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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
二章 相棒は、シスターベロニカ
40/134

17

【17】


「さあ、こいよ!」

 叫ぶなり、勝利は異界獣に一発弾丸をお見舞いした。偶然に期待して足下を狙ったが、そうそう上手い具合に跳弾するものではなかった。

 化け物は奇声を上げて体を震わせると、アスファルトの上に踊る青い揺らめきを蹴散らしながら勝利めがけて突進してきた。

 勝利は身を翻し、ベロニカの射線へと一目散に駆けだした。背後からドドドと重たい足音が迫る。

 警備室の横を通り抜けようとしたその時――勝利の体が宙を舞った。

「がッ!!」

 彼は強い衝撃で弾き飛ばされ、路面を数度転がり縁石にぶつかって止まった。

 突進しか出来ないと思われていた異界獣が、いきなり前方にジャンプしたのだ。

「勝利ッ!!」ベロニカは思わず叫んだ。

「うぐ……何が、ぐあああッ!」

 いきなり体が押し潰され、息が出来なくなった。さらにその重みが腹にねじ込まれると、勝利は激しく吐血した。

「なん……だよ……これ」

 激痛で意識を失いそうになりながら見上げると、己の腹の上で化け物の巨大な足がステップを踏んでいた。

『大丈夫か!』

「く、来るなよ……ぐぶッ」

『おい!』

「こ……いつめ」

 勝利は、やっとの思いで予備の銃を腰から抜くと、当てずっぽうに数発ブチ込んだ。


『ヴヴヴルルルルッ、ゥウウウルルルルッ』


 当たったかどうか自信はなかった。だが、こいつが鳴いてんなら当たったのだろう。ふっと体に伸し掛かる重さも失せた。そのスキに勝利は、ゴロゴロと力なく転がって化け物の体の下から逃げた。

「ずりいよ……ジャ、ンプするとか……聞いてねえ」

 全身がギシギシと思うように動かない。激痛も走っている。恐らく、体のあちこちにヒビや骨折を負っているのは間違いなさそうだった。

 だが勝利は気力を振り絞って立ち上がった。足は震えてるが、今は立つしかない。口に溜まった血ヘドをべっと吐き出す。

 奴も苦しそうな鳴き声を発しながら、こちらを威嚇してくる。

「ああ……また逆方向にこいつ誘導しねえといけねえのかよ……つれえな」

 足はまだ無事だ。動くだけなら何とかなる。だがスピードに自信がない。

「食われたら、それまでよ」

 軽く息を吐くと、勝利は少々狙いをつけ、腰からアンカーを射出した。ガツン、とゲートの柵にぶつかった。くッ、と軽くワイヤーをたぐり、引っかかっているのを確認した。

「頼むから、あんま早くくんなよ――」


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