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北部国境門【2】

しばらく待っていると黒いパンツに着替えたイブが戻ってきた。


「最悪……戻ってくるときに、何人かにピンクのお嬢さんって呼ばれた…… 恥ずかしくて死にそう…… 」

顔を赤くして今にも泣きそうであった。


「減るものでも無いし、気にするなよ。」

精一杯の慰めの言葉をかけたつもりなのだが、私はもう一度ぶたれる事となった。

レオはやれやれと言う表情を浮かべ、同行の兵士は苦笑していた。


私たちは会議室に案内され、中に入ると、既に大勢の軍人が並べられた椅子に座っていた。

室内の前方にはテーブルが並び、拡大した戦局マップなどが垂れ下がっていた。

私達はテーブルに向かって前列に座るよう勧められたが、外様であることを理由に辞退した。


しばらくすると五人の将官と進行役であろう佐官の6名がテーブルの席に座り会議が始まった。

左側の席には大将と中将2名が、左側の席に少将と佐官の男が座った。


最初に浅黒い肌をした銀髪の将官が話し始めた。

「私はマルク少将だ。この度はエルカサ国から強力な助っ人が駆け付けてくれた。

皆に紹介しておく。勇者一行だ。」

視線が一斉に我々に降りかかった。


「ご紹介頂いたユウマと申します。右に居るのが魔法使いのイブ、こちら側が弓使いのレオです。」

私達は会釈して再び席に着いた。


「では、今回の作戦について、イヴァン中佐から説明してもらう。」

マルク少将が言うと紹介された女性が立ち上がって話始めた。


「自分はイヴァン中佐であります。現在我々はグレ山道入り口まで戦線を後退させられています。

前線には只今3000の兵力が戦線を維持しております。


敵軍の戦力はおよそ4000とさらに後方に3000の合わせて7000と予想されます。

我が軍は負傷者多数によりここ前線基地と合わせて6000と数的不利(すうてきふり)な状況にあります。


今回の作戦は現存する3000の兵力を2部隊に分け左右に展開し、前線の兵力を徐々に後退させ包囲します。

敵前線の4000の敵を包囲職滅した後に後方の3000を残りの兵力で一気に叩くという内容になります。」


なるほど、だがそれでは敵後方にこちらの意図がバレてしまうと一気に崩壊しかねない。

「それでは、敵の後方に気づかれた場合、左右の部隊が各個撃破されてしまいこちらは立て直しが不可能なほど甚大なリスクを背負っていますよ。」

私は気づくと口を開いていた。


「では勇者殿はどうお考えですかな?

失礼、私はケーニッヒ大将だ。ぜひお考えをお聞かせ願いたい。」

右テーブルに座っていた白髪の男が言った。


「作戦自体に異議はありません。しかしリスクを考慮した場合敵の後方部隊とは孤立させておく必要があります。

私に先陣を切らせてもらえないでしょうか?


そして前線部隊は後退では無く、私の後を前進して頂きたい。

私がまず3000の敵を分断し、その後後方4000を食い止めます。

その間に貴方がたで包囲職滅戦の後、合流していただきたい。」


「そんな非現実的なことが可能な事バカバカしい! 」

ケーニッヒ大将は憤慨し、まわりもざわめいた。


「私達3人が前線部隊に紛れて先行するだけです。

仮に失敗したとしても3人の消失で戦力を決定するものではないでしょう?」


そう言うと、まぁ良いと言って私の案は採用され、会議が終了した。


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