魔女たちの楽園
蛇足です。
「ねーねー、お兄ちゃん、“まほー売ります!”って知ってるー?」
学校からの帰り道。妹は兄に質問した。
「いいや、知らないなあ。どんなのだい?」
兄は微笑ましく、手を繋いだ妹を見返す。
「えっとね、黒い手紙にお返事すると、まほーがもらえるんだって! いんたーねっとに書いてあったの!」
最近、妹はインターネットに夢中だ。大方、“魔法売ります!”について憶測を描きこんでいるサイトでも見つけたのだろう。
自分は話していないし、”もう1人”も同様のはずだ。“前の”記憶が残っているとも思えない。
「うん、それで?」
「えっとね、そのまほーは、5月2日に消えちゃうんだって!」
妹の説明を、兄は訝しんだ。そんなこと、どこで知ったのだろう?
5月2日には魔法が消える、というのは、夜宴に参加した兄にも初耳だった。
だが、納得もした。夜宴が終わってしまえば、あんな悪用されかねないものなど、取り上げてしまうに限る。参加する連中が連中だけに。
「へー、それは残念だね」
先を促した。
「でもねでもね、1日の最後に、紙に“どうか、私のまほーを消さないでください!”って書いて入れ物に入れとくと、まほーをずっと使えるようになるんだって!」
「……え?」
説明しつつも、妹は内容がよく分かっていないようだった。
だが、兄は理解した。夜宴の最後、守り抜いた容器にふさわしい“報酬”を願うときに、物品ではなく、「以後も魔法が使えるようにしてくれ」と書いた紙を入れたらどうなるのか?
5月2日が過ぎても、魔法が使える、機械仕掛けから出てくる神に罰せられない、“魔法使い”ができるのではないか?
「そんな、まほーが使える人たちが、いっぱいいるんだって!」
「いっぱ、い?」
あまりにも、聞き捨てならないことだった。
あの夜宴で、すぐにそんな”裏技”のような発想が、たくさんの人間にできるだろうか。
自販機の暗がりから、気配がする。
『気をつけなさい。巻き込まれないように』
懐かしい声がした。
続編構想中です。
感想とか評価とかもらえると、原動力になるので、よろしくお願いします(笑)




