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ミレーヌ

「なるほど、話は分かりました。

しかし、ミレーヌを同行させることはできません」

私達の話を聞いた教皇は苦い顔をして言った。


「お父様どうして! 」


「お前は聖女なんだぞ。

お前にもし、なにかあってみろ、聖女を失うのは教会の大きな損失になる」


「こんな時でも父としてではなく、教団の事しかお考えにならないのね! 」


「私は父であるまえに皆を導く存在でなくてはならないのだ。

いい加減に理解しなさい」


「嫌よ!嫌っ!…… 嫌っ」

ミレーヌは泣き崩れ、大声で泣き叫んだ。

自分の親子関係しか知らない私にとって二人のやり取りは心が痛かった。

親子なのにこんなに悲しい関係があるのだな。

私の両親は自分より私の身を案じて権力者に抗ってまで守ろうとしてくれた。

両親がこうであったなら、私はこんな旅をしていなかっただろう。


「勇者殿、代わりの者を同行させる。それでよろしいかな? 」


「いえ、不躾な事をお願いして申し訳ありません。

危険も伴うので、やはり貴方がたを巻き込むことは出来ないので、お心だけ受け取らせて頂きます」


「そうか、では貴殿らの旅の成功を祈っている。

それと私から貴殿らに餞別を送ろう」

教皇はほっとした顔をして、従者に小箱と巾着袋を持ってこさせた。


「こんなによろしいので? 」

袋の中には大量の光魔石が入っていた。


「そちらの箱を開けてみよ」

教皇に促され私は小箱を開けると、ブレスレットが入っていた。


「それは聖遺物と言って、魔石をはめ込むと強力な加護で貴殿らを守ってくれるだろう。

誰がどのように作ったのかは不明だが数百年前から存在する神具で我が教団の秘宝の一つだ」


「そんな貴重なものをよろしいので? 」


「構いません。勇者殿も私と同じく皆を導かねばなりません。

100年前に教団が先代の勇者様に渡していれば、争いはこんなにも長引かなかったかも……

と思うと貴殿らに託すのが最善だと判断しただけです」


「お心遣い感謝いたします」

私達は深く礼を述べ聖堂を後にした。



「まってください!」

聖堂を出るとミレーヌが追いかけてきた。

「ごめんね。教皇様を説得できなくて」


「いえ、私はまだあきらめてませんわ! 」

ミレーヌは意気揚々と答えた。


「でも危険だし、やっぱり連れていけないよ」


「私を侮らないでください! 攻撃は苦手ですけど回復と防御の術は得意ですの。

それに回復役も必要でしょ? 」


「遊びじゃないのよ?死んでもいいの? 」

イブがそっと口を開いた。


「死ぬのは嫌ですし、皆さんも死なせませんわ。

それに私もっと皆さんと居たいんですの。

私も連れて行ってくださいお願いします。」


ミレーヌの言葉にイブはため息を吐くと

「ごめんユウマ。私も連れて行ってあげたくなっちゃった。

ユウマにワガママ言った時の自分と重なっちゃってさ」


「俺も」

レオもイブに同調した。


「わかったよ。ただし改めて言うけど、自分の身を守れるのは自分だけだから。

その事3人とも絶対に忘れるなよ」

ミレーヌの顔がぱっと明るくなった。


「ありがとうございます!じゃ、今晩夜中に街の入り口で落ち合いましょう! 

では、お父様に見つからないように支度をしてきますわ! 」

そう言うとミレーヌは帰って行った。


「まぁ…… なんとかなるでしょ」

私は自分に言い聞かせるように言った。


そして、日が変わる頃を待って私達はヨグル街を出た。

こうしてミレーヌが仲間になった。

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