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王都

手紙を受け取った日から二日後の朝。

いつもより早く起こされ、三人で食卓を囲み朝食を摂った。


父と母は終始ソワソワして落ち着かない様子である。

「二人とも早く食べてしまってね。

支度をしないといけないから」


母に急かされて、皿の上の料理を平らげるとさっさと母はさっさと食器を下げてしまった。

父は仕事を休み、私も学校を休み休日ぶりの全員そろっての朝食だったのだが、普段よりも慌ただしい朝食であった。


食べ終えると、皿洗いを言いつけられ、洗っている間に母は淡々と今日すべき最小限の家事を終わらせていく。

父も母を手伝い30分ほどで母の仕事は終了した。


そして二人は身だしなみを整えだす。

家事よりもこちらの方にかかった時間の方が長かった。

私も父の整髪され、どう見ても真面目なお坊ちゃんというような恰好であった。


私はガラにもない格好で嫌がったが、父は

「陛下と会うのだから失礼の無いようにしなくては。

ただでさえ、何のために呼び出されたのかわからないんだから心証は少しでも良くしておきなさい」

と言うので渋々従った。


父はいつも通り仕事に行くときの服と変わらなかった。

貴族を相手に商売をしている関係上ドレスコードに一番最適というわけだ。


父に指導され、出来上がった一人のお坊ちゃんは、内心うんざりしながら父とリビングで迎えを待った。

しばらくすると母もリビングに現れ、私と父は呆気にとられた。


「どうかしら?」

母に聞かれた父は答えた。

「ハンナ…… 舞踏会に行くわけじゃないんだから、もう少し落ち着いた格好にしなさい」



母は貴族の真似事のような格好をしている。

ドレスを父に選んでもらおうと母は父の手を取り、部屋に入って行った。

一人残された私は国王との謁見に少し不安を覚えた。


母の着替えが済み、父と母が部屋から出てくると

「リーベルトさんお迎えに上がりました」

扉の向こうで男の声がした。


母は緊張しながら扉を開け、父は私の肩を叩き外に出るよう促した。

先ほどの声の主らしき兵士が馬車に乗るように催促する。


私たち三人は馬車に乗り込み、町の門を出たあたりでようやく母が口を開いた。

「ひどく気分が悪いわ」

母は青白い顔をしていた。


「きっと緊張しているからそう感じるのさ」

父は母の気持ちを和わらげようとそっと手を握った。


私が切り倒した木々を横目に馬車は王都へ走る。

揺れる車中で父は気を紛らわそうと鼻歌を歌った。


しかし緊張しているのか歌もそう長くは続かなかった。

これから起こる不安に2人は押しつぶされそうになっていた。


雑木林から次第に広い平野に変わっていく。

田畑とぽつり集落が点々とちらばり視線を流れていく。


母と父は寄り添いながら眠ってしまっている。

どれくらい馬車に揺られただろうか?

大きな城門が見えた。


門をくぐると、にぎやかな城下町が目の前に広がっていた。


白い石造りの建物が並び、たくさんの人が行き交っている。

馬車の中の私達にまで外の喧騒が聞こえてくるほど外は騒がしかった。


外の声に目を覚ました母は目を輝かせて街並みを眺めていた。

「謁見が終わったら街で遊ぼうか」

父が私と母を気遣った。


私達は笑顔でうん、と答え間近に迫る不安から目をそらした。


しばらくすると馬車が止まり降りるよう促された。


「まずは宿に案内しますね。そこでこちらが用意した衣装に着替えていただきます。その後に城内にご案内します。使いの者を手配していますので、何かわからないことがあればその者にお尋ねください」

案内役の兵士の指示に従い宿に入った。

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