43
【43】
「ハルカ……」
勝利は、彼女を強く抱き締めた。身動きが取れないくらい、ぎゅっと、強く強く。
ついさっきまで、遙香と縁を切ろうとしていたことも忘れて。
「今からホントのこと言う。――ハルカのことが、大好きだ」
――ひどいよ……。胸元から、か細い声がした。
本当だな。自分は、本当にひどい。
「答えになってないよ……。ショウくん」
「だから、ごめん」
彼はハルカの顎をぐっと持ち上げると、あの夜のように唇をふさいだ。
「んっ……んぅ……」ハルカがくぐもった声で呻く。
でも、いやがってるわけじゃない。彼女も自分と同じく、唇を激しく求めてるから。
しばらく抱擁し合った後、勝利は寸止め状態で遙香の体を引き剥がした。
勝利はまんじりとも出来ず、床に座り込んだまま遙香の手を握っていた。
日も落ちて、外は少し暗くなってきたが、部屋の灯りは点けないままだ。そしてまもなく、道路に面した窓から、街灯の明かりが白い帯となって差し込んでくる。異界獣避けのために、一般の街灯より何倍も強い光を放っているからだ。
その光の届かない暗い床の上で、ほんのりと輝くものがある。
先日、勝利が落とした羽だ。子どもの頃のものはもう輝きを失っていたが、抜け落ちたばかりの方は、薄闇の中でその高貴な存在を誇示している。形は鳥の羽根に見えるのに、それは明らかに、通常の生物が持つ輝きではなかった。
「キレイね……」
「うん」
「小さい方は、もう数年前に光らなくなってしまったの」
「そう……」
そんなこと、自分でも知らなかった。
己の羽を保管する趣味もなかったから、蛍光塗料のように何年も輝くものだとは思わなかったのだ。言われてみれば、確かに美しい。普段は体の中に格納しているが、自分はこんなものを背中に持っていたのか、と再認識した。




