ミレーヌの旅立ち
ミレーヌはコンパスに魔力を注ぎ込むと、コンパスは淡い輝きを発し、進むべき方角を指し示した。
「あの時みたいにならないように魔力を制御しましたわ。
これで見ながら進めますね」
小箱に入れたコンパスを眺めながらミレーヌが言った。
「この方角は…… 戻ることになりそうね」
イブに私は同意した。
「そうだな。報告もしなければならないし、一度国へ戻ろうか」
「わぁ!皆さんの国に行きますの? 私楽しみですわ! 」
ミレーヌは目を輝かせ、子供のようにはしゃいだ。
「でも、ミレーヌちゃんホントに良かったん?
お父さんと仲違いしたままでてきちゃって…… 」
レオは心配そうに聞いた。
「大丈夫です。置手紙もしてきました。
それに父は娘ではなく、聖女を置いておきたいだけですから、心配には及びませんよ」
ミレーヌの強がりに珍しくレオが怒った。
「ミレーヌちゃんそれは違うんじゃないかな?
確かに君のお父さんの言葉は子供にとってはキツイ物言いだったかもしれない。
でも、立場上そう言わざるを得なかっただけで、親として危険に晒させたくないって顔だったよ」
ミレーヌは押し黙った。
私はレオの言葉を聞いて、悲しい親子関係だなどと評した自分を恥じた。
少しの沈黙を破ってミレーヌが言った。
「でも、私は外の世界を見て回りたいです。
私はもう窓から遊びまわる皆を見ているだけの人生はウンザリなの! 」
暗くてよくは見えなかったが、彼女の声には涙が含まれていた。
「ご迷惑…… ですか?」
ミレーヌの言葉にレオとイブは私の顔を見た。
「だから何度も言ってる。自分の身は自分で守れって。
それが出来るなら歓迎するよ」
ミレーヌの表情が明るくなったような気がした。
「ごめんね。野暮ったいこと言って」
レオがミレーヌに謝罪すると
「ううん。心配してくれてありがとうございます! レオ君」
悲しみと怒りを含んだ声はもうそこにはなかった。
「ま、皆無事に魔王討伐できればいいのよ。いざとなったらユウマが助けてくれるわよ」
イブが冗談めかして言った。
「お前俺の言ってる事聞いてた? 」
「あら?ユウマは私がピンチの時助けてくれないの?
居なくなっても平気なんだ? 」
イブはジト目で私を見た。
「それは…… 」
私が言葉に詰まると、レオとミレーヌが笑いだした。
それにつられてイブが笑い、私も笑ってしまった。
どんよりとした空気が一変して明るい雰囲気に変わったのが分かった。
「さ、日の出には出国しなきゃね。
ミレーヌ連れてきちゃったし」
イブの言葉に3人は同意した。
「じゃ、ミレーヌちゃん俺の後ろに乗りなよ」
レオが自分の馬に乗るよう言うと
「アンタはやましいこと考えてるからだめ。ミレーヌは私とよ」
イブがその提案を遮った。
「ありがとうイブちゃん」
「イブって呼び捨てでいいよ」
「うん。改めてよろしくねイブ」
「よろしくミレーヌ」
女同士の友情を築いた二人とやや不満げな顔のレオと共に私達は元来た国境を目指し闇夜を走った。




