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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
四章 腭<アギト>に喰われる者
91/134

43

【43】


「ハルカ……」

 勝利は、彼女を強く抱き締めた。身動きが取れないくらい、ぎゅっと、強く強く。

 ついさっきまで、遙香と縁を切ろうとしていたことも忘れて。

「今からホントのこと言う。――ハルカのことが、大好きだ」

 ――ひどいよ……。胸元から、か細い声がした。

 本当だな。自分は、本当にひどい。

「答えになってないよ……。ショウくん」

「だから、ごめん」

 彼はハルカの顎をぐっと持ち上げると、あの夜のように唇をふさいだ。

「んっ……んぅ……」ハルカがくぐもった声で呻く。

 でも、いやがってるわけじゃない。彼女も自分と同じく、唇を激しく求めてるから。


 しばらく抱擁し合った後、勝利は寸止め状態で遙香の体を引き剥がした。

 勝利はまんじりとも出来ず、床に座り込んだまま遙香の手を握っていた。

 日も落ちて、外は少し暗くなってきたが、部屋の灯りは点けないままだ。そしてまもなく、道路に面した窓から、街灯の明かりが白い帯となって差し込んでくる。異界獣避けのために、一般の街灯より何倍も強い光を放っているからだ。

 その光の届かない暗い床の上で、ほんのりと輝くものがある。

 先日、勝利が落とした羽だ。子どもの頃のものはもう輝きを失っていたが、抜け落ちたばかりの方は、薄闇の中でその高貴な存在を誇示している。形は鳥の羽根に見えるのに、それは明らかに、通常の生物が持つ輝きではなかった。


「キレイね……」

「うん」

「小さい方は、もう数年前に光らなくなってしまったの」

「そう……」

 そんなこと、自分でも知らなかった。

 己の羽を保管する趣味もなかったから、蛍光塗料のように何年も輝くものだとは思わなかったのだ。言われてみれば、確かに美しい。普段は体の中に格納しているが、自分はこんなものを背中に持っていたのか、と再認識した。


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