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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
二章 相棒は、シスターベロニカ
39/134

16

【16】


「勝利、待たせた!」

 背後からシスターベロニカの声が。

「全力ダッシュして! 上に放り投げる!」

 無言で頷き、勝利に向かって突進するベロニカ。それを、腰を落とし、両手を体の前で組み迎える勝利。

「飛べえッ!」

 ベロニカが勝利の手に駆け上がると同時に、彼は天に向かって彼女を放り上げた。黒いベールをはためかせ、ベロニカは警備室の屋根にひらりと舞い降りた。


 屋根の上から現状を見たベロニカは、愛息子が新種の化け物に相当の苦戦を強いられていることを察した。

 工場前の道路は、やや広めの二車線だが、敷地の向こう側は緑地ブロックのため木ばかりだ。工場ゲートの両サイドも、盛り土と街路樹で場所に遊びがほとんどない。勝利の得意とする高低差を利用した戦法も、利用出来る地形や建造物が少ない。その上、道路は炎上したトラックとパトカーによって半ば塞がれている。

 場外乱闘をするために、この場から離れれば、先ほどの運の悪い警官のような被害者が出ないとも限らない。かといって、ある程度の広さのある工場敷地内に招き入れるのもはばかられる。

 ならば、自分の出来ることは――


「奴の弱点は真ん中の胴体だ! 足は攻撃がほとんど効かない」

 ベロニカへの注意を逸らすため、勝利は銃を連射しながら異界獣の反対側へ回り込んだ。彼の背後には燃えるトラック。近づき過ぎれば火達磨だ。

『私は上から奴の口を狙えばいいのか』無線からベロニカの声が入る。

「こいつは立体的な動きが苦手らしい。奴の突進は威力とスピードは強いが、」

 言っている側から敵が突っ込んで来た。四本の無骨で大きな足を巧みに使い、まるで蜘蛛か昆虫のように高速で這い寄ってくるのだ。さながら、特撮映画を早回しで見ているようで、気色が悪いことこの上ない。

 勝利はすんでのところで突進を脇へとかわし、毛むくじゃらな足の化け物は、炎に構う様子もなく車体を道路の反対側まで吹き飛ばした。

「細かいコントロールが出来ないのは、あまり目が良くないからかも」

『とにかく動きを止めろ』

「んなこと言っても、接近戦になったら俺負けちゃう」

『なんとかしろ』

 分かってるよ、と毒づくと、勝利は血の滲む頬を手の甲でひと撫でし、ぺろりと舐めた。

「同じ青い血でも……俺の方が旨いな」

 不器用に方向転換する異界獣を見つめながら、勝利は銃のマガジンを入れ替えた。


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