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【41】
「ねえ。どうしていなくなっちゃったの? ずっと探してたんだよ?」
遙香が悲壮な表情で、勝利に訴える。
「…………」
彼は、否定も肯定も出来なかった。
自分はいなくなったつもりもなかったし、一文字親子が自分を探してることも知らなかったし、そもそも、遙香のことなんか綺麗さっぱり忘れていたんだから。
肯定したい。
そりゃあ自分だって、名乗ってやりたい。だけど、教団が一文字親子と自分を引き離したのが事実だとすれば、これ以上自分と関わると、彼女が危険かもしれない……。
「黙ってないで、何とか言ってよ」
「……それは……俺じゃないよ。多分、誰かと勘違いしているんだ」
「……え? だって――」
「俺はお前が木から落ちたことなんか知らないし、誰かを探してたことなんか知らない」
「でも……」
さみしがりな子犬のような目で、遙香が自分を見る。
とても直視できない。勝利は顔を背けた。
彼は全力で素っ気ない振りをした。本当に全力で。それでも口元が震えてしまう。これ以上遙香の目を見たら、自分も号泣してしまいそうだった。
「そいつを探してどうなる。お前とは、生きる世界が違うんだろ。だから、今まで、十年もずっと会わせてもらえなかったんだろ」
がんばっても、がんばっても、声の震えをどうしても止めることが出来ない。
勝利の両肩を掴んで、遙香が叫んだ。
「それは……それはそうかもしれないけど! でも!」
「だったら、もうあきらめろ。なにもかも全部忘れて、お前は自分の人生を歩め」
勝利は目をつむって、遙香に絶縁を言い渡した。
それが彼の精一杯の抵抗だった。
「何言ってんのかわかんない! ショウくん、君なんでしょ? ねえ!」
遙香は激高して、彼の胸板を両の拳で何度も叩いた。
勝利の肺に衝撃が伝わる度に、食いしばった歯は力を失い、小刻みに息が漏れた。つむった目蓋は情けない格好に歪み、その奥に溜め込んだ涙が零れて、ブレザーの胸元を転がり落ちていった。
彼女の拳が打ち付ける度に、勝利の付け焼き刃な決意が、あっけなくボロボロと崩れ落ちていく。そんなに自分は弱い生き物だったのかと、情けなく思うとともに、このまま流されてしまいたいとも思った。




