第10話 世界大戦の幕開け
2024年3月17日4:00 朝鮮半島・板門店 軍事境界線(38度線)
台湾海峡で有志国連合と中国海軍による嵐の前の静けさような睨み合いが続いていた3月17日未明。世界は一瞬にして、二度と戻れない破壊と破滅の破局へと突き落とされた。夜を切り裂く数千発の大砲と多連装ロケットの爆音とともに、北朝鮮軍が一斉に砲撃を開始。それと同時に、戦車軍団を先頭に朝鮮人民軍が38度線を突破し、韓国本土へと怒涛の勢いで侵攻を開始した。
「北朝鮮軍、軍事境界線を突破! ソウル方面へ南下中!」
同日5:00 東欧 ウクライナ〜ポーランド国境
激動はアジアだけに留まらなかった。ユーラシア大陸の西端でも、呼応するように巨悪の連鎖が爆発する。ロシア軍がウクライナ全土へ向けて大規模な再侵攻を開始。北からはベラルーシ軍が呼応し、共同でウクライナ国境を越えて進撃を始めた。さらにロシア軍は、自重することなくバルト三国のエストニア、ラトビア、リトアニアおよびフィンランドの主要都市や軍事基地へ向けて数十発の巡航ミサイルを同時発射。それだけに止まらず、飛地カリーニングラードに集結していたロシア陸軍部隊が、NATO加盟国であるポーランドの東部国境へと怒涛の勢いで雪崩れ込んだ。ヨーロッパは3度目の戦場となった。
同日 08:00 中国・北京〜台湾海峡
ユーラシア大陸の両端で同時に火蓋が切られたその時、台湾海峡で睨み合いを続けていた中国政府は、国際社会に対する最終通牒を一斉に発した。槫平秋国家主席はテレビ演説に臨み、氷のように冷酷な口調で全世界へ宣言した。
「我が国の神聖なる領土と主権に対する公然たる侵略に対し、我が国はこれより自衛のための全面的軍事行動を開始する」
中国政府は、日本、韓国、台湾、オーストラリア、フィリピン、インドの6か国に対し、正式に宣戦布告を流布。それと同時に、台湾海峡に展開していた中国海軍艦艇および沿岸のミサイル基地が、有志国連合艦隊へ向けて一斉射撃を開始した。
同日 10:00 ベルギー・ブリュッセル NATO(北大西洋条約機構)本部
ロシアによるポーランド侵入とバルト三国・フィンランドへのミサイル攻撃を受け、NATO(北大西洋条約機構)は緊急集団防衛条約第5条の適用を全会一致で採決。NATO第5条の内容は以下の通り。
第五条
締約国は、ヨーロッパ又は北アメリカにおける一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。したがつて、締約国は、そのような武力攻撃が行われたときは、各締約国が、国際連合憲章第五十一条の規定によつて認められている個別的又は集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するためにその必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び他の締約国と共同して直ちに執ることにより、その攻撃を受けた締約国を援助することに同意する。
「加盟国1国に対する攻撃は、全加盟国に対する攻撃とみなす」
NATO事務総長は青ざめつつも、決意に満ちた声で緊急記者会見を開いた。
「自由と民主主義を暴虐によって踏みにじる野蛮な同盟に対し、我々は全能力をもって立ち向かう。NATOは、中華人民共和国、ロシア連邦、そして朝鮮民主主義人民共和国に対し、戦時状態に入ったことを宣言する!」
同日12:00 東京・首相官邸 危機管理センター
世界規模で連鎖する電撃的な侵攻と宣戦布告の報が、首相官邸に怒涛のごとく押し寄せていた。
「総理! 北朝鮮が韓国へ侵攻! ロシアがポーランドおよびバルト三国へ侵攻! 中国から日本を含む有志国へ宣戦布告が打たれました!」
「NATOが中・露・朝の3か国へ正式に宣戦布告! 世界中で同時多発的な戦闘が発生しています!」
絶叫が飛び交う地下作戦室の中心で、大島康二総理は唇を噛み締めながら、世界地図の上に広がる真っ赤な戦線を見つめていた。アメリカが失われた地球上で、抑えを失った権威主義国家の中・露・朝の悪夢の枢軸が、世界秩序の完全な破壊を目指して動き出したのだ。
「3度目の世界大戦か・・・」
大島総理は深く息を吸い込むと、官邸に集まった防衛大臣、外務大臣、そして自衛隊幹部たちを見回した。
「諸君、ついに来てしまった。人類史上最悪の惨禍。『第三次世界大戦』の始まりだ」
大島の力強い、しかし重々しい声が作戦室に響く。
「我々に逃げ場はない。日本国と国民の生命、そしてこの世界の自由を守り抜くため……防衛省、自衛隊、直ちに全軍に防衛出動および戦闘行動命令を発令する。有志国連合と連携し、我々の全力を尽くして敵の暴挙を食い止めるのだ!」
「了解!!」
2024年3月17日、太平洋から東シナ海、朝鮮半島、そしてヨーロッパの平原に至るまで地域が人類の運命をかけた第三次世界大戦の火ぶたが、ついに切られたのだった。
次回も楽しみによろしくお願いします




