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旅立つ思い出

私達は士官学校卒業を終え、数日後には皆それぞれの部隊に配属されるのだろう。

少し冷たい春の風がエルカサ国を駆け巡り、大地には花が咲き乱れ太陽は心地よく私を照らしてくれた。

私は明日にはこの国を出る。


学友達は私を送り出すためとの名目で卒業パーティーを開催してくれた。

野外にもかかわらず、テーブルが並び、中央を囲むようにオーダーバイキング形式の屋台が立てられ、料理人達が待機していた。


給仕の者達は飲み物を手に、参加者に振る舞っている。

さながら貴族の立食パーティーのようだ。


爵位の出の者達が計画してくれたと後から聞いた。

皆華やかな衣装を着て、ある者は食事に勤しみ、またある者は異性を口説き落とそうとしていた。

心ながらに青春とはこういう物なのだろうなと物思いに耽っていると、聞き覚えのある声が私を呼んだ。


声の主は深刻な表情で私に問いかけた。

「明日…… 旅立つんだよね……? 」


「うん…… 」


「私も連れてって! 」


「無理だよ……危険だ。

守り切れる自信がない。」


「自分の身は自分でなんとかするから!

もっと一緒に居たいよ!」


私は乙女の勇気を拒絶した。

キュっと胸が苦しくなるのに気が付いた。


「もちろん俺は連れてってくれるよな? 」

背後から男の声がした。

レオだ。


「だから二人とも危険なんだよ。演習でも授業でもないんだ!

だからすまない。二人とも…… 」


「俺ら成績トップだよ? それに3人のコンビネーション抜群っしょ!」


「遊びじゃないんだよ。二人は足手まといでしかない。」

レオはそれを聞いてむっとした。


「あーあ。勇者様は根暗な一人旅ですか。さみしいぞきっと。」


「悪いけど、守り切れるかわからないから。」


その時イブが口を開いた。

「守るもん……

私がユウマを守るんだから!!! 」


会場に彼女の声が響き渡り、一瞬沈黙が流れ、少し間をおいて

「ヒュー!」

と会場が茶化した声に包まれた。


イブは顔を真っ赤にしていたが、私の顔はそれ以上に赤かっただろう。


「そういうわけでよろしく。」

レオがぽんと肩を叩いた。


私は思考停止してしまい結果としてそれが無言の承認となってしまった。


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