↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日米転生earth  作者: 照山
序章 2024年
PR
22/32

第17話 カリーニングラード

2024年3月27日深夜 ロシア領カリーニングラード州・グセフ


暗闇に包まれたロシア最西端の飛地・カリーニングラード州。カリーニングラードに駐留するロシア海軍第11軍団の軍団司令部において、静まり返った作戦室のモニターが一斉に青白い光を放った。


「命令に続け! 第11軍団、および隷下部隊はこれより侵攻を開始する!」


軍団長の号令が下された瞬間、欧州の東部国境を一変させる致命的な歯車が回転を始めた。NATOの東方拡大と欧州諸国の軍事介入に対する徹底的な報復、そして西側防衛網の分断を狙うロシア軍は、カリーニングラードに集結していた部隊に対し、隣国ポーランドおよびリトアニア領内への一斉侵攻命令を下した。


初動として動いた第18親衛自動車化狙撃師団がグセフおよびソヴィェツクの国境地帯から怒涛の勢いで前進を開始し、第244砲兵旅団がカリーニングラード全域から一斉に重砲撃の雨を浴びせた。さらに、チェルニャホフスクに陣取る第152親衛ロケット旅団から放たれたP-17が、ポーランドとリトアニアの国境沿いにあるNATO軍の補給拠点や通信網を激しく直撃した。


上空では第22独立親衛高射ミサイル連隊が防空網を固め、第7独立親衛自動車化狙撃連隊と第46独立偵察大隊、第40独立作戦大隊が先頭として機甲部隊の針路を切り開き、敵地へと突入していった。


それとほぼ同時刻、国境を挟んだ南側のベラルーシ国内からも、ベラルーシ軍の西部管区部隊が轟音を響かせてポーランド国境を突破した。ロシア軍とベラルーシ軍による南北挟撃の猛攻である。



同年3月27日早朝 ポーランド北東部・ビャウィストク郊外


静かな朝の光が差し込むはずのポーランド北東部の要衝、ビャウィストクの郊外は、瞬く間に地獄のような戦場へと変貌していた。


「来るぞ! 敵の戦車部隊だ! 対戦車ミサイル発射準備!」


ポーランド陸軍第18偵察連隊の兵士たちが、塹壕と掩体壕の中で必死に叫び声を上げていた。首都ワルシャワへ向かう要路であるビャウィストクを死守するため、同連隊は夜を徹して陣地を構築していたが、そこに襲いかかったのはロシア軍第18親衛自動車化狙撃師団と、ベラルーシ軍の機甲部隊であった。地平線の彼方から砂塵を巻き上げて迫るT-72およびT-80戦車の群れ。その上空をロシア軍の攻撃ヘリが低空飛行で唸りを上げ、ロケット弾の雨を降らせる。


「撃て――ッ!」


隊長の号令とともに、ポーランド軍の陣地からスウェーデン製の対戦車ミサイルカール・グスタフやスパイクが一斉に火を噴いた。閃光と爆音とともに、先頭を走っていたベラルーシ軍の装甲車が爆発し炎に包まれた。しかし、次々と押し寄せる敵の物量はそれを上回っていた。ロシア軍の砲兵旅団による正確な着弾観測と砲撃がポーランド軍の陣地を正確に抉り取り、瞬く間に防衛線の一部が寸断された。


「無線が通じない! 本部に連絡しろ! 第18偵察連隊、包囲網突破される恐れあり!」


激しい銃声と砲煙の中で、ポーランド軍の若き小隊長は血だらけになりながら無線機にしがみついた。一歩も引けない祖国の防衛線で、ポーランド陸軍の兵士たちは圧倒的な東側連合の猛攻に対し、文字通り血を流しながらの必死の抗戦を続けていた。



同年3月27日 10:00 ドイツ連邦共和国・ベルリン 連邦首相府


カリーニングラードからのロシア・ベラルーシ連合軍の侵攻、そしてビャウィストクにおける激しい交戦の報は、瞬時に欧州の首都を駆け巡った。ドイツの首都ベルリンにある連邦首相府の執務室ではサムエル首相は、刻々と送られてくる戦況報告のタブレット端末をテーブルに置き、険しい表情のまま窓の外を見つめていた。その背後では、国防相や外相ら閣僚が緊迫した面持ちで言葉を失っていた。


「サムエル首相、ポーランド政府から正式に要請が届きました。ビャウィストク方面の防衛線が突破されれば、ドイツ国境も直接的な脅威にさらされます。NATO条約第5条に基づく、さらなる増援とドイツ軍の本格的な戦闘参加が必要です」


外相の緊迫した報告を聞き終えると、サムエル首相はゆっくりと振り返り、冷徹で力強い口調で言った。


「わかっている。ドイツはポーランドを、そして欧州の自由を絶対に裏切らない」


首相はデスクの前に立ち、マイクを通じてドイツ全土、そして全世界のメディアに向けた緊急声明を発した。その声には、冷戦終結以降の欧州が忘れていた強い怒りと決意が込められていた。


『我々は今、歴史の暗い亡霊が再び蘇る瞬間を目撃している。カリーニングラードから侵攻を開始したロシア軍、そしてそれに追随するベラルーシの暴挙は、国際法に対する明白な踏みにじりであり、欧州全体の平和に対する宣戦布告である』


サムエル首相は言葉を強め、ロシアの指導部を真正面から糾弾した。


『ロシアがやっていることは、近代国家の外交ではない。かつて東欧を恐怖と暴力で支配し、その自由を奪い去った「ソ連の残滓」そのものである。力による現状変更と他国の領土略奪を企てるその野蛮な手法に、我々は決して屈しない。ドイツはNATOの同盟国とともに、持てるすべての軍事力を挙げてこの侵略者を押し返す!』


ドイツ首相によるソ連の残滓という痛烈な批判と宣戦布告に近い強硬な声明は、欧州全域の結束を極限まで高めると同時に、東欧の平穏な大地を舞台にした大規模な地上戦の幕引きを決定づけたのだった。

次回も楽しみによろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。