表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/14

美酒と唄に酔いしれる夜~頼れる師匠~

サシ飲み三杯目 ― ライアとともに


場所:酒場《銀鱗の吐息亭》

酒:清酒「竜鱗」

相手:ライア


次の舞台は、武骨な木の柱と石造りの壁に囲まれた居酒屋。

派手さはないが、剣士や冒険者達がよく集う場所らしく、ざわめきの中に熱気が満ちていた。


テーブルに並んだのは、透き通るように澄んだ清酒。

喉を滑らせればすっきりとした飲み口の奥に力強い旨みがあり、まさに戦士にふさわしい一杯だった。


「ふぅ…こうして飲むのは悪くないな」

ライアはぐいっと盃をあおり、口元を袖で拭う。

普段の真剣な剣士の顔つきとは違う、どこか肩の力の抜けた表情がそこにあった。


「実はさ、俺の世界に“日本”って国があってな。そこにも清酒に似た酒があったんだ」

盃を口に運びながらそう言うと、ライアは興味深そうに眉を上げた。


「へぇ、案外似てるのかもな、こことお前の世界って」

彼女はごくりと喉を鳴らし、盃を置いて腕を組む。


「どうだろうな…」

俺は少し笑いながら首を振る。


「俺の世界じゃ、もう剣で戦うなんてしてなかったよ」


「じゃあどうやって戦ってたんだ?」


「俺の世界って、魔法がない代わりに技術が発展しててな。『銃』っていう武器が主流だったよ」


ライアの問いに、俺は盃を揺らしながら答える。胸の奥がわずかにざわついた。


「じゅう?」

ライアが不思議そうに眉をひそめる。

聞き慣れない言葉に戸惑っているのが見て取れた。


「こっちにあるクロスボウの強化版って感じかな。引き金を引くだけで、矢みたいなのが一瞬で飛ぶんだ」


「ああ、あれか」

ライアはすぐに戦場を思い浮かべたのか、真剣な顔になる。


「確かに、あれは厄介な武器だな…一対一の勝負には向かないけど、大勢を相手にするなら恐ろしく強い」


盃を置いた彼女は、まっすぐな瞳で俺を見据えた。

「だけどな、剣は戦士の誇りだ。技術で作られたどんな武器よりも、己の腕と心で扱う剣こそ、真に頼れるものなんだ」


その言葉があまりにライアらしくて、俺は思わず笑みがこぼれる。


「…まぁそんなこんなで、俺は銃どころか剣を振るう機会なんてなかったんだ」

俺が肩をすくめると、ライアはくすりと笑い、思い返すように目を細めた。


「確かに、最初のお前は全然剣の心得なんかなかったよな。構えもおぼつかなかったし」

その声音はからかうというよりも懐かしむ色を帯びていた。


「でもな、お前には才能があると思うぞ。闇の力があったとはいえ、あの剣術大会で勝ち進んで、私と剣を交えたんだからな」

彼女は盃を再び手に取り、真っ直ぐな瞳で俺を見据える。


ライアの言葉は飾り気がなく、ただ真実を告げるだけのものだった。

その言葉に、胸の奥がちくりと疼く。

俺は盃を揺らしながら、小さく息を吐いた。


「…昔さ、人を助けようとしたことがあったんだ」

ふと口をついて出た言葉に、ライアがわずかに目を細める。


「いじめられてた奴をかばった。でも…感謝なんてされなかった。むしろ俺の方が浮いてさ」


盃の中の澄んだ酒を見つめながら、苦笑が零れる。

「それからは、もう人を助けようとなんて思わなくなった。どうせ報われないって、そう思ってた」


「…カケル」

ライアの低い声が、俺を促すように響く。


「でも、この世界に来て…闇の力を得て、誰かを助けて…『ありがとう』って言われたんだ」

言葉が胸の奥から静かに零れていく。


「それが…すごく嬉しかった。だから闇の力がなくなった今でも、やっぱり誰かを守る力でありたいんだ」

酒のせいか、声がわずかに震えていた。

それでも、ライアは真っ直ぐに頷き、俺の言葉を受け止めてくれていた。


「…なら、剣を学べばいい」

彼女の声は澄んでいて、揺らぎがなかった。


「闇の力なんてなくても、お前は剣を握る資格がある。仲間を守りたいって思える心があるなら、それだけで十分だ」


ライアは盃を掲げ、挑むように笑みを浮かべる。

「いつか――私に追い付いてみろよ」


その言葉に、思わず笑みがこぼれる。

「……ああ、それまでしっかり鍛えてくれよな、師匠」


盃を軽く掲げ返すと、ライアは力強く頷いた。

「ふん、任せろ。弟子が情けなくならないよう、びしばし鍛えてやるさ」


その瞬間、アピアのリュートが優しく爪弾かれた。


「嗚呼~澄みし刃 誇りを胸に 友と歩む」

今回のお相手はライアでした。


どこか豪放磊落でありながら、仲間を導く姿はまさに頼れる師匠そのもの。

酒を酌み交わしながら語る時間も、また彼ららしいひとときでした。


次は寡黙だけれど、誰よりも熱い想いを胸に秘めた彼女との乾杯です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ