第11話 奇襲
「何?先に襲った奴らは、お前ら5人残して、十分も持たずに全滅だと。」
今回の襲撃のリーダーは、戻って来た連中の報告を聞いて、先行させた部隊で制圧できるとは思っていなかったが、一人も戦闘不能にできなかったばかりか、こうもあっさり、戦力を失うとは思っていなかったため、思わず声を荒げてしまった。
「は、はい。」
報告した男も、リーダーの怒気に怖気づきながらも、そう返事をした。
「お頭、どうします。」
リーダーの横に控えていた男がそう声を掛けてきた。
「どうもこうも、残りの連中使って、やるっきゃねぇだろ。こっちにはまだ、身体強化持ちが6人と魔法使い3人がいるんだ。いくら、護衛の3人が腕利きだろうと負けねえさ。」
いくら農民上がりの野郎どもといえど、包囲して仕掛けたというのに、あいつらだって戦えるまで鍛えるのにいったいどれだけ手間がかかったか。相手を一人でも潰していれば、何とか帳尻があったが、これじゃ大損だ。
これ以上の損害は、本来なら今後の活動にも影響するためやりたきゃねぇが、金を貰って受けちまった仕事だ。やめるわけにはいかねぇだろが、わかってて聞くか、そう思いながらも、冷静を装いそう命令した。
「わかりやした。襲撃場所は予定通りここでいいですかい?」
「ああ、折角迎え撃つ用意をしてあるんだ。それを生かさない手はねぇだろ。」
先程の襲撃と違い、弓使いを伏せてある場所や、左右の森の中にも魔法をある程度軽減できる楯板や逆茂木を設置してあるこの場所での迎撃は、数での優位に加え、防御陣地もある正に万全の備えであった。
「では、他の連中に声かけて準備させます。」
横にいた男は、そう言って、襲撃の準備に取り掛かった。
「頼む。それと戻って来たお前らも怪我の治療が済み次第、休憩を取って迎え撃つ準備を整えろ。死んでいった奴らの弔いだ。しっかり働け。」
リーダーは、指示を出受けた男が出て行くのを見送りつつ、報告に戻って来た男共にも労いつつ、指示を出し、自らも鎧を着込む準備に向かった。
俺達は、襲撃現場から少し進んだところにある小川で、馬に水分を取らせたりするため、休憩を取った。
そこで、俺達護衛3人は、改めて今後について話し合いをすることにした。
「なぁ、さっき仕掛けてきたのが、20人だろ?」
「ええ、そうね。」
「今度の敵はもっといるってことだろ。勝てるか?」
「多分、実力も違うだろうし、そう簡単にはいかないだろうな。」
俺は、最初は接敵は、様子見、もしくはこちらを油断させるためのもので、遊軍になりそうな数をぶつけてきたのだろうと思い、そうカミーラとジェイミーにそう話した。
「こんなことなら、さっきの連中殺さずに、情報を聞き出せばよかったな。」
俺の話を聞き、カミーラは全員をさっさと殺したことに後悔した様子でそう言った。
「どうだろうな。時間がない中でどれだけ聞き出すことが出来たか。それに尋問してるのが敵に知られたら、こっちが奇襲に会う可能性もあっただろうし、そうなれば、情報を仮に聞けても生かすことが出来なくなってただろう。」
「ふむ、後、私達の戦いぶりに恐れをなして、逃げちまったなんてことはないよな。」
「街から、ついて来てるんだ。どこからか金目の物を運んでいる情報が漏れたか、誰かが奪うよう依頼したかだろうからそれはないだろう。」
「でもよ。逆にさっきの襲撃でこっちが損害を受けて、街に戻ったら連中どうするつもりだったんだよ。」
「多分、そうなった場合でも、主力が馬で追いつける位置に陣取っているんだろ。」
「それなら、こんな場所で休憩してたらまずいんじゃない?」
「どうかな。20人を短時間で鎮圧したんだ。そんな相手に、闇雲に攻めるという選択は取りにくいだろう。」
「まぁな、こっちが逃げないなら、万全の態勢で待ち構えているだろうよ、敵さんは。で、こっちはこのまま馬鹿正直に進むのかい?」
「うーん、危険だが、森の中を抜けて、奇襲をするか。」
「え、でも、馬車の護衛はどうするの?こっちは3人しかいないんだよ。戦力分散はまずいんじゃないの?」
ジェイミーは、俺の無茶とも言えない提案に異を唱える。
「それに向こうにも魔法使いが居たら気付かれないか?」
カミーラも、魔法使いが居たら奇襲が難しいのではと、そう言ってきた。
「戦力は左右の森には分散させるが、馬車の護衛はなしだ。魔法使いに関しては、待ち伏せで目視の見張りもいるだろうし、盗賊に身を落としているんだ実力的にもそう何度も探査魔法を使えないだろう。」
俺は、そう言って、二人の懸念に対して回答をした。
「馬車はどうするんだ?」
カミーラは、馬車に護衛を置かずに護衛が攻めるのは、非常識だと思ったのだろう。そう俺に聞き返した。
「このまま進んでもらうさ。ただし無人で空馬車にしてな。」
そう言って、俺は、マジックバックを取り出した。
「それはマジックバックか?」
「ああ、そうだ。」
「だが、その策を実行するにしろ、それでも分が悪すぎる。依頼人の承諾が必要だな。」
カミーラは、進むなら、確かに奇襲が一番いいのだろうが、護衛としての責務を考えると素直に頷けないとこもあるし、どうするか?色々考えを巡らせてから、そう言ってきた。
「だね。レニーさんもちょっといい?」
ジェイミーは、カミーラの言葉を聞いて、頷くと馬の世話をしていたレニーさんを呼んだ。
レニーさんが、こちらに近づくと、カミーラがこう確認してきた。まぁ、依頼人の安全とか考えたら、街に戻るのがが一番だが、……。
「なぁ、街に戻るという提案は、無理なんだよな。」
「はい、すみませんが、20名の賊から襲撃を受けて、うち15名を無傷で倒しておいて、その先は危険だと言って引き返しても、上層部は恐らく納得してくれないでしょう。それに戻ったところで、護衛を増やしたりしているお金も時間的余裕もないので、状況は変わらないでしょう。」
カミーラの提案に、レニーが申し訳なさそうにその選択が取れない理由を言ってきた。
「そうか。それじゃ、最悪馬車は潰してもいいか?」
「あの、荷物はどうするのですか。量的にも私達4人じゃとても担いでいけませんが?」
レニーは、それでは、荷物が運べなくなると思い、そう尋ねた。
「そこは大丈夫だ。俺がマジックバックを持っている。」
カミーラが、俺の冒険者としてのアドバンテージになるマジックバックの存在を明かしていいか、迷っているようなので、俺が説明するべきだろうと思い、そう言った。
「そんな高価なものを?」
レニーさんは、驚いたようにそう言った。
「ああ、偶々な。」
確かにCランク冒険者が、ほいほい持ってていいようなもんじゃないしな。俺は、そう言って所持した経緯を濁した。
「何が偶々よ。偶々で、そんな物持てないでしょ。」
ジェイミーが俺の答えに思わず突っ込みを入れてしまっていた。
「ごほん。それでだ。荷物はマジックバックに入れて、レニーさんは後ろで待機して貰い。馬車を囮にして、私達で賊に奇襲をかけようと思う。敵の数もわからない中、敵が待ち受けているとこに馬鹿正直に突っ込んでいくより幾分勝ち目はある。どうだ?」
カミーラは、咳込んでジェイミーの言に触れないよう誤魔化すと、馬車を潰す理由を説明し、それでも勝算は低いことも付け加えた。
「私は、荷物をリーンの町無事に届けるのが使命です。そのための護衛のあなた達が荷物を守って進むのにそれが最善と判断したなら従いましょう。」
レニーさんは、それでも先に進む選択をし、カミーラが行った提案に従うと言い切った。
「依頼主が了承したのなら仕方ない。やるか。でも、かなり無茶な戦闘になると思う。覚悟はしてくれよ。」
カミーラは、自分に覚悟を決めるよう言い聞かせるように、そう言って、俺とジェイミーに指示を出し、奇襲の準備を始めた




