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【31】
「チェッ……」
自室で謹慎を命じられた勝利は、ベッドの上で不貞腐れていた。
「ったく。マジでハルカんちに行ってやろうかな」
……などとブツブツ言いながら、勝利は銃をもてあそんでいる。ベロニカの前でやると『ツキが落ちる』と怒られるのだが。
「だいたい、銃で遊んでないのにツキが落ちた。どういうことだよ。銃関係ねーじゃん」
彼は床に銃を放り出すと、ベッドの上をゴロゴロと何度も左右に転がった。
とうとうイライラが止まらなくなってきた勝利は、部屋を出て食堂に。
「あら勝利さん、謹慎はいいんですか?」
ふふ、と柔らかい笑いを投げながら、シスターが言った。
食堂では、数人のシスターがテレビを見ながら絹さやの筋を取っているところだった。配膳カウンターの上に並んだ食材類から推測するに、翌日の食事は炊き込みご飯だろう。
「謹慎っつーか、軟禁? みたいな」と、バツが悪そうに応える。
彼は自分でコーヒーを入れ、女共に構われないように部屋の端のテーブルに陣取ると、イヤホンを耳に着け、音楽プレイヤーのスイッチを入れた。
飲む前から、コーヒーの香りが気分をやわらげてくれる。イラつく時には一番いい。
音楽で外界の雑音を遮断し、ゆっくりとコーヒーを啜ると、だんだん気分が落ち着いてきた。そこで勝利は一人反省会を開始し、この所の不調について考えた。
やはり、原因は心理的な問題なのは間違いない。
基本的に、機械を使って覚えた地形情報は、余分な情報やノイズが含まれると、ありもしない場所に飛び移ってしまったり、ないと思った場所に壁があったり、と命にかかわる事態を招いたりする。
最近続いている彼のドジも、現象だけで見れば情報のバグによって引き起こされているように見える。ビルの幅を見誤って屋上から落っこちたり、送電線にぶつかったり、電柱から飛び移る先の位置を間違えて川に落ちたり等々、たった二日で数十回も発生した。
しかし初めのうちは、地形情報にバグどころか寸分の狂いもなく、いつも通り順調に仕事が出来た。だから、入力時に問題はなかった……はず。
勝利がおかしくなり始めたのは、遙香に遭ってしまってから後だ。
彼女を傷つけたこと、それを黙っていること。
とても心苦しく思ってはいるものの、それ自体にデータを歪ませるほどの大きな影響があるとは思えない。
遙香の彼氏を演じていること。
これに関しては、正直どう考えていいのか自分でも分からない。 地形情報への影響に関しては、多少はあるかもしれない。
遙香の父、一文字氏の消息について、教団が関与している可能性が高い件、それと過去に現場で遭遇していたかもしれない件。
確かに不安要素のうちではあるが、やはり地形データを歪めるほど大きくもない。関連して、娘の遙香の生活が困窮していることに関しては、そこそこ大きな不安要素ではあるものの、金銭でカタがつくぶんそれほど心配はしていない。
学校そのものが奇妙な件。
これも、気付いた時には恐怖したが、経営している教団そのものが異常なのだから、そこまで気にする程でもないだろう。その後のゴタゴタでしばらく忘れていたくらいだ。
……では、何が原因なのか。
まだ、気付いていないことがあるかもしれない。それは一体、何なのだろう。




