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日米転生earth  作者: 照山
序章 2024年
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17/32

第12話 覚悟

2024年3月17日 12:30 東京・永田町 首相官邸・地下危機管理センター


「総理、防衛省から最新の電文です! 東シナ海に展開する海上自衛隊自衛艦隊から、中国軍機および艦艇による対水上ミサイルの即時警戒レーダー照射を確認! すでに自衛権行使の限界線を超えています!」


地下危機管理センターの巨大なモニターには、太平洋からユーラシア大陸、ヨーロッパの東部に至るまで、無数の赤と青の光点が不気味に明滅していた。わずか数時間の出来事であった。北朝鮮による38度線突破と韓国侵攻、ロシアによるウクライナへの再侵攻とベラルーシの参戦、バルト三国およびフィンランドへの極超音速ミサイル撃ち込みと、飛地カリーニングラードからのポーランド侵入。そして、台湾海峡での緊迫の末に引き起こされた、中国による日本、韓国、台湾、オーストラリア、フィリピン、インドへの同時宣戦布告。


間髪を入れず、NATO(北大西洋条約機構)が第5条を発動し、中・露・朝の権威主義同盟に対し全面宣戦布告を敢行。第二次世界大戦の果てに人類が築き上げた国際秩序は、アメリカの消失によって破綻し、人類は3度目の世界大戦へ突入していった。


まず在日米軍の扱いである。ワシントンからの指揮命令系統が途絶し、本国からの補給・指示が失われたものの、横須賀、佐世保、横田、嘉手納、普天間をはじめとする全国内基地に駐留する約5万人の在日米軍兵力、ならびに第7艦隊を中心とする空母打撃群・航空・陸兵力は、その機能と莫大な火力を保持したまま日本国内にそのまま留まっていたのだ。


「総理、横田と横須賀との極秘調整が完了いたしました」


加藤防衛大臣が、熱を帯びた声で大島総理に報告した。


「本国からの指令指示を失った在日米軍側も、孤立無援での生存は不可能です。我が国との特別防衛協定に基づき、駐留するすべての在日米軍部隊(陸・海・空・海兵隊)は、本日ただいまをもって日本国統合幕僚長および防衛大臣の指揮下すなわち自衛隊の隷下へ一時的に組み込まれることに同意しました」


歴史上の大転換であった。日本の安全保障を主導していた米軍が、本土喪失という極限状態において、自衛隊の作戦指揮権下に配属されるという前代未聞の統合運用体制が確立されたのだ。


「よし・・・! 在日米軍の艦艇・航空機・海兵隊の全戦力を自衛隊の作戦計画に統合せよ!」


大島首相は、自衛隊統合幕僚長や全閣僚の視線が集中する中、両手を机に突き、深く沈黙した後に覚悟を決めた。


「本日ただいまをもって、自衛隊法第76条第1項の規定に基づき、自衛隊全軍および隷下に入った在日米軍諸部隊に対する防衛出動を発令する。同時に、自衛隊法第88条に基づく戦闘行動命令を下達する。内閣総理大臣として命令する。日米統合防衛戦力は、我が国の領土、領海、領空、および国民の生命と財産を防衛するため、有志国連合と連携し、敵対勢力の暴挙に対し最大限の武力をもってこれを排撃せよ!」


「了解!!」


統合幕僚長が凄まじい気迫で敬礼を返し、市ヶ谷の中央指揮所および横田・横須賀の日米共同統合指揮所へと直通回線を開いた。


「総理命令下達! 防衛出動発令! 戦闘行動命令発令! 対象、陸海空全自衛隊部隊、および自衛隊指揮下に組み込まれた在日米軍全部隊! 繰り返す、全軍直ちに戦闘行動に入れ!」


官邸地下の作戦室で、日本国および日米統合戦力が全面戦争状態に入ったことを公式に確認した瞬間であった。



同日 13:00 首相官邸・記者会見場


テレビの画面には、「ニュース速報」の赤い太文字と、神妙な面持ちでマイクの前に立つ大島総理の姿が映し出された。NHKをはじめとするすべての民放キー局、さらにはインターネット配信サイトが、一斉にこの会見を同時生中継していた。


『国民の皆様。内閣総理大臣の大島康二です。本日未明、北朝鮮軍による韓国への侵攻、ロシアによるウクライナおよびポーランドへの攻撃、そして中国による我が国を含む有志国に対する宣戦布告が相次いでなされました。世界は今、第三次世界大戦という凄惨な全面戦争の渦中に突入しました。我が国に対し、明確な攻撃と侵略の意思が示された以上、もはや静観の道はありません。政府は先ほど緊急閣議を開き、自衛隊に対して防衛出動および戦闘行動命令を発令いたしました。なお、日本国内にとどまっている在日米軍諸部隊は、我が国との緊急合意に基づき、すべて自衛隊の指揮下に組み込まれました。日米の誇る防衛戦力が完全に一つとなり、我が国を防衛いたします。自衛隊および日米統合戦力はこれより、我が国を防衛し、自由と民主主義を守るため、持てる全能力をもって戦闘行動に入ります。国民の皆様におかれましては、混乱することなく、政府および自治体の指示に従って冷静に行動していただくよう心よりお願い申し上げます。我々は試練の時を迎えています。しかし、我々は決して屈しません。日本国の平和と未来を、自衛隊、そして世界の有志国とともに必ずや守り抜くことを、ここに誓います」


大島総理の演説が終了した瞬間、日本社会はかつて経験したことのない巨大な激震に見舞われた。渋谷のスクランブル交差点、新宿駅の巨大ビジョン前では、テレビモニターを見上げる人々が茫然と立ち尽くしていた。悲鳴を上げて泣き崩れる若い女性、電話を握りしめながら家族の安否を確認しようと怒号を飛ばす男性、あまりの非現実的な光景に言葉を失い、ただ画面を凝視する通勤客たち。街の静寂を切り裂くように、全国各地でJアラート(全国瞬時警報システム)の不気味なサイレン音が鳴り響いた。


「警報、警報。ミサイル飛来の恐れ。頑丈な建物や地下に避難してください」


このサイレンと総理大臣の会見、そして在日米軍の自衛隊隷下組み込みというニュースが引き金となり、インターネット上のSNS、特にX(旧Twitter)やYouTubeの生配信、掲示板サイトは、毎秒数十万件におよぶ投稿の嵐によってパンク寸前の状態に陥った。トレンド欄は、瞬く間に世界大戦に関連するワードによって埋め尽くされた。


【トレンド一覧】

#第三次世界大戦

#防衛出動

#在日米軍が自衛隊の指揮下に

#Jアラート

#戦闘行動命令

#中国宣戦布告

#38度線突破

#スーパー買い占め

#米軍指揮権

#自衛隊がんばれ


SNS上では、極度の恐怖、混乱、怒り、そして現実逃避が錯綜し、カオスな言論空間が形成されていった。


『マジで言ってるのかこれ・・・?? 第三次世界大戦ってニュースでやってるんだけど、夢だよな??』


『Jアラート鳴りっぱなしで手が震えて止まらない。中国から宣戦布告されたって本当なの!?』


『防衛出動出たぞ・・・。憲法改正したから本当に自衛隊が戦闘するんだ。これまでの日本じゃない。マジで戦争が始まったんだ』


『米本国が音信不通でも在日米軍の戦力は残ってるのか! 第7艦隊や嘉手納のF-15/F-22が自衛隊と一緒に戦うなら、相当強いはずだぞ!!』


『都内のスーパー行ったけど、すでに米と缶詰とトイレットペーパーが完全に売り切れてる。レジ列が外まで続いてて殺気立ってる。みんな落ち着けよ!!』


『株式市場暴落どころじゃないんだが。日経平均がストップ安連発で取引停止。経済も完全に終わるぞこれ』


『TLでデマが多すぎる!「小田原に中国軍が上陸した」とか「水道水に毒が入ってる」とか拡散してる奴、通報しろ! デマに騙されるな!!』


『ガチで地下鉄に逃げ込んだ方がいい? 新宿駅が人で溢れかえってて足の踏み場もないんだけど』


『ヨーロッパでもNATOがロシアに宣戦布告したらしい。本当に撃ち合ってるんだ・・・。なんでこんなことになったんだよ・・・』


『今まで「平和ボケ」って笑ってたけど、いざ目の前で戦争始まると人間ってマジで頭真っ白になるんだな。生きて明日を迎えられるのか?』


都市部では、パニックに陥った人々がスーパーやドラッグストアに殺到し、食料品や日用品の買い占めが発生。高速道路は地方へ避難しようとする車で大渋滞を引き起こし、主要駅の地下街はミサイル攻撃を恐れる人々で埋め尽くされた。


その一方で、南西諸島や日本海の沿岸部に位置する自衛隊基地、ならびに横須賀・嘉手納・岩国などの米軍基地周辺では、緊迫したエンジン音が大気を震わせていた。


日米の国旗と部隊章を掲げたF-15、F-35、F/A-18戦闘機群が爆音を響かせて次々とスクランブル発進し、自衛隊の護衛艦と第7艦隊のイージス艦・空母群がともに白煙を上げて港から出撃していく。その光景をスマートフォンで撮影し、SNSに投稿する人々がいた。


『那覇基地と嘉手納から、自衛隊と米軍の戦闘機が飛び立っていった! 』


日本政府による防衛出動の発令、自衛隊指揮下に入った在日米軍の即時展開、そしてSNS上で激増する国民の叫び。80年間にわたって続いてきた平和な日常は音を立てて崩れ去り、人類は再び蛮行へ突き進んでいくのであった。

次回も楽しみによろしくお願いします

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