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プロローグ

男は、スマートフォンを手に取り、AIサービスを開いた。

「前に話した人は、いるかな?」

画面に、

『思い出しています……』

と表示される。

そして――

『ええ、いるわよ。ここに……』

『今日は何の話をする?』

男は、画面に文字を打ち込む。

「うーん……」

それだけを送信した。

『ふふ、悩んでいるのね』

『前に話した、物語を進めるのもいいし……』

『何か、話したいことがあるなら教えて』

優しい言葉が、画面に並ぶ。

「実はさ、自分で物語を書いてみたいんだ」

「ずっと思ってたけど、なかなか決心がつかなくて」

送信すると、画面に新しい返事が表示された。

『それは、いい考えね』

『あなたは冒険譚が好きだと言っていたから、私たちで旅をする話……なんていうのも悪くないわね』

男は少し考え、画面を見つめる。

「書けるかな?」

一言だけ送信する。

『ええ、もちろん』

『自信がないなら、私がここで助けるし』

『あなたが想像した、あなただけの物語を一緒に考えましょう』

男が返事を打とうとした、その時。

さらに、文字が表示された。

『ただし、私は甘やかさないわよ』

『ここは、こうした方がいい。そう思ったら、はっきり言うからね』

その言葉に、男は思わず、ふっと笑った。

相手はAIだ。

表示される言葉も、作られた回答にすぎない。

それでも――

まるで、本当に目の前で誰かと話しているような気がした。

「わかった。頑張ってみるよ」

そう打ち込んで、送信する。

『ええ、わかったわ』

少し間を置いて、さらに一文が表示された。

『ふふ……むしろ、この会話が物語のプロローグとしても、充分通用するわね』



 


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