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謁見【後編】

扉が空くと目の前には玉座があり、赤く敷かれた絨毯を挟んで貴族や役人達が列をなしていた。

玉座には口ひげを蓄えた中年の男。


その隣に座っている優しそうな女性はおそらく妃だろう。

「その方達、まずはよく来てくれた。嬉しく思うぞ」


人間の王というのは初めて見るが思ったよりもなかなか威厳があるものだななどと感心していると、両親は無言の圧力で私に畏まるように求めた。


「そなたがユウマか。この度この城に招いたのは他でもない。そなたが勇者の生まれ変わりだからだ」



私は魔王の生まれ変わりだ。

心の中で言い返した。



後ろの二人はそれを聞いて固まっている。

「僕は勇者の生まれ変わりではありません。なんの力もないただの子供です」


「神託で君が勇者の生まれ変わりだというお告げがでたのだよ」

ローブを着た老人が話し出した。



「100年前の戦いで勇者は魔王を自らの命と引き換えに葬った。だが魔人の消滅には至らなかった。

魔人が生きている限り魔王は現れる。その時神は勇者を使わしてくださると」


「その予言の結果そなたが勇者の生まれ変わりだという結果が出たのだ。

魔人と人間の戦いの歴史は知っておろう?とは言え敵は魔人だけではない。

我が国から勇者が出てきてくれたことは大きな国益であり私も嬉しい」

口ひげを触りながら男が言った。


「僕に戦争の道具になれと? 」 


「礼儀もわきまえぬ小僧が王に向かって無礼な口を聞くな! 」

側近が怒鳴りたてた。

側近を諫めながら男は言った。

「よい。ユウマよ、ナババで起きたこと知っておるか? 」


「はい」


「では、先日そなたの村で起こったことも知っておろう? 」


あれは自分がやりました。とはとても言えなかった。

私がうなずくと男は続けた。


「ナババのような悲劇が起こってはならないのだ。それはそなたも理解できよう?

後ろにいる父や母を守ることにもなるのだ」

諭すように穏やかな口ぶりで、だが拒否することは許されないと。


「ちょっと待ってください」

母が初めて口を開いた。

「こんな行きなり……こんなの死にに行けって言ってるのと同じよ! 」

母は泣きながら叫んだ。


「子供だけではなく親までも陛下に向かって! 」



「よいと言っている」

男は苛立つ側近を再び諫めた。


「あの、すみません」

静かに父が言った。


「この子は戦闘経験もなければ、魔法すら使えません。

それをいきなり、勇者の生まれ変わりだから戦ってこい。と言うのは私たちにはあまりに残酷な話です。

親である私は国を敵に回してもこの子を守ります。

それが父であることの義務であり喜びです」


男は父の目をじっと見て応えた。

「そなたの言うことは正しい。自分の子供を死地に好んで向かわせる親は私の国には居ないと信じている。

だが、この国と世界を救う運命がそなたの子にはあるのだ。

非凡なる器に生まれた者は好む好まざるとは関係なく役割を果たさなければならぬ。

それはこの私とて同じことなのだ」


「ですが……」

父がなにか言いかけるのを私は遮った。

「わかりました。ですが父の言う通り私は戦闘経験がありません。時間をいただけませんか? 」


「安心するがよい。100年続く小競り合い、いまさらすぐに事態が急変するとは私も思っておらん。

そこでだ、我が国の士官学校に入隊して貰いたい。そこで訓練を重ね魔人に対抗するすべを磨くのだ。

もちろん国が生活をすべて保障する。本来ならそなた一人で来てもらうところだが、希望するのなら両親とこの街でくらすがよい」

男は満足そうに言った。


その提案を受けることにし、士官学校に入学することが決まった。

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