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お仕事体験

今日は1、2、3年生の合同遠足。

これを遠足と言っても良いのかは疑問だけど、いろんな職業体験が出来る進路について考える体験会だ。


私はクラスの大役を任されていた。


『三浦先輩、職業体験は良いんですか?』


『心配ない。私の進路は決まっているからね。』

『あなたの方こそ大丈夫なの?』


『私は、クラスの写真係なので自分の任務を全うしないといけませんからっ』


カシャ


『さっきから誰を撮ってるんだ!』


『私だって間違えて撮っちゃう事ありますよっ』


カシャ



『それより、先輩の進路って?』


『私の進路?そんなの決まってるだろ?姫の進路が私の進路だ!』

『だからこうやって姫の後を追ってるんだ。』


『そんなのずるい!私も先輩と同じところ行きます!!』


『しっ、待って。姫が止まった。』


『どんな職業ですか?』


『み…巫女さん…』


『女神様が神様に仕えたらダメでしょ!』

『姫の巫女姿…』


『私、その神社に住む!』


『あっ、また移動した。三浦先輩、次行きますよ。』


『次は何?』


『あっ…あっ…アイドルとメイド喫茶で悩んでる…』


『どっち入ると思いますか?』


『メイド喫茶』


『アイドルでしょ?』


『よし、メイド喫茶入った!私の勝ちね』


『今私たちが入ったらご奉仕してくれますかね?』


『お前…そんな恐れ多い事…行こうか!』


私たちがアイドルブースを通り過ぎる瞬間、後ろから声をかけられた。


『あれがあなた達の推しか〜見る目あるわね。』


『えっ…』


私たちが後ろを向くと見るからにアイドルのお姉さんが立っていた…


『あなたたち…いま暇?』


『い…いえ…私たちは…』


『そう、隣のメイド喫茶に興味があって…』


『暇よね?』


『えっと…だから私たちは…』


『大丈夫よ。チクったりしないから。』

『ずっと後ろで聞いてたけど私はあなたたちと同類よ』


『で…でも…(何言ってるの?この人…)』

『私たちはアイドルには興味ないので、失礼します。』


『そう、あの子が出てきたら、「2人があなたのストーカーしてました」って言って良いのね。』


私たちはその言葉にゾッとした…


『協力してくれるわね。』


『「はい…」』


『じゃあ、あの子が出てきたらうちのメンバーが声かけるから、あなたたちは「偶然」私に声かけられてここに来る。良いわね?』


『私たちもアイドルになるんですか?』


『そんな恥ずかしい格好…』


『良いの?あの子のアイドル姿…間近で見れるのよ?』


『姫のアイドル姿…』


『佐倉先輩が…アイドル…』


『「ぜひ協力させてください!!」』


しばらくして佐倉先輩がメイド喫茶から出てきた。


何故かメイドさんが、アイドルのお姉さんに手を振ると…


『ねぇ、そこのあなた。可愛いわね?アイドルの体験しない?』


『えっ…わ…私…は…あ…アイドル…なんて…』


『はぁ…アイドルの体験は嫌だよね…』

『良いの…「キモい」って言われて嫌われるのは慣れてるから…』


『えっ…』


『ごめんね…』


そう言って涙目で啜り泣く演技をするアイドルのお姉さん。


『あっ…その…い、嫌なわけでは…なくて…』


『えっ?嫌じゃないの?ちょっとは興味あるって事だよね?』

『なんだ〜!それ早く言ってよ。』


『あっ…ちょ…』


『先輩〜!!アイドルに興味がある可愛い子確保出来ました〜!』


そう言って私たちの方に佐倉先輩の手を引いて

走ってくるお姉さん。


『すごいじゃない。私も2人確保したよ!』


『あっ…』


『佐倉先輩…』


『君たち同じ制服だね?もしかして知り合い?』


『あっ…えっと…』


『はい、私の先輩で…』


『私のクラスメイトです…』


『じゃあちょうどいいじゃん。3人用のお揃いコスチュームがあるんだよ。』


『「「えっ…!?」」』


私たちは思っても居なかった提案をされた…


…そして……


『じゃあ、それぞれ握手会の練習をしようか!』


『あっ、設定は、あなたのあだ名は姫ね。あなたたちは姫をトップアイドルにしたくて自分もアイドルになっちゃった姫のファンね』

『じゃあ、姫、海波ちゃん、千夏ちゃん。姫の握手会の練習いくよ。』


衣装を渡された私たちは着替えを終えると手際よくサッと流れを説明されて…


『じゃあ、本番ね。あっ、海波ちゃんそのカメラ貸して。記念にいっぱい撮ってあげるから。』


『えっ…写真…撮るん…ですか?』


『それ…クラス用のカメラ』


『アイドルは撮られて育つの。じゃあ、スタート。』


『み…みな…海波…ちゃん…き…来てくれて…あ…あり…ありがとう…』


『(ヤバい…可愛すぎて死にそう…先輩悶絶してるし…)』


『ちょっと2人とも硬いな〜』


お姉さんが私に耳元で囁く。


『普段言えない事言っちゃって。演技って事にすれば良いから。』


『でも…』


『私もこの子の可愛いところ見たいの!』


『(本音はそれか…!!)』


『今度は海波ちゃんが会いに来たパターンから。』

『姫も、アイドルはお客さんを笑顔にするお仕事よ。自分と数十秒握手するためだけに何時間もかけて来てくれたファンを裏切っちゃダメよ。』

『じゃあ、スタート。』


『キャー!!姫可愛いすぎるー』


『ひっ…』


『緊張してるの?めっちゃ可愛い。赤くなってる〜』


『海波ちゃん…あ…会いに来てくれて…あ…ありがとう…』


佐倉先輩は躊躇いながら私の手を握ってくれた。


『握手しちゃった!!手もちっちゃい!すべすべだし…可愛いよ〜』


『OK!!姫、あなた凄いわね。』


『えっ…わ、私…ですか?』

『私は何もしてないです…』


『じゃあ、次は千夏ちゃんね。』


『はっ…はい…ハァ…ハァ…』


『だ…大丈夫?』


『大丈夫です…次行きましょう!!』


『次はチェキよ。』


『えっチェキ!三浦先輩だけずるいです!』


『海波ちゃん心配しないで。そのあとチェキ交換と3人で撮影だから。』


『2人とも準備して。』


『姫、今の千夏ちゃんはあなたの事が大好きな「あなただけの推し」なんだからもっと積極的にね。』


『は…はい…』


『姫、千夏ちゃんの肩に頭預けて。』


『(羨ましい…)』


『じゃあ、2人でハート作って。』


カシャ。


『はい、姫。』


『えっ…私に?』


『あなたがメッセージ書いて渡すんだよ。』


『(佐倉先輩のメッセージチェキ…羨ましすぎる…)』


『渡す時は…』


お姉さんは佐倉先輩の耳元で何かを囁くと佐倉先輩は顔を真っ赤にして頷いた。


『わ…私の…あ…あ…愛。た、大切に、す・る・ん・だ・ぞ?』


あまりの可愛さに私たちだけではなく周りにいたお姉さんたちまで心を奪われてしまった…



『つ…次は3人それぞれ撮ろうか。』


私たちは一人一人、自分が思う『アイドル』をイメージしたポーズを取りチェキを撮ってもらうとそれにサインとメッセージを書いてお姉さんに渡した。


『次は3人で一緒に撮るわね。』

『真ん中は姫で2人は「私の可愛い姫をみんな推して下さい」って感じで顔くっつけて抱きついて』


『えっ…えっ!!』


『そんな恥ずかしい事…むっ…無理ですよ!(心臓もたない…)』


『先輩に…抱きつく…(幸せすぎる…)』


『早くしなさい!!』


『「「はい!!」」』


カシャ!!


『じゃあ、これで職業体験は終わりね。』


『3人とも…どうしたの?』


佐倉先輩は顔真っ赤にして俯いたまま黙り込んでしまい、三浦先輩は完全に意識が飛んでいた…


『これ、大切にしなさい。』


お姉さんはさっき撮ったチェキをそれぞれに渡してくれた。


横目で佐倉先輩を見ると凄く嬉しそうに3人のチェキを眺めていた。


そして…


『あっ…あの…わ…私なんかが…センターで…ごめん…なさい…』


佐倉先輩は自分がセンターになった事を気にしていた。


『いえ…凄く楽しかったです。』


『私も、佐倉さんが楽しそうで良かったよ。』


『あっ。居た。松井さん、三浦さん。』


『先生どうしたんですか?』


『どうしたって…あっ…佐倉さんはまだ時間あるから出来るだけ他にも回って来なさい。』


『はっ…はい。』


そう言って佐倉先輩を私たちから遠ざける先生。


『先生、私たちも次の場所行きたいです。』


『私も進路の参考にしたいので…』


『じゃあ、まず松井さん。良い写真は撮れた?』


『もちろんです。』


私は先生にカメラを渡すと同時にある事に気づいてしまった。


『(げっ!佐倉先輩の写真しか撮ってない…)』


『松井さん?これで佐倉さんの写真集でもだすのかな?』


『あっ…いや…それは…その…』


『実はね、他校の生徒や先生から怪しい2人組が居ると連絡が入ってね。』


『それは大変ですね。風紀委員長として見過ごせません。』


『はい、私も同意見です。』


『…』

『うちの学校の生徒の後ろをつけて、奇声をあげたり、写真を撮ったりしてるらしいんだ。』


『本当ですか?』


『2人とも、今日は何をしていた?』


『私たちを疑ってるんですか?』


『そうですよ。私たちは…』


『私たちは…何?』


『えっと…(ずっと佐倉先輩の後しか追ってない…)』

『ねぇ、三浦先輩。』


三浦先輩を見ると顔を青くして冷や汗をかいていた…


『三浦、学校では良いが校外ではやるなと言っておいたはずだ。』


『はっ…はい…』


『2人とも、反省文を書いて明日提出するように。』


『えっ…それだけ…ですか?』


『今回は松井が撮った佐倉の幸せそうな写真に免じて許してやる。』

『好きなのは良いが…周りに迷惑はかからないようにほどほどにしろよ。』


『「はい、ありがとうございます。」』


『じゃあ、早く行ってこい。佐倉には見つかるなよ。』


『「はい!!」』


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