残しながら、ゆっくりと階段を降りて行った。



 ミツキはその後ろ姿を、見送ることしかできなかった。


 伝えたい言葉とか感情とか、もはやそんなものはなかった。

 というより、今の自分の感情が分からなかった。

 何も出てこない。感じない。



 ミツキは、動くこともできず


 何も考えられなくなっていた。




 しばらくして、ミツキが目を覚ましたと聞いて見舞いに来てくれたレイに名前を呼ばれるまで、ミツキはただ固まっていた。



 その後、レイに事の顛末を聞き終え薬を飲むと、急な眠気に襲われそのまま眠ってしまった。




 ~~~~~~~~~~




 目を覚ましたとき、太陽はすっかり昇っていた。

 窓は、誰かが戸を開け、カーテンを下ろしてくれており、気持ちの良い陽射しがゆらゆらと部屋の中を照らしている。


 んぐっ、、、ふぅ


 大きく伸びをして身体をほぐす。


 かなり痛みも引いている。自分でも中々の回復力だと思う。薬が良かったのかな。

 頭もだいぶすっきりとした。

 まだ多少の痛みは残ってるけど、この間の筋肉痛に比べれば、なんと言うことはない。


 すうぅ、はあぁぁ


 深く息をする。


 昨日は色んな事があった。

 考えなきゃいけないことが多すぎたんだ。頭の中がごっちゃになって、何がなんだか分からなくなって

 混乱してちゃんと考えられなくなってた。


「自分が怪我をするべきだった。

 自分のせいだ。

 自分ならもっと上手くできたはずなのに。」


 そんなことを考えてた。




 馬鹿だ。

 大馬鹿だ。


 起こってしまったことは、もう変わらない。

 もしも、なんてない。


 皆には皆の意思があって

 自分の行動に責任をもってる。


 自分のせいだなんて、おこがましい。


 ライさんの足のこと、私が考えたって仕方がない。

 終わったことを言ったって何にもならない。

 今後の事は本人の問題だ。

 周りにできるのは、そっと肩を貸すくらい。

 それでいいんだ。


 それにきっと


 ライさんはただ、自分の意思を通しただけだ。


 皆を守るために戦った。

 結果として足を失った。


 ライさんは、この程度で済んで良かったって言ってた。

 きっと皆を守るために戦って、その為に怪我をする覚悟も、命を落とす覚悟だってあったんだ。



 それに、町の代表みたいな立場にいるライさんが、私なんかに深々と頭を下げてお礼を言った。


 それはきっと


 自分の意思を通せたから。

 皆を、守れたから。



 大事なのは、それだけ。



 だから私は 

 ただ、自分にできることをすればいい。

 できることを精一杯。


 それでいいんだ。



 よし、充分に休ませてもらったことだし、早速皆を手伝いに行くか!



 ミツキは着替え終えると、薬の空き瓶と水差しの載ったお盆を持って下へ降りて行った。もちろん、鏡の前で一周も忘れてない。身だしなみは、いつでもちゃんとしておかないとね。



 調理場にはレナさんがいた。

 きっとお昼ご飯の準備に戻ってきたんだ。


「ご飯の準備ですか?手伝います」


 お盆を流しに置きながら言う。


「あらミツキ。だめじゃない、まだ寝てないと」


「いやぁ、薬が良かったのかすっかり良くなりました!」


 そう言って、身体を動かし軽くポーズを決める。ボディービルダーがやるやつだ。

 そのまま持ってきた薬瓶と水差し、コップを洗う。


「痛みが引いたからって、調子に乗ってるとまたぶり返すわよ」


 呆れたように苦笑いしながら、注意されてしまった。


「うーん、そんな感じはしないんですよねぇ。こう見えて結構自分の体調に敏感なんですよ、私。そういう判断間違えた記憶無いですし」


 ついでに他の洗い物も洗っておく。


「忘れてるだけじゃないの?鈍感すぎて、気づいてないのかも」


 いたづらっぽく笑うレナさん、可愛い。ちょっともふもふしたい。

  話をしながら、次々とご飯の準備を進めていく。一週間ずっと雑用をしてきたミツキだ。中々の手際である。


 一応からかわれてるので、少しむくれておいた。


「ふふっ、なにその顔。可愛い~」


「でも、本当に大丈夫そうね。顔色も良いし疲れた臭いもしない。

 あなた本当に人族?」


「失礼な、ちゃんとただの人ですよ」


 それにしても、臭いってそんな事も分かるんだ。すごいな、犬由来の嗅覚。


「少なくとも、ただの人にはあんな魔法は使えないけどね」


 んぐ

 痛いとこを突かれた。



「「ただいまー」」


 そうこうしてるうちに、レイとカイ君が戻ってくる。


「あ、帰ってきた『そろそろお昼できるから、お母さんたち呼んできてくれるー?』」


 レナさんが玄関に向かって大声をだす。


「わかった。オレが行ってくる」


 レイが大声で返し、再び出ていった。


 でも、ちょっと意外だったな。レイが家族と大声で会話なんて。普通の男の子って感じだ。

 まぁ、思春期のくせにすごく素直だけど。



「ただいま!手伝うことある?」


 カイ君が、手を洗いに調理場を通り過ぎながら聞いてくる。

 ちょっと薬草臭い。カイ君も怪我人の手当てに行ってたのかな。


「あ、じゃあ、テーブルの準備お願い」


「りょーかーい!」


 カイ君が勝手口の向こうから、大きな声で返事をする。

 カイ君もやってる。ふふっ、家族って感じ。いいなぁ。


「何にやついてるの。なんか悪いことでも思い付いた?」


「失礼ですね、にやついてないですよ。

 ただ、家族って感じでいいなぁって思って」


 レナさんが少し驚いたような顔をする。


「あははっ、そうかもね。でも、ミツキももうその中にいるのよ。あなたも家族なんだから。」


 急な不意打ちに、ちょっと泣きそうになった。

 なんか恥ずかしいので、後ろを向いて作業する。


「あれぇ、もしかして泣いてる?」


 レナさんが嬉しそうに覗き込んでくる。


「泣いてません!ちょっと恥ずかしかっただけです。」


「ひどーい。私と家族だと恥ずかしいなんて」


 拗ねたと思ったのか、レナさんが少しおどけたように言う。


「違いますって!__ちょっと、その、嬉しかったから・・・」


 レナさんは、驚いて無表情になったかと思うと


「むふふふー」


 笑った。


「なんですか、そんなににやついて!

 なんか、馬鹿にされてるみたいで嫌な感じですよ?」


 ミツキが口を尖らせる。今度は少し拗ねたらしい。


「いやぁ、お姉さんは嬉しいんだよ

 こんなに可愛くて弄りがいのある妹ができて」


 レナさんが、にやにやが止まらないような

 そんな満面の笑みで言う。


「むぅ・・・ん?

 ! やっぱり馬鹿にしてるじゃないですか!!」



「おうおう、オレも娘が二人に増えて嬉しいよ。

 ただいま」


 ライさんは裏から戻ってきたらしい。

 やたらとニヤニヤしながらテーブルに座る。

 戻ってきたの、全然気がつかなかった。


「「おかえり」なさい」


「おかえり。お父さん、ちょっと手どけて。そこ拭くから。」


「お、わりぃ」


 手を洗い終わったカイ君が、テーブルの準備をする。


「ミツキ姉、すっかり元気だね!さすがエルフの霊薬」


「あぁ、それで。治りが早すぎると思ったのよね。

 さ、できたから皆で並べて!」


「「ただいま」」


 レイとカナさんも戻ってきた。



 カナさんが加わると、あっという間に準備が終わった。


「準備できたわね。ミツキ、何してるの。座って」


 見ればもう皆自分の席についていた。いつの間に。


「あ、はい」


「さ、お父さん」


「おう、いただきます」


「「「「「いただきます!」」」」」





 不思議だ。

 ほんの数日前まで赤の他人だったのに、今じゃ家族だって言ってもらえる。

 こんな団らんの中に自分がいる。


 この暖かい空間を、皆を、守れたんだ。


 皆で笑ってご飯を食べられる

 この日常を

 幸せを。


 

 けどやっぱり

 本当はもっと、上手な遣り方があったんだと思う。


 だから、特訓をしよう。

 今度はもっと上手くできるように。

 少しでも皆の役に立てるように。

 ちゃんと皆を、守れるように。


 強くなりたい。

 知識だって欲しい。


 前にも同じことを考えてたのに

 結局雑用の忙しさにかまけて、何もしてなかった。


 魔法の使い方。剣や身体の使い方。

 今度こそ皆に教わろう。レイやカイ君、レナさん。ライさん、カナさん、皆に。


 皆を守るために、皆に教わる、か。

 なんか少し変な気もするけど、きっとそれでいい。



 強くなろう。

 今度何かあっても、もっと上手く対処してみせる。

 絶対に。


 もう誰も傷つけさせない。

 私の大事な家族なんだ。



 この幸せは誰にも奪わせない。




少しでも面白いと感じて頂けたら幸いです。

その際は是非、コメントや感想、ブックマーク等、よろしくお願いします。

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