表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/84

47.優しい貴方、心配しないで




町の通りに入ってマーフィーのパン屋へ向かいかけ、途中でピタリと歩みを止めた。

暫く考え込んだ末に踵を返して食料品店へと向かう。


アラベラは何て事も無いように料理していたわ。

もしかしたら私も練習すれば、ランチくらい作れるかもしれない。


そう考えたカサンドラは店主に必要不可欠な食材を聞き、丁寧に説明してくれる話を元に材料を選んで購入した。


包んだ食材を手にし、以前薪を屋敷まで運んで貰えた店で追加の薪を購入していると、通りから名前を呼ばれた。

振り返るとロバートが店の窓越しに手をひらひらと振っているのが見える。

手には以前ケアリーが持っていた配達用のパン籠を持っているようだ。


店主に薪を運んで貰える時刻を確認した後に店を出ると、ロバートの方へと歩み寄った。


「やぁ、カサンドラ」


「こんにちは、ロビー。 配達中?」


彼の手にある籠を手で指し示しながら聞くと、ロバートは頷いた後にわざとらしく溜め息をついた。


「そうなんだよ。ケアリーが休みの日は僕が代わりに配達してるんだ」


「なら仕事に戻らないと」


「もう配達は終わったんだよ。 後は店に戻るだけ」


おちゃらけるように笑って話していたロバートだったが、不意にカサンドラの表情を伺うように見つめた。

突然焦げ付きそう視線を向けられて戸惑ったものの、一歩後退りしただけで彼に背を向けて逃げ出したりはしなかった。

何か言いたい事でもあるのかと身振りで問い掛けるべく、ロバートを見つめ返しながら問い掛ける。


「先日、君の屋敷に行ったんだよ。

年末年始を僕の家族と一緒に過ごさないかと誘おうとして」


「そうだったの?」


「でも君は留守だったから。みんな残念に思ってたんだ。 もちろん僕も」


「誘いに来てくれたのに‥‥本当にごめんなさい。

色々と込み入ってて‥‥」


曖昧に微笑んで見せると、ロバートのエメラルドのような瞳に痛みの色が過った。

それを見て取ったカサンドラは思わず視線を反らす。


「その後も訪ねてみたけど姿が見えないから、君は居なくなってしまったのかと思ったんだ。

‥‥‥あるいは、僕が避けられてるのかと」


最後の言葉を聞き弾かれたように顔を上げてロバートと視線を合わせると、慌てて首を横へ振った。


「いいえ、本当に込み入った事情があっただけなの。

ロビーを避けていた訳ではないわ」


「本当かい?」


「えぇ、本当よ」


ロバートは頷いたカサンドラをじっと見つめた後、何時もの蕩けるような穏やかな笑みを浮かべた。


「良かった。君に会えて安心したよ」


「ご両親とエミリーはお元気?」


「元気すぎるくらい」


そう言って視線を落としたロバートがカサンドラの持っている包みを目にし、驚いたように瞳を丸めた。


「食材を買ってるって事は料理でもするのかい?」


「そうなの。料理なんて初めてだから、店主にレシピのメモを貰ったわ。早速帰って挑戦してみないと」


「何を作るの?」


「スコーンとジンジャービスケットよ」


「本当に? どちらも僕の好物だ」


そう言われて食材へ向けていた視線をロバートへと戻すと、色濃く煌めくロバートの瞳と目があった。


食べたいって事?


真っ直ぐ彼と視線を見交わした後、カサンドラは根負けしたように肩を竦める。


「もし上手に焼けたら、貴方の家まで届けましょうか?」


「いや、僕が食べに行っても?」


「良いけれど‥‥。上手く出来る保証は___」


「それじゃあ今日、仕事が終わったら君の屋敷に行くよ。 凄く楽しみだ。この後の仕事も頑張れそうだよ」


浮かれたロバートはカサンドラの言葉を最後まで聞かず、茶目っ気たっぷりに挨拶すると素早く立ち去ってしまった。


ロバートの上機嫌な足取りを見遣り、カサンドラは急に不安に駆られる。



どうか上手に出来ますように………




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ