表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
三章 迷宮の入り口
45/134

22

【22】


 彼女を食堂に通すと、シスターたちは意味深な笑いで出迎えた。教団きっての凄腕ハンター・多島勝利の客人だ。無下に扱われることはないだろう。

 シスターベロニカは既に食事を終えて、食堂の隅でテレビの連ドラを見ている。あちこちの街に赴任する彼等にとって、全国ネットの国営放送は地味に有り難かった。

 勝利は、取っておいた昨夜のシーラカンスの切り身を暖めるようシスターに頼むと、自分の向かいの席に遙香を座らせた。

「懐かしいなあ、子供の頃に入ったきりよ」遙香が言った。

「そうなの?」

「教会のクリスマス会に来たとき、迷子になって入り込んだのよ」

「ふうん……」

 街の教会でクリスマスに子供を招いてパーティを催すのはよくある話だが、この教団でも全ての施設で近隣住民へのサービスを行っている。一般的には宗教に親しんでもらうことが目的だが、この教団の目的はあくまで地元に溶け込むため。本来武装組織である教団には、教義など最初から存在しない。あくまでも世を忍ぶ仮の姿なのだ。

 遙香がクロワッサンとスクランブルエッグに舌鼓を打っていると、厨房からシスターが例のブツを運んできた。

「さあ、これも食えよ」

「なに? お魚? いいの? こんな……」

 暖めなおしたシーラカンスには香草とバターが添えられて、いい薫りが食卓に溢れる。

「本当は、昼休みにお前に食わせてやろうと思ったんだ」

「……ありがと。こんなちゃんとしたもの、食べるの久しぶり」

 どんな食生活送ってんだ、と言いそうになって勝利は言葉を飲み込んだ。彼女の生活が困窮していることをうっかり忘れかけていた。

「これな、シーラカンスなんだ。シスターが俺たちのために取り寄せてくれたんだ」

「すごーい! いっただっきまーす!」

 遙香は大喜びで手を合わせ、さくさくとシーラカンスにナイフを入れた。

「どう?」

「んー! んー!」満面の笑みで頭をこくこくと上下させている。

「シーラカンスが食えるなんてすごいだろ?」勝利は自慢げに言った。

「そうよね。日本まで通販してるなんて、知らなかった」

「へ?」

「南方に行けば食べられないこともないけど、って話……えと、ごめんなさい」

 遙香は急に何かに気付いて、大人しくなってしまった。

「な、何のこと? 別に謝られるようなことないけど? ほら、冷めちゃうからどんどん食べなよ。スープお代わり入れようか?」

 勝利は手を差し出した。

「あの……私をおどろかそうと思ったんでしょ? だから、ごめん」

 勝利はううん、と首を振った、

「そっか。ハルカのお父さんは都市伝説ハンターだもんな。そのくらいのこと、知っていてもおかしくないよな。さすがだよ」

「あはは……うん。お父さんに聞いた」

「やっぱね」

「でも、本物を食べられるなんて、すごく嬉しい。これはホントよ」

 そう言って、遙香はスープボウルを勝利に手渡した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ