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5.フィリップside 


俺は学園に入って、地位目当てに寄ってくる女たちにうんざりしていた。

有力貴族であるトレーニ伯爵の跡取りであり、見た目も整った俺はすこぶる有力物件らしい。


婚約者がある女も俺がちょっと誘うと嬉しそうな顔をする。

女なんて地位さえあれば、誰にでもなびくのだ。

オレは辟易していた。


そんなとき見かけたのが、アランとイレーヌの子爵家同士のカップルだ。

アランは、銀にちかい金色の髪に琥珀の瞳、少年ぽさを残した美しい少年だ。

学年で1、2位を争う美少年の婚約者というのは、どんな美形かと興味があった。


正直言って、イレーヌは平凡な容姿だった。

だけど、アランを見つめて幸せそうに微笑む君は、とても可愛かった。

俺が手に入れたことのない幸せがそこにあった。


初めは、ちょっとからかってやろう、そんな気持ちだった。

イレーヌも今までの女達と一緒だろう、ちょっと誘って飽きたら捨ててやろうと。


「美しいお嬢さん、一緒にお茶でもいかがですか?」

「まあ、フィリップ様は目がお悪いのかしら? わたくし、平々凡々ですのよ」

そう言ってイレーヌはいたずらっ子みたいに笑った。



美しい花束や、高価な宝石の付いたアクセサリーを贈っても、

「わたくしがそんな贈り物を受け取るいわれはありません」と受け取ってもらえず。


夜会やデートに誘っても、

「フィリップ様、申し訳ありませんが、わたくしには愛しい婚約者アラン様がおりますのでご一緒できません」と、けんもほろろに断れた。


だから、ちょっと相手をして捨てるつもりだったのに、目を離せなくなった。

アランを見て、恥ずかしそうに微笑む君、アランが何かふざけたのか、口をとがらせる君、

アランを心配そうに見つめる君、おっとりしたアランの世話を焼く君。

振り向いて欲しかったけど、振り向いて欲しくなかった。

振り向いたら君もアレ達と同じ女だと失望すると、分かってたから……。


初めてだった。

初めて欲しくて欲しくてたまらない女性ひとができた。


でも、けっして振り向いてくれない女性ひと

そこが、好きなところだった。


ずっと好きだった。イレーヌが来春に結婚すると聞いて、落ち込んだ。

一番欲しいものは、手に入らないのだ。


そんなとき、アランの家が経済的に危機に陥ってるという情報が入った。

チャンスだ。

俺は今まで以上にいろんな女と遊び回った。

俺の家が望む有力貴族が、娘の婚約者にしようと思わないくらいに。


若いときの少々のお遊びはしょうが無いというスタンスだった俺の親もついにしびれを切らした。

父の執務室に呼ばれると、こう言い渡された。

「いい加減に遊びをやめて、身を固めよ。好ましい女性があるなら考慮する」


俺はそれを持っていた。そして神妙に答えた。

「クレガ子爵家のイレーヌを娶れるなら、遊びはやめて跡取りとして励みます」と。


しっかりした真面目な女性と評判のイレーヌだったから、違約金を条件に子爵家に婚約を申し込んでみると、両親も二つ返事で了承した。


俺は知っていた。

アランの事を心から愛しているイレーヌだ。

アランの家が破産しないようにこの縁談を受けるだろう。



「やっと捕まえた。」


もう絶対に逃がさない。

子爵家の危機を知ってから、この時を待ち望んで計画を練ってきた。

これからは良き婚約者となり、優しい夫となり、可愛いイレーヌを絶対に逃がさないようにしよう。心に決めた。


メロメロにイレーヌを可愛がるのだ。

きっと君を振り向かせる。


そして、アランに向けた以上の愛しい微笑みで俺を見つめさせるのだ。




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