そういえば新年
アフィの今後の目的はとりあえずは決まった様子。
そんな中街の賑わいを見て新年だったと思い出す。
アフィの家はそういった事は特にしないので、すっかり忘れていたようで。
とりあえず適当にふらついていると流の姿を見つける。
「お、おーい!流じゃん!」
「ん?なんだ、アフィか」
「何してんの?」
どうやら流は以前こっちに来た麗奈と連絡を取っていたらしい。
あの一件のあと連絡先を交換して、何かとやっていたようで。
「そういえば流の国も新年なんだよね?」
「そうだな、時差があるから少しずれるけど、一応そうなる」
「流は国に里帰りしたりはしないの」
「有給もらってもよかったんだけどな、ただこの時期は患者も増えるんだよ」
「あー、なんとなく分かる気がする」
本当は帰ってもよかったという、上司も言えばいつでも許可は出すと言っていた。
だがこの時期は患者も増えるという事もあり、残る事にしたらしい。
病院もこの時期は最低限の医者しかいないので、人員は大切なのだと。
「それに帰ってもあまりする事もないしな」
「そうなんだ、でも麗奈さんと一緒にお墓参りぐらい行けばいいのに」
「それも考えたけど、今は落ち着く事が先だよ」
「流も何かと考えてるんだね」
「それに騒がしいのはそんなに好きでもないしな」
流も思うところはあるようで、それもあってかこっちに残ったのだろう。
アフィはそれも流の優しさなんだと思っていた。
それはそうと流に流の国の新年について聞いてみたり。
「そういえば流の国でも新年を祝ったりするんでしょ」
「するな、神社に行ったりとかするけど、基本的にはのんびりしてるよ」
「ふーん、そういうものなんだ」
「俺はそもそも初詣とか行かないタイプだしな」
「神様は信じてないとか?」
流曰く神様は信じているが、それに頼るような事はしたくないのだという。
それも医者としての信念のようなものなのだろう。
だからこそこっちに残ったのかもしれない。
「でも東の国ってこっちとは文化も違うし、一度見てみたいな」
「あまりいいものでもないぞ?まあ俺はせめてものって事で雑煮作って食べてるけど」
「ゾウニ?」
「餅を入れた簡単なスープだよ、こっちでも材料は手に入ったからな」
「なるほど、ならあたしも旦那様に作ってもらおう、レシピ教えてよ」
とりあえず流は必要なものを紙に書き留める。
メモ用紙とペンは職業的にも常に持ち歩いているからこそだ。
お雑煮のレシピを書いてそれをアフィに渡す。
「これでいいか」
「うん、意外と簡単なんだね、マーケットに行って材料買って帰ろう」
「こっちの正月も独特な感じがしていいぞ、お互い違う国って新鮮なんだな」
「そうだね、国が違えば風習も違う、それはあるよ」
「外国の風習に触れるのも悪くないもんだな」
流にはこの国の正月は新鮮に映るらしい。
アフィも流の話を聞いて東の国の正月は興味深いと感じた。
やはり隣の芝生は青いという事なのだろうか。
「それにしてもこっちでも東の国の食材とか結構手に入るから助かってるよ」
「一応そういうマーケットはあるからね」
「俺も買い物するのはそこが多いな、やっぱり地元の味が一番だよ」
「こっちの食事が不味いっていうわけではないんだよね?」
「不味くはないさ、寧ろ美味しいんだけど、地元の味には勝てないっていうかさ」
そこはやはり食べ慣れた味が一番という事なのだろう。
流もよくそのマーケットで買い物をするという事らしい。
こっちの料理も美味しいがそれでも地元の味が食べ慣れてるという事だ。
「食事に関しても何かとあるもんね」
「こっちの食事も普通に美味いんだけど、やっぱり故郷の味か恋しいっていうかな」
「なるほど、やっぱりそういうのはあるんだね」
「あるな、本当に」
「故郷の味かぁ、流の故郷の味にも興味あるかも」
そんな話をしつつ晴れた新年の空を見上げる。
流もそろそろ仕事に戻るとのこと。
「それじゃ俺は仕事に戻るよ、じゃあな」
「うん、さて、あたしも食材買って帰ろう」
そうして流は仕事に戻っていった。
アフィはマーケットでお雑煮の食材を買い集める。
家に帰ってメルクに頼みお雑煮を作ってもらったのはお約束。
特に飾り付けなどをしない家なので気づいたら新年なのです。




