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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
四章 腭<アギト>に喰われる者
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39

【39】


 自分と遙香の過去を思い出してしまった勝利は、必死に動揺を噛み殺していた。

 呼吸は乱れ、心臓は早鐘を打つ。背中の翼は疼き、握りしめた拳の中で爪が手のひらに突き刺さる。

 勝利は、叫び出したい衝動と必死に戦っていた。こんなに自分の気持ちと抗うのが大変だなんて、これなら異界獣と戦った方が余程楽じゃないか、と思った。

 ――俺は、何でこんな大事なことを忘れていたんだ! いくらガキだったからって、あんな高さから落ちたくらいで忘れるなんて……。


「後日、お父さんと一緒に、その男の子にお礼とお詫びを言いに行ったの。だけど、教会の人はそんな子はいませんって」

(なんだって? 俺はあの施設にその後数年はいたんだぞ!)

 そう言いたい気持ちを、勝利はぐっと飲み込んだ。

「何度も会いに行ったけど、この写真も見せたけど、この男の子にはそれっきり会えなかった。どうして教会がこの子のことを隠すのか、私にもお父さんんにも分からなかった。でも私は、どうしてもこの子に、ごめんなさいって言いたくて、お父さんに探してって頼んだの。……それからお父さんは、都市伝説ハンターになった」

 彼女は肩を震わせ、啜り泣きを始めた。

 それでも、彼女は話し続けた。

「私が勝手に裏庭なんかに行ったから、あの子は大怪我しちゃったし、私があの子を探してってお父さんに頼んだから、お父さんは行方不明になっちゃった……。みんな、私のせいで……ひどいことになって……」

 それ以上はもう、言葉にならなかった。遙香は両の手のひらで顔を覆うと、その場にしゃがみこんでしまった。


 ――俺のせいで、遙香をこんなに不幸にしちまったのかよ……。

 ――俺には、こいつを好きでいる資格すらない。


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