捜索
「で、最後にこいしの姿が確認されたのがここになるのか?」
「そうだ。」
人里の方へ歩きながら簡単な質問などをする。
「それで一番近場の人里で情報収集をするというわけか。」
「あぁ。私たちがするべきことは二つ。」
魔理沙が指を一本、二本と立てながら説明する。
「一つは情報を集めてこいしの現在地を絞り込むこと。そしてもう一つはそこに行ってこいしをひっ捕らえることだ。」
「シンプルだが少々暴力的だな。」
「こっちじゃ普通だぜ。」
どちらかと言うと魔理沙にとって普通なだけなのではないかと思ったが、わざわざ口にするほどのことでもないだろうと黙っておいた。
「ところで重信、昨日の夜こいしが何をしていたか分かるか。」
「ん、あぁ、どうもかくれんぼをしていたらしい。フr……その、友達と。」
「?そうか。」
危うくフランの名を出してしまうところだった。
もしこんなしょうもないミスのせいでフランの外出がばれてしまったらフランはますます外に出られなく無しまうかもしれない。
面倒ごとは嫌いだ。
幸い丁度人里に着いたところなので、変に追及されることも無いだろう。
「ともかく聞き込みだ。手当たり次第にな。」
「だがこいしはなかなか姿を見せないんだろう。確か無意識がどうこうで。それじゃあ聞き込みをしても意味が荷ような気がする。」
「安心しろ。最近人里の子供が正体不明の少女と接触したっていう報告が何件もあるらしい。」
「つまり、その少女がこいしなんだな。」
「だから今から子供を中心に聞きまわる。」
「年齢はどのくらいだ。」
魔理沙は少々考え込み、迷ったようなそぶりを見せながらも十歳くらいまでと答えた。
「分かった。三時間後に同じ場所で合流しよう。」
軽く頷き、魔理沙は東へと歩いて行った。
十メートルほど先にある曲がり角を曲がったところで、僕も出発した。
”捜査”は思ったよりも難航した。
町ゆく子供たちに手当たり次第こいしのことを聞いてみたのだが、返ってくる答えはどれも微妙なものばかりだった。
知らない、という答えが何より多かったし、何よりも困ったのがたとえこいしの存在を知っていたとしても何時、どこで会ったかまでは全く覚えていないのである。
しかもそういうケースが何十件もあるのである。
そして気が付けば通りに居た子供全員に聞き込みを終えてしまっていた。
ここまで収穫ゼロはさすがにまずい。
他に子供の良そうな場所はと探していると、遠くからにぎやかな声が聞こえてきた。
急いで向かってみると、空き地で十数人の子供たちが相撲を取っていた。
ここならと離れて観戦していた少年に聞いてみることにした。
「坊主、坊主。」
肩をちょんちょんと叩きながら声をかける。
「にーちゃんだれ?」
「ただの人間だ。それより、ここ最近、というより今日女の子を見かけなかったか。緑っぽい色の髪で、黄色い服と黄色いリボンのついた帽子をかぶっている。」
「そのねーちゃんならいまいっしょに遊んでるよ。」
少年はそれが自然の摂理であるかのように澄んだ声で答えた。
「ほんとか!」
「うん、ほらあそこに……あれ?」
少年は粗雑な動作で土俵を挟んだ反対側を指さしたが、そこには少年と似たような子供たちしかいなかった。
「おかしいなぁ、さっきまでいたはずだったのに。」
「ありがとな、坊主!」
軽く礼を言いながら急いで走り出した。
正直この近くに居ると分かっていても探し出せる自信はない。
どの方向へ向かったのか分からないし、そもそも視認できるかどうかすら分からない。
だから、取り敢えず魔理沙のいる方向に向かうことにした。
現段階ではどの方向へ向かってもこいしのいる確率は等しい。
ならば魔理沙のいる方へ行けば道中でこいしが見つかるかもしれないし、出来なくても情報を共有できる。
腕を大きく振り、足を前へ前へと運んでいく。
息が切れるほど速く走っているが、道中の確認は怠らない。
細い首を酷使して目線を右から左、左から右へと反復させる。
幸い人通りの少ない(というより一人もいない)道を選べているから衝突の心配はない。
遠慮せずに高速度のまま角を曲がり、突っ走る。
が、しばらくしたところで突然首より下の部分に強い衝撃を覚えた。
それを全く予測していなかった身体がバランスを崩し運動エネルギーを保持したまま前のめりになる。
そんな馬鹿なと丸まった眼で下を見ると、さっきまで居なかったはずの少女が目を瞑り縮こまっていた。
角から飛び出してきたかこちらが認識できていなかったか。
一瞬そんな考えが脳裏を走ったが、今はそんなことを考えている時ではないと直ぐに思考を切り替える。
目の前で倒れていく少女を抱きかかえ、身体をよじり自身の背中を地面に向ける。
直後、自分とこの少女の体重分の殴り返しを背中に喰らう。
衝撃は背中から胸までびりびりと伝わってきた。
数秒間固まっていたが、大きく息を吐いて僕は大の字になった。
それから少女の様子を見ようと視線を下げたが、ここでまた衝撃を受けることとなった。
幸か不幸か、ぶつかった少女はこいしだった。
自粛のお陰で曜日感覚が狂いまくってます。




