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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
三章 迷宮の入り口
49/134

【1】


『ムリ。やっぱりムリ。前言撤回。やっぱダメだった』

 勝利は早々に敗北宣言をする。

 今日限りで遙香と縁を切る、という宣言をたった半日で撤回してしまったのだ。


     ☆ ☆ ☆


 ムリ――!!

 ムリムリムリ!!

 そうだよ、そんなのムリだよ。不可能だよ。

 ムリムリムリ。だって俺、ハルカのこと大好きだもん。

 四六時中ハルカのことしか考えてないし。おかげで死にかけたし。

 このまま彼氏のフリじゃなくて彼氏になりたいし。


 朝のうちは気取ってあんなムダな決心して、俺、お通夜みたいな顔になってた。でも、昼休みになって、一瞬で決心は木っ端ミジンコになった。

 だってさ。タケノコがハルカに色目使うの見るだけで、俺もうキレそうだったもん。

 自分が悲しいからとか仕事に支障を来すとかいって、好きになるのやめるとか、嫌われるとか、そんなん出来るわけなかったんだよ。

 だって相手は『一目惚れ』の女の子なんだぞ!

 俺超バカだった。いや知ってたけど。でもこれ本能。抗えない。ぶっちゃけムリゲー。

 こうなったら、『気合い』で仕事を全うするしかない。

 とりあえず、学食に行く前にタケノコを渡り廊下に連れ出して少々ボコってやった。まあ、それが出遅れた原因だったんだけど。

 ――そしたら意外な事実が分かったんだ。

 ああ、なんということだ。加害者ながらプチショックだよ。

 タケノコのやつ、ホントはハルカのこと前から超好きだったんだ。だから、俺が寝取った格好になっちまった。……おお神よ、なんてこった。

 遡ることタケノコが中学の頃、ヤツはハルカにアタックした。

 だが案の定瞬殺された。でも諦め切れず、指を咥えてずっと見ていたんだ。で、ある日ハルカんちの借金のことを知った彼は、それをネタにハルカを自分の物に……というお粗末な話さ。

 DQNの考え、休むに似たり。同情するも、手段がヒドイ。


 ……にしても困ったな。これじゃあ、俺が町を出ていったら、またハルカにちょっかいを出してくるぞ。

 うーん……。徹底的に恐怖を植え付け、監視されていると思わせるのが管理の定石だ、って以前シスターベロニカが言ってたけど、ぶっちゃけどうしたらいいのかな。


     ☆ ☆ ☆


 結局、己の意思の弱さと欲望に完全敗北した勝利は、己自身と過去との戦いを開始せざるを得なかった。


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