思い
城塞の主塔。
魔法砲の放った球が運悪く砲の前を横切った魔物にあたり起こした爆発で魔法砲は一つを残して壊れた。
周りの兵達も倒れている。
だが、瓦礫によって覆われており魔物達も降りることはできないだろう。
主塔は、まだ王都に向かう魔軍に攻撃をしている。
魔法砲を屋内に運び込んで、球をこめて発射している。魔法砲は、取り扱いの難しい兵器。少しの誤操作で、自爆することもあるためこうした閉ざされた空間での利用は危険だ。
動かしているのは、老臣と守備隊長と、生き残りの守備兵、そして、老臣についてきた小さな二人の少女。少女達は膨大な魔力を有する故に老臣がここへ連れてきた。
部屋の片隅にあるのは脱出のための魔法陣。この城塞の地下にもう一つの魔法陣があり、
地下から秘密の抜け道を通れば外に出られる。
◇
老臣は、連れてきた少女達が魔法砲へ魔力を補給すると、守備隊長に二人を連れて魔法陣を使い脱出するように命じた。
守備隊長は、逡巡したが城塞の最後を報告するのも役目だと言われて魔法陣を使い脱出した。
老臣は魔法陣を動かすための魔石を抜き取り魔法砲の球をそっと開けて魔石を収めた。
◇
主塔から放たれた魔法砲の球は、その最大射程の少し先の位置で着弾から遅れて、これまでとは比べ物にならない光を放ち魔物の群れを吹き飛ばした。
主塔を守る加護も破れつつある。
老臣は、王に仕えた日々、姫と初めて会った日、そして、姫の並々ならぬ才能を感じ取った日のことを思い出している。
主塔の壁が崩れようとしている。
姫様どうぞ、ご無事で。
室内に置いた魔法砲の残りの球めがけて、老臣は魔法砲を発射した。
◇
守備隊長は秘密の通路を抜けたところ。
老臣に託された少女達を、生き残りの兵と共に守りながら暗闇の中を進む。
その後方で、城塞の主塔が内側から眩い光を放ち、囲んでいた魔物達、城塞の上を通過しようとした空飛ぶ魔物たちをも巻き込んだ。
◇
老臣が魔石を入れて発射した魔法砲の球は着弾時は爆発しなかった。
そのそばで、虫の息で倒れていた小鬼が最後の力を振り絞って、この魔軍を率いている冷酷な魔族のいる方へ放り、小鬼の思いをくんだように魔族を吹き飛ばした。
ざまぁ、みろ、くそ魔族が。
小鬼は最後にそう思って生き絶えた。
小鬼は、もともとこの世界で暮らしていた魔物。現れた魔軍に組み込まれ、その部族の大半は死んだ。残るものも、魔法砲からの弾除けにされて憤っていたのだ。




