冬の過ごし方
すっかり冬になったここ最近の日々。
アフィも寒いからなのか、仕事以外で外に出る時間も減っていた。
そんな寒くなった中メルクも体が暖まる料理をよく作ってくれる。
ついでに今日は時間的にちょうどいいという事で、エロイドも一緒に暖まっていた。
「旦那様ぁ~、今日のご飯なに~」
「今日はラザニアですよ」
「しかしよかったのか?私も一緒になって」
仕事で訪ねてきていたエロイドにせっかくという事なので、一緒にお昼を食べる事に。
東の国から来ているというエロイドにはこっちの食事も美味しく感じるようで。
「それにしてもすっかり寒くなったね」
「寒さぐらいなんという事はないぞ」
「エロイドは毛皮があるからでしょ」
「そういえば狐の姿になれるんでしたか」
「モフモフしてるよね」
狐の亜人であるエロイドからすれば、寒さ程度はなんのその。
その毛皮が寒さを軽減してくれる。
とはいえ流石に外に出る際は人の姿に戻るようだが。
「そういえばさ、亜人っていろんな種類がいるんだよね?」
「いるな、私は狐だが、他にもトカゲや狼、猫やカラスなどもいた」
「へぇ、亜人って意外と種類がいるんだねぇ」
「動物の身体的な特徴を持つ人間、という認識ですよね」
「それで確か獣により近いやつを獣人っていうんだっけ」
亜人と獣人の違い、それは獣などの生き物の特徴の強さだそうな。
亜人は人間の体に動物の尻尾や耳がついた、いわば人間寄りの存在。
一方で獣人は二足歩行ではあるが、全身が体毛に覆われていたりする。
「獣人になるとそれこそ全身モフモフだったりするんだよね」
「その表現はどうかと思うがな、まあそれで一応は合っているぞ」
「人間に近いのが亜人、獣なんかの動物とかに近いのが獣人か」
「世界的にはそうやって区別していますね、僕も仕事で話す事もありますし」
「旦那様って教会で働いてるからこそ、種族とか一切気にしないよね」
メルクは仕事柄なのもあるかもしれないが、種族や人種には寛容だ。
そもそも悩みを聞くのも仕事なので、種族などによる差別はしてはならない。
万人に等しく手を差し伸べるのが仕事だとメルクは言っている。
「旦那様は仕事でなくても差別とかしそうには見えないよね」
「実際街にいる他の亜人などの他種族も教会なら安らげると言っているな」
「旦那様は元々懐が深いよね、あたしと結婚するような人だもん」
「あなたの場合は一人で生活させたらゴミ屋敷にしそうだからですよ」
「厳しいなぁ、でもそれが旦那様の優しさなのは理解してるけどさ」
そうしているうちに昼食が出来上がったようだ。
メルクの作るラザニアはアフィのお気に入りの料理の一つ。
冬の寒い時期には体も暖まるのでそれもあってか格段に美味しく感じる。
「ん、やっぱり旦那様の料理は最高だね」
「出来合いのもので作っても美味しくなるものですよ」
「エロイド?食べないの?」
「いや、食べるがな、私は猫舌で熱いものが駄目なんだ、だから少し冷めるのを待っている」
「そういえば出したお茶も冷めるのを待ってたね」
エロイドは猫舌らしく、熱い飲み物や料理が苦手なのだそうだ。
そのため冬でも基本的に冷たい飲み物を飲むし、温かい料理も冷めるのを待つという。
体を暖める事の大切さは知っているが、熱いものは苦手なのだから仕方ないと。
「でも猫舌かぁ、温かいスープとかすぐに飲まない人っているもんね」
「猫舌の私には冬はなかなかにきつくてな、飲み物も温かいものが多いから困るんだ」
「温かいお茶とかもすぐには飲めないって事か」
「冬は食事も体を暖めるために作る事が多いですからね」
「熱々のグラタンとかそれが美味しいんだけど、そういう人もいるんだよね」
なんにしてもエロイドは冷めるのを待っている。
猫舌故に熱いものを食べるのが辛いのだから仕方がない。
人の家で食事をいただく時はそれが失礼だと分かっていても仕方ないのだ。
「とりあえず食べられるようになったらきちんと食べてね」
「ああ、すまない」
「猫舌というのも苦労するものなんですね」
そんなお昼時はゆっくりと過ぎていく。
冬はやはり部屋に引きこもりぬくぬくするのが最高なのだ。
メルクも体が暖まる食事をメインにしてくれる。
冬は冬で美味しいものもたくさんあるのだから。




