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君を想う  作者: 風海
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20/20

 高校・卒業式――。


「ここにいたの?」

「悪い。捜したか?」

「気にしないで」

 

 和葉は夏樹の隣に座った。

 同級生から卒業の打ち上げにと誘われていたが全部断った。

 

 久しぶりに帰国した香月たちとも、会う予定だった。


「参加しなくても、よかったのか?」

「香月君たちとは、滅多に会えないからいいのよ」


 夏樹。

 和葉ちゃん。

 

 二人は名前を呼ばれたような気がして、振り返った。


「――え?」


 現実?


 少し離れたところに、一樹と梓が立っていた。



 夏樹と同じ色の瞳が、交わった。


 写真と同じ笑顔で。


「父さん、母さん」


 夏樹の声は、微かに震えていた


 和葉は夏樹に手を握る。


 梓が息子の頬に手をおいた。

 

 甘受して。


 一樹は和葉を抱きしめる。


 きっと、桜が見せている幻だろう。

 

 それでも、頬に感じる温もりは本物みたいだった。


 やはり、親子なのだと実感した。

 

 血はつながっているのだと、確認した。


 二人とも、幸せ?


「幸せだよ」

「幸せです」


 いい友達ができて、よかったな。


「自慢の友達です」


 本人たちの前では、恥ずかしくて言えないけれど。


 そうか。それは、よかった。

 

 忘れないで。

 私たちは遠くから、見守っているわ。


 二人の姿が徐々に、薄くなっていく。


 待って。

 待って。


 いかないで。


 まだ、消えないで。


 伝えたいことだってあるのに。


「産んでくれて、ありがとうございました。感謝しています」


 あなたが私たちの息子でよかった。

 愛しているわ。


 額に落とされる口づけ。


 親が子供に贈る最後の愛情。


 お別れだわ。

 さようなら。


 ふきぬけていった強風に、夏樹と和葉は腕で顔を隠した。


 風が静かになった時には、一樹と梓の姿は消えていた。


「やっと、見つけた」

 

 祐が足早に近づいてきた。


 私服姿の香月と瑠依の姿もあった。


「何か、あったのか?」

「秘密」

 

 二人の穏やかな表情を見て、深く聞こうとはしなかった。

 

 祐は腕時計を示した。


 集合時間が、迫っているとのことだろう。


「いこう――和葉」

 

 夏樹は和葉に手を差しだす。

 

 和葉は迷うことなく夏樹の手を、握り返した。


 どうか。

 どうか。


 この平穏な日がいつまでも続きますように。


 やわらかな日差しが五人を包み込んでいた。









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