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小説家、箕原啓の調査〜因習の村と呪われた夏の記録〜  作者: レブラン


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20/21

20話


 目を覚ますと、白い天上が映っていた。

 背中の感触からすればベッドで寝ているらしい。

 本をめくる音が耳に入り視線をそちらへ移すと、椅子に腰かけて座っている千鶴の姿。

 そんな千鶴は小説を読みふけっている。

 デジャブって奴か?


「またループ入ったなら勘弁してほしいな」


 俺の言葉に千鶴は視線をこちらに向けた。

 また泣きそうな表情で手を掴むと涙腺が崩壊し泣き始めた。

 壁にかけてあるカレンダーに視線を移すと、7月だが日付は26日に印がついていた。

 あれから丸一日は経っていたという事か。

 どうやら前のようにループに陥ってるようではなさそうだ。それに千鶴の姿を見て安堵する。

 千鶴は泣き止むと状況説明をしてくれた。

 どうやらあの状況で俺を引っ張ってくれたのは端山さんだそうだ。

 巨木に落雷して、燃え上がったあと俺達を教授が見つけ、病院に搬送してくれたという。

 文彦さんも気絶したものの幸いにも火傷程度で済んだとのこと。

 次の日には台風は過ぎ去り町の被害はなかったという。

 ただ、巨木は落雷の影響で燃え上がり、灰のように黒焦げとなっているとこと。

 そして数日後に町の代表たちが集められ緊急会議を開き、今後祭の方針を決めるそうだ。

 俺が意識を取り戻したという報告を受け端山さん、教授、千奈、千鶴の両親が病室にきた。

 他よりも広めの個室らしいので全員余裕をもって入室しているが、金銭面で心配するがその心配はすぐに解消される。

 今回の件で御堂峰家が全額負担してもらえるらしい。

 全員が全員、俺の無事を喜んでくれた。


「それにしてもあの巨木がお憑き様を降臨させた器とは、よく気が付いたね箕原君」と教授は感心するように云った。

「ええ、まず疑問になったのが杉田美穂は呪印石をくらってもまだ動けるという所。そして降臨した場所でした」

「確かお憑き様が降臨した場所は丹波神社とは別の場所だったか」

「ええ、文彦さんが見せてくれたあの本の絵。お憑き様が降臨して住民達が拝んでいるシーン。そして高齢者達が云っていた神雷の場所」

「どこもあの巨木に関しているね」

「そして最大のヒントが教授の云っていた媒体。元々降臨する場所から動けないはずなのに動けているという点」

「なるほど、確かに巨木が器なら動く事もできず干渉すら難しいはずだ」

「まああとは直感ですね。こればかりは一か八かという所もありましたが結果的に上手くいったのは良かったですよ。もっと確実にいけばよかったんですが如何せん時間がなかったのは」


 俺は乾いた笑いをあげると、頬をかく。

 もしも外れていたら俺含め、皆ここにもういないのだからまさに運否天賦うんぷてんぷ


「いや、君のしたことは誰も咎める事はできない。隠岐村、いや横小見町の未来を救ってくれたのだから」


 扉が開き御堂峰議員が入室してくる。

 俺に近づくと握手を求め差し出してきた。

 俺は握り返すように握手をすると、御堂峰議員は頭を下げた。


「まずは一個人そして村の代表者として謝罪とお礼を申し上げる。父のしでかしたこと、村の住民が君や君達にしでかしたこと、罪を償っても償いきれないだろう。それでも本当に本当に救ってくれてありがとう」


 御堂峰議員は震える声でお礼を述べる。

 そんな御堂峰議員の行いに慣れていないせいか俺は右往左往して皆に助けを求める。


「おじさん本当にすごいことしたんだよ」

「そそ、お憑き様を倒したんだからさ」


 千鶴も千奈も俺の事褒めちぎりすぎだろ。

 他に見渡すが誰しも助けてくれそうにない雰囲気。

 仕方がないそう思い俺は頭をかいた。


「頭を上げてください。今回俺が最後までやれたのは皆のおかげですから。それに御堂峰議員が住民に話してくれたことやあの準備のおかげでここまでスムーズにいけたんですよ。逆に感謝してます」

「そう云ってくれると助かる。お礼があれば何でもいってもらっていい」


 顔を上げた御堂峰議員はとてもすっきりとした表情をしていた。

 俺は思いついたようにあっと声を上げる。


「あー、でしたらお願いがありまして……」


次回完結

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