表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LuruGeo  作者: 池田コント
99/99

第98節 いつかふく風

 新しい風が、吹き始めていた。

 精霊達が絶え間なく踊り続ける丘。実り溢れる森。森の動物達に恵みを与える泉。若い魚が澄む川。人の住む町。

 豊潤な風の香りの中をたゆたいながら、少女は、傍らを飛ぶ父親に素朴な質問をする。

「ねぇ、お父さんは、どうして翼が無いのに、あたしみたいに飛べるの?」

 傍らの父親は、精悍さの刻まれた端整な顔立ちに静かな微笑を浮かべて、少女に答える。

「君のお母さんが、父さんに力をくれたからだよ。新しい世界を切り拓く力を、お母さんだけじゃない。僕を支えてくれたみんなが、僕とお母さんを応援してくれた。そうして、君が生まれたんだよ。この新しい世界で、素敵な翼を広げてくれるようにって、君のお母さんは、ずっと、祈っていたんだ」

 少女は、父親の顔を見上げる。太陽が傘になって、その表情は読み取れない。

 今は居ないお母さん。顔も覚えていないお母さん。母親がいないことに不満を訴えたことはないが、それでも一度だけ、少女は父親に聞いたことがあった。

「寂しくないの?」

 父親は、その時、とても懐かしそうに、少女に聞かせたものだ。

「時々ね、でも、その度に思い出すんだ。お母さんと見た。花火を、いつか、君にも見せてあげるから、お母さんが見た花火を――」


 一陣の風は強く暖かく、なにかを思い起こさせ、それがなんであるか思い出す、その瞬間に吹き去っていった。

 でも彼は、それがなにか、とうの昔に知っていて、誰にでもなく優しく笑いかける。

これにてルルとジオにまつわる物語は一巻の終わりとなります。

お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ